22.戦い…?
もう何も言いません…言いたくありません…でも言わなきゃいけない……本当に!すいませんでしたぁぁ!!
更新頻度を?月一にって言ってすぐに?破ってんじゃねぇかァァァ!
もうなんなんだよ!前も月に二回って言って?それで出来なくて?さらに月一に延ばしたのにぜんっぜんできてねぇじゃん。なんならほぼ二ヶ月だよ!?実際なら4話投稿してるはずからな!?
ええ!もう正直に言います!全くもって!小説が書けなくなってきました!1日に頑張っても数百文字!これを五千とか六千に繋げるとかどれだけ時間かかるの!!
最近は書いてる内容も自分でよく分からなくってきたし!なんなら書いてる途中で「なんだよこれ…」ってなりますから!?
ええ……もう…言うことは一つしかないですよ……
これからはもう『不定期更新』と『内容崩壊』になります!!
二つじゃねえか……あぁぁああ!!もうやだぁぁ!深夜テンションで書いてるから何もわかんない!!
メモも取れてないし?次の内容もわからないし?やる気も全く起きないし?
もう……地道に書いて…適当にチェックして…不定期で出します……
ええ…とりあえず今回はここで失礼します…では…
勇者である2人のこと、そして僕自身の秘密をを母様に伝え、それをあっさりと見透かされていたという事実。
今までの努力は一体なんだったんだろうか…
そして今は母様と勇者として召喚された2人の元(二階のミザリーの部屋〕へ向かっているところだ。
「一体どんな子なのかしら。クリートと同郷だった子なんて」
「たいして僕たちと変わらないですよ」
「そうなの〜?でもお会いするのは楽しみだわ」
たいして変わりないとは言ったけれど…むしろ、ここの村人たちが変わっているから同じと言っていいのか…
とにかく、2人にはあまり変なことに巻き込まれないように僕がなんとか対処しないと…
これから起こるであろう光景を予想し、どうにか対処しようとするために考えている間に部屋の前に着いてしまった。
もちろん、一階から二階に移動する短時間で方法が浮かぶわけがない。考えてみただけで終わった。
「さあ、どんな子なのかしら!」
(もうアドリブで行くしかないっ!!)
母様が扉を開け、ミザリーの部屋へと入る。
そして部屋の中には…!
「あ!母様!お帰りなさい!」
「お、お邪魔しています…」
「初め…まして…」
何故かミザリーの着せ替え人形と化した2人がいた。
「見てください母様!可愛くないですか!?」
「あらまぁ本当!なんて可愛らしいのかしら」
「「……………(チラッ)」」
「…………(フルフル)」
最初の印象はミザリーによって大丈夫だったようだが、2人にとっては恥ずかしかったみたいだ。
こちらに目線を送って来たが、僕には何も手助けが出来ないので首を振る。悲しそうな顔になったが、何も出来ないのは事実だった。
ごめんよ…僕にはあの2人を止められるほどの力はないんだ…
「それで、こちらの2人がクリートの友人さんなのかしら?」
「あ、はい。クリート君の友人でイナバと申します」
「同じく…ナナです…」
「イナバちゃんにナナちゃんね。新しい子は歓迎するわよ〜!」
「むぎゅ…」
「何という…ボリューム…」
2人は母様に抱きしめられ、二つのメロンの圧倒的なボリュームに幸せそうにしながらも少し悔しそうにしていた。
「それでそれで?2人は他にもどんな服が似合うのかしら?」
「他にはですね…こういうフリフリな感じの服なんて似合うんじゃないですか!?」
「へっ!?」
「そうね〜!フリフリも似合いそうだけど、こっちのシックな感じの服もいいんじゃないかしら?」
「確かに!!」
「じゃあ、これを〜?」
「お二人には…着てもらいますよ!!」
「うふふふふ…」
「ほら…ほら…」
ミザリーと母様が洋服を手に2人へじりじりと近づいていく。
「いや、あはは…それはちょっと遠慮したいですかね…」
「それは…ちょっと…着たくない…です…」
対して2人もゆっくりゆっくり後ずさりしている。
〔えー、いきなりですがここからは実況の語り手Aと解説の語り手Bでお送りします。さて、Bさん。今どのような状況なのでしょうか?〕
〔そうですね、今の状況を簡単に説明するならばミザリーさん、プラハルさんの母娘チームが因幡さん、夏奈さんの異世界チームに服を着せようとしているところですね〕
〔なるほど。おおっと!いきなりですが、早速動きがあったようです!〕
「お願いですよ!!」
「遠慮します!」
ミザリーが因幡に向けて一気に距離を詰めた。
〔今のは速い!速いです!〕
〔どうやらミザリーさん、〈縮地〉を持っているようですね。相手の隙をついて距離を一気に詰め、勢いのまま着させようとしているようです〕
〔それに対して因幡さん、華麗に回避しましたね〕
〔ええ、身体能力が高いみたいですね。バックステップを駆使してうまく回避しています〕
〔こちらは激しい攻防戦のようですが、あちら側は…〕
〔あまり動きがありませんね…あちらとこちらで静と動の戦いのようです〕
語り手が話しているようにブラハルと夏奈の戦いは動く気配が全くしていなかった。
「………………」
「………………」
全く動かず、一言も言葉を発していない。あちらと比べて本当に静と動の戦いであった。
〔これはいったいどういうことなんでしょうか、Bさん〕
〔私の見解ですが、これは2人とも相手の出方を見ているのではないでしょうか。相手の動きに合わせ、こちらも動くということなのでしょう〕
〔なるほど…全く動いていない彼女らですが、頭の中は一手先の行動を読むのに考えを張り巡らせているというわけですね〕
〔ええ。頭脳戦と肉弾戦、どちらが先に決着がつくのか…楽しみですね〕
〔そうですねー。おおっと!ここで肉弾戦側の流れが変わったようです!〕
ミザリーの激しい攻撃に防戦一方になっていた因幡が状況を変えるべく、思い立った行動に出た。
「ほら〜着てくださいよー」
「一か八か!」
「っ!?どこ行くのー?」
今まで廊下と反対側、部屋の窓側の壁に追い詰められていたが一瞬の隙をついてミザリーの脇を滑り抜け、部屋の外へ出ようと試みた。
その結果、ミザリーが油断した隙をついて横を通ることができた。あとは扉から出るだけだが…
〔ここで因幡さん、大きな賭けに出ました!〕
〔押されている空気をなんとか取り戻そうという試みですね。成功すれば逃げられる可能性が十分に上がります〕
〔賭けの結果は…!成功です!成功しました!〕
〔いやー、今のはうまいですね〜。ミザリーさんが服を見て、一瞬の隙に死角となった場所へ潜り込み、通り抜ける。素晴らしい技術です〕
〔さて!ミザリーさんの猛攻を避けることのできた因幡さん!後は廊下へと逃げるだけですが…!〕
〔そう簡単にはいかないでしょうね〜〕
その通り、逃げるにはまだ一つ残っていた。
「兄様!イナバさん止めて!」
「えっ?」
「クリート君!そこどいて!」
「えっ!?僕!?」
「兄様!」
「クリート君!」
全ての選択は全て僕に託された。
〔これはとても重大な責任ですね〜〕
〔どちらの味方をするかによって今後の空気が変わってきますからねー。家族との関係を優先するのか、友達との絆を守るのか…〕
〔どちらを選択してもこの後は地獄だぞ!さて!どうするのでしょうか!〕
考える時間は…無い。瞬時に判断してどちらを取るのが最善手か見極めろ!僕!
そして僕が選んだ方は……
「ごめん!因幡さん!!」
「っ!?きゃっ!!」
因幡さんを止めることだった。
〔ここでクリート選手!因幡選手を止めたぁぁ!!〕
〔いきなり選手になっているところが気になりますが、そこは置いておきましょう。解説に戻りますと、今の飛びついて止めるという方法、案外効果的だったようです〕
〔ほほう、それはなぜなのでしょうか?〕
〔助けてくれると思っていた人が急に裏切って飛び込んできたのですから、避けることは難しかったと思われます〕
〔なるほど!!因幡選手を止めるという行動に出たクリート選手!この後どうなってしまうのか!〕
「いたたた……」
「ごめんね……」
飛び込み、抱きついて止めたせいで勢いそのまま、倒れこんでしまった。
「…………」
「す、すぐ退くよ!!」むにゅ
「……!!」
「…?むにゅ…?」
「わぁぁぁぁ!!」
倒れ込んでいた因幡さんが僕を退かしていきなり飛び起きた。
それにしてもさっき手に柔らかい感触が…?
「クリートくんのエッチ!」カァァァ
「え…なんのこ…と……まさか!?」
「…………」コクコク
〔ここでクリート選手!なんとラッキースケベです!運が良いのか悪いのか!うらやまし…ゲフンゲフンけしからんですな!〕
〔全然隠せてないです。Aさん。それにしてもこの行動の結果により、これからどうなるか全く分からなくなりました。それでは続きを見ていきましょう〕
倒れ込んでしまい、起き上がる際因幡さんの胸を揉んでしまった。これは打たれても何も言えないだろう……
「……エッチ」
「…?打たないの?」
「別に打たないわよ。これは意図してないハプニングな訳なんだから…」
「…………」
「何惚けた顔してるのよ」
「いや…べつに…」
「兄様ぁ!何、仲良よさそうなことしてるんですか!ミザリーも混ぜてくださーい!」
「おわっ!」
「えへへ〜すりすり〜」
「あっ!ずるいわよ!私だって!」
一瞬、なんかちょっと変な空気だったがミザリーが入ってきたおかげで一気に吹き飛んだ。
それにしてもすりすりしている因幡さんの顔が真っ赤なまま治らないみたいなので、どうやら勢いでやってしまおうとしているみたいだ…
〔いやー、これは予想外でしたねー〕
〔そうですね。我々はクリートさんが打たれると予想していたのですが〕
〔まさかの主人公特権とでも言えば良いんでしょうか、これによって有利な展開に運ぶことができましたねー〕
〔これはクリートさん的にはめんどくさくない方向で片付けることができたみたいです〕
〔こちらの戦いは終わりましたが、もう一方はどうなっているか見てみましょう〕
全く動くことがない静の戦いをしていたプラハルと夏奈の二人。どのようなことになっているかというと……
「ほらほら〜良い子ね〜」
「………」
「ここね?ここがいいのね?」
「…………♡」
あっさりとプラハルによる『頭ナデナデ』という圧倒的な母の力に屈していた。
〔おっとこちらも意外な終わり方をしていました!〕
〔お母さんの頭ナデナデはとても強い攻撃ですね。子供はこれにくらってしまうとナデナデの前には逆らうことはほぼ出来ません〕
〔あれは子供にとって嬉しいですからねー。特に心に傷を負っている子にとって、癒しとなるナデナデはとても効果抜群ですからね!〕
母様によるナデナデは夏奈ちゃんには効果抜群だった。
死んでいたはずの僕と再会して心の中の傷が治っていたとはいえ、まだチグハグの回復だった。
完全に治っていなかった心の傷はまだ少し不安に駆られていただろう。
「何にも心配はいらないのよ〜。だからゆっくりねんねするといいわ〜」
「…………お母さん…」
「お母さんはここに居ますからね〜」
自然と膝枕へと移行し、そして頭ポンポンによって生まれた睡魔に身を委ねていた。
本当に心から信頼できる暖かい温もりが、チグハグに治りかけた心の傷をゆっくりと完全に癒していく。
「……すぅ…すぅ」
「よしよし。いっぱいねんねして元気になってね」
「……むにゃ……ありが…とう…」
そして小さな寝言を残して静かに寝息を立て始めた。
「これ、服を着せようとしていたはずなんだけどなぁ…」
〔ここで、戦いが終了となりましたので、私たちの出番はおわりとなります〕
〔とても良い戦いでしたね!〕
〔それではまた次回がありましたらお会いいたしましょう〕
〔さようなら〜!〕
片やすりすり大会、片や膝枕。当初の目的はなんだったのかと言いたいほどの光景だ。
「ねぇ、クリート君…」
「ん?どうしたの?因幡さん」
「この家族の皆さんってとてもいい人たちね…」
「そうだね。そこは僕も自慢できるところかな。まぁ、唯一…一人だけ少し問題な人がいるけど…」
「……そうなの?」
普段は大丈夫なんだけれど……お酒が入ってくると…本当に残念な人に…!!
「多分もっと遅い時間に帰ってくると思うから、まだ大丈夫だと思う……」
「そ、そんなになのね…」
「酔い潰れて寝て帰ってきてくれたら、それが一番楽に済むんだけど…」
「き、気を付けておくわ」
そう。父様、バーズのことだ。
普段は頼れる誇らしい父親なのだが…お酒が入ると豹変してしまう。
「兄様…ミザリーは眠くなってきました……」
「もうそんな時間か…じゃあおいで、寝るまで一緒にいてあげるから」
「はぁい…」
わちゃわちゃしているうちにいつのまにか時間が経っていたようだ。すでに10時を過ぎている。とてもミザリーが眠そうにしている。
ミザリーはいつも10時に近づいてくるとだんだんと眠くなっていき、10時半になると本人も耐えられないほどの眠気によってその場で寝てしまう。
「寝るって…ここがミザリーちゃんの部屋じゃないの?」
「そうだよ。でもミザリーは僕の部屋でいつも一緒に寝てるからね、基本的にミザリーは僕が寝かしつけてるんだよ」
「一緒…!?」
「ほらミザリー、おいで」
「はぁぃ…」
「じゃあ寝かしつけてくるからちょっと待っててね」
「は…はーい…いってらっしゃーい…」
くっついていた二人を剥がし、ミザリーを連れて自分の部屋へと向かう。
この状態のミザリーは自分で着替えることも難しいから僕が着替えさせなければいけない。
「……この現場を見られたら勘違いを起こしそうだなぁ…」
その言葉を溢してしまったが最後。言葉は言霊となって事象を起こす!
「クリート君、私たちどこで寝れば…い………」
「……!!これは誤解であって決して変なことを考えてなどでは!」
完璧なフラグ回収。ミザリーを着替えさせていると因幡さんが扉を開けて入ってきた。
「…はぁ、もう別にいいわよ。どうせミザリーちゃんが自分で着替えられないから代わりにやってあげてるんでしょ?」
「え…うん」
「ならいいわよ。下の子の世話を見るのも兄としての責任なんだから。それで、私たちはどこで寝ればいいかしら?」
「あ、ええと…一つ隣の部屋に客室があるからそこにお願いしてもいいかな」
「客室まであるの?分かったわ。それじゃあミザリーちゃんを寝かしつけたら客室まできて頂戴ね」
「は、はい…」
とても……とても意外だった。委員長気質(実際に委員長)の因幡さんのことだから、勘違いをして怒ってくると思っていた。先程の胸を揉んでしまった件も含めて何か因幡さんがおかしい気がする。
「兄様ぁ…?」
「あ、ごめんごめん。早く着替えようか」
「お願い…しますぅ…」
それからミザリーを着替えさせ、寝かしつけた。
いつもより疲れていたのか、5分で寝るところが2分ぐらいにまで短くなっていた。
そしてゆっくりと音を立てないように部屋を出て、因幡さん達がいる客室へ入った。
「お待たせしました〜…」
「ご苦労様」
部屋へ入ると、因幡さん、ベットで寝ている夏奈ちゃんがいた。
「あまり大声を出さないようにね。夏奈ちゃん、慣れないところでお疲れみたいだから」
「うん、分かったよ」
「で、なんで狩人君がここに呼ばれたかわかるかしら?」
「……なんとなくは」
「そう?ならいいわ。じゃあ目を瞑りなさい」
「…………はい」
「じゃあいくわね」
(今度こそ本当に打たれる!)
と思っていたら…
ぎゅぅぅ……
「え…あの……因幡…さん?」
「本当に良かった…」
「…………」
「私だってとても…とっっても悲しかったんだから……またあなたと会えた時、幻なんじゃないかと思った…でも本物だった…」
「そっか、そんなにも思っててくれたんだね。ありがとう」
夏奈ちゃんだけじゃなくて因幡さんも僕のことを思ってくれていたなんて…前世じゃそんなこと考えたことなかったな…
泣きじゃくる因幡さんをなだめながらそんなことを思う。
少し時間が経って、因幡さんは落ち着いてきたみたいだ。
「……ふぅ、ありがとう。こんなこと聞いてくれて」
「いやいや、僕で良かったらいつでも話し相手になるよ」
「そう?ありがとう。それにいつもの私と違って幻滅しなかった?」
「幻滅なんてしないよ。誰にでもそういう一面があっていいと僕は思うかな」
「そうなのね。……じゃあ恥ずかしついでに言うわ。実は、前から……前からあなたのことが好きだったの!」
「うん。知ってた」
「そうよね。突然だもの、返事はいつでも………知ってた!?」
「うん」
とっても分かりやすかったよ。前世から僕に好意があるってのは。でも、本気なほどだとは思わなかったかな…
「知ってた……ちなみに何時ごろから…」
「前世の時からかな〜。僕が事故で死んじゃう半年前くらいから」
「まさに私が好きになってきてた時じゃないの!!そんなに分かりやすかった!?」
「え、うん。なんか前より距離が近くなったっていうか…例を挙げて言うと、よく手を繋ごうとして出来なくてしょんぼりしてたりっていうのがよくあったし」
「ああぁぁあ!!やめて!言われると恥ずかしい!その頃はまだ自分に自信がなかったの!!」
聞かれたから答えを返したら、意外と黒歴史な部分だったらしい。すごく悶絶していた。
思い返してみると、意外と積極的になってきたのってあの頃からだったっけな。
「終わり!この話終わり!」
「そっちから振ってきたのに」
「うるさいうるさい!私はあなたのことが好き!以上!」
「確定でいいんだ…」
「いやっ、違っ…くはないけど!あぁもう!なんなのよ!」
「いや僕に言われても」
「もういいから!もうこの話やめ!!おーわーりー!!」
「分かった、分かったって」
ズイズイ寄ってきてすごい圧をかけてくる。
本人は怒っている気でいるようだが、顔が怒り切れていないのでなんか可愛い生き物的な感じにしか見えない。
「じゃあ話を変えようか。二人はこれからどうしていきたいのか、聞いてもいい?」
「変えてくれるのはありがたいけど、その問いは難しいわね。まだこちらに来たばかりで全くといっていいほどこの世界について分かってないのだから」
「そっか…そうだよね」
「でも、何も考えてないわけじゃないわ。具体的にとは言えないけれど、大体の目標は立ててあるの」
「そうなの?」
「さすがに何も考えずに行こうとは思えるわけないでしょう」
「あ…はい、そうですよね〜…」
ええ、まぁそうでしょうね…しっかり者の因幡さんが考えてないわけがないですよね…
前から計画的な行動をよくする人だから心配はしてはなかったんだけどね。
「とりあえず、宿…というか寝る場所は貸してもらえるってことでいいのかしら?」
「うん。多分僕が言えばみんな納得してくれると思う」
「へぇ〜、信頼されてるのね。ちなみになんて言うの?」
「そこは…どうしようかな?冒険者として今いるわけだし、強い人がいるっていう噂を聞いてここに鍛えにきたとかかな」
「うん…まぁ、妥当なところじゃないかしらね。付け加えて言うならば私は剣の腕を、夏奈ちゃんは魔法の腕を鍛えにきたってことにしておいてくれるかしら」
「うん、分かったよ。とりあえず因幡さんは元から剣の腕がいいから誰かに教えてもらうとして…問題は……」
「夏奈ちゃんよね…」
因幡さんは裏山で出会った時に見た剣技を自前で会得している。この村の剣士の人に見てもらうことができれば、すぐにでも始めることができる。
それに対して夏奈ちゃんは、『魔法』という地球にはなかった概念を学ぼうとするわけなので、因幡さんより遅れてしまうことになる。
「夏奈ちゃんなら狩人君に言われればすごい勢いで吸収しそうだけれど…なんせ魔法だからねぇ…」
「一から手取り足取り教えて行ったほうがいいかもね…」
「そうね…魔法の才能があるとして、一般に使えるようになるにはどれくらいかかるの?」
「どうなんだろう?この村のみんなの覚える速さ的には2〜3ヶ月ぐらいだったけど…それは適性があっての話だしなぁ…」
「適性も何も魔力かしら?それがあるかも怪しいところだからね…」
基本的に魔法を覚えるスピードは適性があれば2〜3ヶ月、適正なしで頑張ったとしても、ほんの少し出すのに一年以上かかる。
「とりあえず魔法適性はウチにマジックフィーラーっていう検査機があるからいいとして…問題は…魔力量かな」
「魔力量?それは言葉通りの意味で?」
「うん。魔法を使う人にとって魔力量はとても大切なことなんだ」
魔力量。言葉そのままの意味だ。その人が持っている魔力の量を指した言葉。この大小によって魔法を使用できる回数や難易度が変わってくる。
「適性検査機はウチにあるけど、魔力量測定器はないからなぁ…やるとしたら古い方法になるけど…」
「それって、分かりやすい魔法を何回も使って測るって方法?」
「そうだよ。よく分かったね」
「伊達に異世界小説を読んでないわ」
「そりゃお見それしました」
そう。因幡さんが言った通り、その人が使える簡単な魔法を何回も使って、使えた回数によって魔力量を測る方法だ。
原始的だが、いつでもできるし、器具とかも必要なくて簡単だ。
ただし、これには問題がある。
まず、魔力量を正確に測ることができないことだ。
魔法を使うには詠唱が基本的に必要だが、時には無詠唱や詠唱短縮などの時短スキルがある。これによって消費する魔力が変わってきて、本当の結果が分からなかったりする。(普通はそんなことありえないが)
とにかく、正確な魔力量を測れないと魔法の使用回数や使える魔法の把握が出来ないので、ちゃんとした測定器で測ったほうがいいのだ。
「測定器については友達にあたってみるよ。多分誰かが持ってると思うし」
「普通そういうものってギルドとかに置いてあるものじゃないの?」
「多分、普通ならそう。でもこの村、少し珍しくてね。こういう魔道具とかってギルドとかより、村に住んでる人を当たったほうが持ってること多いんだ」
「そうなのね…」
本当に不思議だよね。何故かみんな魔道具とか持ってんだもん。普通ならあるわけない家庭に。
「とりあえず、夏奈ちゃんのことはなんとかしてみるよ。魔法を教えてくれる人を探してみる。魔力を感じることができるところまでは僕が教えてあげられるしね」
「少し…夏奈ちゃんが羨ましいわ」
「夏奈ちゃんが覚えたら因幡さんにも教えてあげるよ」
「そう?催促したみたいで悪いわね」
「ふふっ、いいよいいよ。僕に教えてあげられることなら教えてあげるから」
「ありがとう」
そんなこんなで二人のこれからについては暫定的にだが決まった。
「さて、長話しちゃったね。最初呼び出された時は説教かと思ったけど」
「あら?してほしいならそう言えばいいのに」
「遠慮しておきます。それじゃ、もう夜も遅いし、明日のために寝ようか」
「ええ。色々ありがとう」
「まだ教えるべきことはたくさんあるからね、覚えれるかな?」
「そこはかかってこいの心構えよ。ふふ…それじゃ、おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
僕は挨拶を交わして、部屋を出る。
自分の部屋に戻り、寝巻きに着替えてミザリーを起こさないようにしながらベッドに入る。
「今日は色々ありすぎたなぁ…明日からもやることがたくさんだ……」
二人の先生となる人探しに、事情説明に…あ、二人の衣服とか生活用品とかも揃えなくちゃ……
やること…いっぱいで…明日…も…頑張らなきゃ…………
そこで僕の体力は切れ、目を閉じて眠りに…………つけなかった。
まぶたの裏に眩しい光を感じ…
(あ、これ…神界に連れて行かれるやつだ…)
あれから魔法陣を観察して5年間、結構な頻度で神界に呼ばれていたので、連れて行かれる時の感覚を覚えてしまった。
そして、僕はまだ休むことを許されなかった……
もしかしたら失踪してしまうかもしれない……半年経っても更新がなかったら失踪したと思うので…そこら辺、察してもらえると嬉しいです……