21.説得?そんなもの見透かされてるよ
ようやく描き終わりました…もういろんな時間に分けてやっていたので喋り方とかキャラとかグチャグチャですよ…すみません。
とにかくなんとか書き上げることができたので上げました〜…
そしていつの間にかプレビューが8000、ユニークが2400にも登っていました!こんな一年が経ったというのにまだ20話しかないクソ小説を読んでいただいて本当にありがとうございます…
「さあ、あがって上がって」
「お邪魔します…」
「おじゃま…します…」
外で話すのもなんだと思い、2人を裏口から家に上げ、一階応接室に連れて行った。
「みんなに状況説明してくるから、そこらへんで少し待ってて〜」
「急がなくてもいいわよ〜…って、行っちゃったわね」
「ここが…狩人君のお家…!」
「なんだか不思議な場所ね」
「神秘的な…何かを感じる…気がする…」
「そんなことはないわよ」
僕が母様たちに状況説明をしに行く間、因幡さんと夏奈ちゃんはあまり緊張はしていなかったみたいだ。
───因幡・夏奈サイド(因幡目線)───
「それにしても異世界…ね。今だに信じられないわ」
「私は…狩人君の言うことだから…信じる」
「相変わらずの溺愛っぷりね。私だって嘘だとは思ってないわ。あの時は白兎の状態だったけれど、切った感触がまだ手に残っているもの」
「それに…魔法も…体感したし…ね…」
「そうね。ここが本当に異世界だって思えるわ」
私は先程まで腰につがえていた刀の頭を撫で、そう答える。
「この刀も不思議なものだわ。私のではないのに、何故か手に馴染むような感覚があるのよ。それにいつのまにか手に持っていたし」
「どこかで…拾った…?」
「こんな業物、簡単に拾えるものじゃないわ」
少し鞘から引き抜いて刀身を眺める。
白く輝くその刀身は何者をも惹きつけるような美しさを放っている。
「こんなもの落としたら罰当たりよ。どれだけの苦労がこの刀にかかっているか…想像しただけでも鍛治士に頭が下がるわ」
「そん…なに…?」
「ええ。刀の刃文も見事だし、反りも大きくて美しいわ。さっき見たけど、切先も鋭くて見ていて切れてしまいそうだった」
「なんで…そんなもの…持ってたんだろう…?」
「さぁね。異世界に来ちゃってるんだもの、なんでもありだって思った方が早いわ」
「まぁ…そっちの方が…納得いく…」
異世界に来てしまった時点でもうなんでもありだと考えてしまう。というかそうしたほうが色々と楽になるはずだ。
「ここが狩人君が住んでいる家…ねぇ。豪華とは言い難いけど、なかなか綺麗で上品な家じゃない?」
「結構…整ってる…」
「普通、異世界の家って言っちゃ悪いけど少し汚いというか、質素を拗らせたみたいなものだと意識していたわ」
「狩人君一家…位が高いのかな…?」
「薬屋って言ってたし、それはないんじゃないかしら。でも、テーブルに椅子…異世界では珍しい家では靴を脱ぐという習慣。狩人君の影響なのかしらね」
「結局のところ…なんでもいい…」
「まぁ、そうよね。私達は部外者もいいところだし、これからどうするかもわからない状態だもの」
所詮今は狩人君の好意でここにいさせてもらっているだけ。出て行けと言われればすぐに出て行くし、ここで働けと言われれば働く。むしろ働き口が分からないこの世界、働かせてくれるならばとても喜ばしい事だ。
「私達の運命は狩人君によって決まるのよね」
「命を握られる…ちょっと興奮するかも…」
「夏奈ちゃん?そんな趣味は持ち合わせてなかったよね?」
「冗談…本気にしないで…」
「夏奈ちゃんだとありえそうだから怖いのよ」
「それはごめんなさい…」
「まあ。待っててと言われたのだから、気長に待たせてもらいましょう。分からないこと考えてても無駄だしね」
「ちょっと…疲れた…」
「あら、じゃあ仮眠でも取ってるといいわ。来たら起こしてあげる」
「お願い…」
そう言い残して、夏奈ちゃんは倒れ込むように寝てしまった。
いつもこうだからちょっと困るのよねー。私が支えてくれるって分かってるからなんだろうけど。久しぶりに膝枕でもしてあげましょうか。ゆっくりするといいわ。
ゆっくりと体を倒し、頭をふとももの上にのせる。そして彼女の頭を優しく撫でてあげる。
少しくすぐったいのか時より体をうねるが、お構いなしに続ける。
そして、知識のある紳士諸君から見たらとてもすばらしき光景がここに誕生した。
くっ…!だがこれ以上は私の拙い言葉では言い表せない…!すまない諸君!この光景を見させてやりたいが私には力不足だ!それによって場面を映させてもらうぞ!
───クリートサイド───
「母様たちは…どこにいるんだ?」
家の中を探して見たけど、見当たらない。
まだ村のみんなを止めてくれるために外にいるのかな?
一応、確認のために《範囲探索》を使って家の中を含め、周囲百メートル程度を調べてみる。
「家の中は…反応が二つ。これは因幡さんと夏奈ちゃんの反応だな。周囲には……反応がない。本当にどこに行ったんだ?」
まさか、裏山に入っていってしまった?いや、母様たちに限ってそんなことはしないと思う。じゃあ、村の方か…?
そう思い、《範囲探索》の範囲を広げてみる。
「……ん?村の一か所に反応が集まってる…しかも反応が動こうとしない……まさか何かあったのか…?」
母様や父様がいるんだ。正直、なにが起こってもなんともないはず……だけどこの状態は明らかにおかしい。心配だ、外に出て少し確かめるか…
今まで家の中から反応を見ていたので、しっかりとした状況は分からない。外に出れば村に何かあったのか確認できるはずだ。
そう思い、外へ出てみると…
「な…!?こ、これは…!!」
家が焼け、灰色の煙が立ち上り、空が赤色に明るくなっていた。
「なんでこんなことに!?母様たちは!?村のみんなは!?いや、深く考えるな!状況確認をしっかりしろ!《遠見》!」
光の魔法の一つである、《遠見》を使う。これは光の屈折度合いを変化させ、遠くのものを見ることができるようになる魔法だ。狩人なら大半が使っている下級魔法だ。
《遠見》で村の光景を見る。そしてなにがあったのか探る。
「…っ!!」
僕がそこで見たものとは…
「GOGUGYAAA!!」
「劣鬼王…!!」
村を破壊するゴブリンロードの姿だった。
ゴブリンロードとは、劣悪鬼が長く生きて特異進化し、ある程度の知性を持って周りのゴブリンを率いるようになった上位ゴブリン。いわゆる特殊モンスターだ。
ゴブリンロードが出現した際、冒険者ギルドが緊急依頼を発令し、直ちにAランク以上の冒険者を集めて撃退するほどの危険度。こいつに襲われた村は全て壊滅状態で、助かったものは数少ないと言われている。
「でもなんでこんなところにゴブリンロードが!!…っ!勇者召喚の時の発光か…!」
あの時、光は村まで届くような強さだった。近くの洞窟とかに隠れていたとしたら反射して光をくらっただろう。それで起きてしまったとしたら…
「こんなこと考えてる場合じゃない!早く村に行かなきゃ!」
村へと走り出そうとした瞬間、家で待たせている2人のことを思い出した。
「知らせる…?心配させるだけだ。ここは苦しいけど嘘をつくか…?」
迷ったが決断は早かった。
『因幡さん!多分いきなり頭の中に声がして驚いてるだろうけど、時間がないから用件だけ言うね!村にゴブリンロードって言う超危険なモンスターがいるんだ!2人には危険すぎるから家で待っていてほしい!その家には防御魔法が嫌と言うほどかけてあってそこらへんのモンスターじゃあ近づけないようになってる!だからその家にいて欲しいんだ!夏奈ちゃんにもこれを伝えておいて欲しい!』
2人には真実を言った。
嘘を言って何かおかしなことがあれば必ず2人はついてこようとする。もしもそれで2人のみに何かあれば僕は一生それを悔やんで生きて行くだろう。それだけは2人のためにも嫌だ。だからあえて真実を言って2人をあの家にいるように頼んだ。
因幡さんはこんな異常事態の時も判断が優れている。彼女ならきっと最善の手を取ってくれるはずだ。
因幡さんに《念話》で伝えたあと、僕はすぐさま急いで村へと向かった。
「母様…ミザリー…リベネさん…!シャマラさん…!どうかご無事でいて…!」
僕はすぐさま村の方へ走った。
「アベル!村の状況とゴブリンロードまでの最短ルートを教えてくれ!」
『その必要はないと思われ…』
「いいから早く!」
『……了解しました。最短ルートを提示します』
何かアベルが言いたそうにしていたが、それを制止して欲しい情報を聞く。
そしてアベルの情報通りに進もうとして村の入り口に差し掛かった時…
「GOGYAAA!!」
「ゴブリンロードの叫び…声?」
村の中からゴブリンロードの悲痛な叫び声が響いてきた。
僕は叫び声の原因を調べるため、村の中へと入っていった。
「あら〜?クリート〜?どうかしたの?」
「え…いや…村が燃えてて緊急事態かと…あの母様…そのゴブリンロードは…?」
「あ〜?この子?この子はさっきの光でびっくりして起きちゃったみたいなの。普段は大人しい子なんだけどね〜」
「やっぱり光で…………普段?」
母様の言葉に少し気になる部分が…
「そうなのよ、普段は大人しくていい子なんだけどね〜。驚くと暴走しちゃうのよ」
「母様…そのゴブリンロードと知り合いなのですか…?」
「うん、そうよ。冒険者を辞めてこの村に来たばかりの頃に弱ってたところを助けたら懐かれちゃってね。裏山の洞窟に隠れさせてたのよ」
「…………」
まさか母様の知り合いがトラブルの元だったなんて…
これなら心配する必要なんてなかったんじゃないか…
『だから言おうとしたのに…』
それは…本当に…ごめん…
「母様、村が焼けているのですが…」
「ああ、それね。この子が村から出ないように村のみんなに協力してもらったのよ」
「ではその村のみんなは…?」
「それならあそこでのんびりしてるわよ?」
母様が指さした先を見ると、燃えている家の住人達が木の長机を囲んでお茶を啜っているのが見えた。
「みんな私のお願いを快く受けてくれてね、協力してくれたのよ。どうせ家なんかすぐに戻るからって」
「この村の常識を疑う言葉なんですが…それに母様はなぜ村に?ゴブリンロードを止めるなら裏山でも出来るのでは?」
母様ならゴブリンロード程度なら村に到達する前に止めることなんてたやすい事だと思うけど…
「それがね〜、クリートに頼まれて村のみんなを止めようと話したら、『クリートが行ったなら大丈夫だな』って。みんな起きて眠れないみたいだし、村でお茶でもどうですかってね」
「……なんかもう色々起こりすぎていて頭がパンクしそうです…」
「あらあら、ならみんなのところに行ってお茶を飲んでくるといいわ。ミザリー達もそこにいるから」
「そうします…母様も頑張ってくださいね…」
「あら嬉しいわ〜。その応援でママ頑張れちゃう!行くわよ〜!」
もうさすがに思考回路がショートしそうだよ…
待っていた勇者が来て、駆けつけたらその勇者が襲われてて、さらにその勇者を助けたら友達で…そしてその友達に正体を見破られ…そのうえ、家にみんながいないと思ったら村が焼けててぇ?そして向かえば母様の知り合いが原因で…
もう今日だけで色々ありすぎてるんだよぅ…接続詞が分からなくなるぐらいにまでありすぎるんだよぉ…
僕はとぼとぼ歩いて村のみんなが集まっている場所へと向かった。
「あ、兄様おかえりなさい!」
「ただいまミザリー」
「兄様もお茶飲みますか?」
「うん。お願いするよ」
「じゃあ入れてきます!」
「元気だなぁ…」
ミザリーが走ってお茶を貰いに行くのを見て、みんながそれほど緊張感を持っていないのがよくわかった。
あたりを見回りで見ると、父様やリベネさん、シャマラさんの姿も見えた。
「父様完全に酔っ払ってるな…あれ…」
どうやら男性陣ではお茶ではなく酒を飲んでいるらしく、顔が赤い人がたくさんいた。
ちなみにリベネさんとシャマラさんはその男性陣にお酒を注いで回っていた。
「あの2人のせいでもあるのか…」
「兄様、お待たせしました〜!」
「ん、ありがとう」
ミザリーが持ってきてくれたお茶を口にし、ようやく一息つくことができた。
家に戻ったらやることがたくさんあるなぁ…あ、そういえば2人に村の状況伝えてないや。念話で伝えておかなきゃ。
『あー、あー、因幡さん。聞こえてるかな?とりあえず村の方は大丈夫だから、肩の力を抜いて家で待ってて欲しいんだ。多分すぐ戻るから、ゆっくりしててね』
まぁ、こんなものか?いきなり連れてこられた家でゆっくししててと言われてもよく分からないとは思うけど…
もうすぐ母様の方も終わるみたいだし、先に家に戻ってようかな。
コップに残っていたお茶を飲み干し、長椅子から立ち上がる。
「ごちそうさま。ミザリー、僕は先に家に帰ってるね。ちょっと用事があるし」
「ん!なら私も一緒に帰ります!リベネさんに伝えてきますね!」
「あ、それは………まあいいか。結局伝えなきゃいけないことだし」
ミザリーは僕の制止よりも早く駆け出してリベネさんのところへ向かっていった。
なるべく最初にミザリーには合わせたくはなかったんだけれど……大丈夫かな…
多分何か勘違いとかを起こしそうで怖い。
一抹の不安を胸に、戻ってきたミザリーと一足先に家に戻った。
「ただいまー」
「ただいまー!」
玄関を開け、習慣的につい言葉にしてしまう。
そのまま因幡さんと夏奈ちゃんがいる居間の方へ向かう。
「ミザリー、紹介しなきゃいけない人がいる」
「……?誰なんですか?」
「なんというか…まあ、新しい友達だよ」
「兄様の友達ですか!?早く会いたいです!」
「ということで、友達の因幡さんと夏奈ちゃんです」
居間に通じる扉を開きながらそう言う。
いきなり紹介された2人の反応は…
「どうも初めまして。クリート君の友達になった因幡と申します。よろしくお願いしますね」
「ふぇ…?あわわ…あの…狩…クリート君の友達の…夏奈…です…お願い…します…」
思ったよりも反応が良かった。
水月さんはいきなりなのに完璧に対応していた。夏奈ちゃんはいきなり紹介されて少し驚いてもたついていたが、ちゃんと対応してくれた。
んむぅ…意外としっかりしてるではないか…
僕だったらテンパりそうなんだけど…
「イナバさんと、ナナさんですね!兄様の妹のミザリーと言います!よろしくお願いします!」
自己紹介とともに可愛らしいお辞儀をしてミザリーも対応していた。
「おっふ…きゃわ…」
「因幡ちゃん…?」
「ごめん…つい」
今のは聞かなかったことにしようか。いいな、諸君?
「この2人は少し遠くの街からきた冒険者なんだ。2人で色んな場所を巡って旅をしようとしていたみたいなんだ。だけど裏山で迷っちゃって、僕がここに案内してきた」
「へぇ〜!そうなんですか!イナバさん!ナナさん!おしゃべりしませんか!私、他の街のこと聞きたいです!」
「え…ええ、いいわよ。私たちのいた街のこと教えてあげる。ね、夏奈ちゃん」
「……!?う…うん…」
即興で適当に作った物語をそれっぽく話す。結果的にミザリーを納得させれたみたいなので、因幡さんたちには悪いけど頑張ってもらおう。
(ちょっと!!これどうするのよ!!)
(日本のことでもいいから、それっぽく話してよ!)
(後で報酬もらうからね)
(なんなりと)
アイコンタクトでそんな事を話し合う。正直何を報酬にされるのかは分からないけど、どうとでもなれ。
「私のお部屋でおしゃべりしましょう!」
「じゃあ、失礼するわね」
「クリート君…また後で…」
「うん。楽しんでねー」
ミザリーたちは部屋へと向かっていった。
さて、1人になったわけだけど…
まず考えなきゃいけないことが一つ。
「ミザリーには通じたけど母様とリベネさんには通じないよな…絶対…」
母様とミザリーさんは結構勘が鋭かったりして、いつも説得に時間がかかったりしていた。
父様は別に大丈夫だろう。ミザリーとおなじぐらいだし。
シャマラさんは…大丈夫そうかな。
「勇者だと打ち明けるか…?母様たちなら理解してくれそうだけど…もしもの反応とかしたら嫌だしなぁ…」
とにかく、母様たちが帰ってくるまでにこのことは考えておかないといけない。
何かいい案が出ればいいんだけどな…
「考え事ばかりしてても仕方ないし、みんなの為に夜食でも作ってようかな。その間に浮かべばそれでいいし」
僕は別作業という名の思考放棄を行った。
夜食か〜…もう夜も遅いし、簡単に食べられるもののほうがいいかな。
夜食と言ったらラーメンみたいな感じはあるけど…この世界にラーメンなんてないし、第一重たいよね、スープによっては。おにぎりとかにしておこうかな。
「確か…ここに炊く前のお米モドキが……あったあった。さ、チャチャっと炊いておにぎり作ろうか」
ここはなんでもござれの魔法の世界だ。基本的に魔法を駆使すれば大体のことはできてしまう。
お米の炊き上げだって火の魔法と水の魔法を組み合わせればあっという間に完成する。日本の炊飯ジャーの早炊ぎを凌駕するほどの速度だ。
しかも米はふっくらと炊き上がる。魔法って便利だよね。
とかいうなんか変な独り言的なものも混じえ、僕はおにぎりを十数個程度作りあげた。
「こんなものかな。多く作りすぎて食べきれなかったらいけないし。そろそろ母様たちが帰ってきそうな時間だけど……言い訳考えてなかったなぁ」
家に戻ってきてからすでに25分ほど経っている。もうすぐ村のみんなも熱が冷めて感じ家に戻る頃なので、母様たちも同じくらいに帰ってくるはずだ。
「ただいま〜」
「たりゃいま〜!」
思った通りだ。母様たちが帰ってきた。
父様は…酔い潰れてるなこれは。
「母様たちおかえりなさい!お腹空いてませんか?夜食でもと思っておにぎりをつくりました!」
「あら!!ちょうど小腹が少し空いていたのよ〜いただいてもいいかしら?」
「はい!」
良かった。母様に食べてもらえた。
「クリート様、このリベネ、ただいま戻りました」
「シャマラ、ただいま戻りました」
「うん。お帰りなさい。リベネさんたちもどう?村のみんなにお酌して回ってたでしょ?」
「いえ、私どもは大丈夫ですのでお気持ちだけ受け取っておきます」
「ありがとうございます」
「ううん。大丈夫ならいいんだ」
「ではクリート様。失礼いたします。旦那様をお部屋へ連れて行かなければいけませんので」
「分かった。頑張ってね〜」
「失礼いたします」
「失礼します」
父様……なんか最近父様に関してのいい記憶がないんだけれど…
酔い潰れてるけど、どうせ明日には治ってるからいっか。父様のことだし。
さてと…
「母様。少しお話があります」
「あらなに?クリートの作ったおにぎりすごく美味しいわよ?」
「それはありがとうございます。実は今から話すことはあまり…」
「あまり世間には公にしたくないことなのね」
「ええ…はい。これはさっき起こった光に関係することで────」
僕は全て話した。信頼できる母様にならと、前世のこと、勇者のこと。流石に神界については話すことはできなかったけれど、話せるだけ全て話した。
「───ということなんです。基本的にはあまりいつもと変わらないとは思うんだけど…」
「……やっぱりそうだったのね」
「そうなんです………やっぱり?」
「いやね、結構前からあなたのことについて少し不思議に思っていたのよ。教えなくてもいつの間にか覚えてるし、礼儀や作法、話し方もまるで子供のそれとはまるで違ったもの。伝説と言われている話の中に似たようなことが書いてあるのを思い出してね。もしかしたらと思っていたんだけど、本当だったのね〜」
「つまり、元から僕についてはアタリがついていたということですか?」
「そうね」
「ちなみにいつ頃から…?」
「最初に思ったのはクリートが2歳ぐらいの時かしら。確信したのは7歳の頃よ」
「思ったより早かった…」
7歳て…じゃあこの6年間は僕のことについて分かった状態で過ごしてたってことか…隠してたつもりだったんだけどな。
母親の目は欺けないってことか…
「他に質問はある?ないならその勇者ちゃんたちに会ってみたいの」
「ひとつだけ…この事を父さんたちは…?」
「もちろん知らないわ。あ、でもリベネさんは知ってるかも。よくお話ししていたもの」
「分かりました…とりあえず、ミザリーはなんとか誤魔化して2人のことを冒険者ってことにしてあるので、同調をお願いします…」
「分かったわ!クリート特性のおにぎりをも食べたし、元気にいきましょう!」
「あ…ちゃんと3人の分は残してある…」
母様は意気揚々と、僕はがっくりと肩を落としてミザリーと因幡さん、夏奈ちゃんがいる二階へと向かう。
もう今日は色々とありすぎたんだ…早く全て終わらしてゆっくり寝たい…
だが、そんなことはまだ許されないことをこの時のクリートは知らないのであった。
タイトルがネタバレを含み始めてきた今日この頃…次の話をどう書こうかと考えてはいるものの全く浮かび上がらない…
その場その場で書いていくから次の展開をどうするかがもう分からないんだよぉ〜(泣)
とにかく毎月更新を続けるために、なんとか書き上げていきます…それでは…
〈いつもの(忘れがち)〉
誤字・脱字等がありましたら報告してくださるとありがたいです。