裏話『一方そのころ』1/2
今回の裏話はプラハル、バーズの夫婦が物語の途中で『癒しの薬』に襲ってきた野盗の犯人を成敗しに行く話です。
時系列的に10〜14話ぐらいの話です。
別に対して物語に干渉してくるものではないので、興味のない方は読み飛ばしでもかまいません。
というか書くのにめっちゃ時間かかった…
2話に分けて投稿なので間違えないよう、お気をつけください。
「じゃ、そろそろヤルか」
「そうね、あいつだけは許せないもの。こんなことしてどうなるか、きっちりと分からせてあげなければね」
ここはとある街のとある宿屋。その一室で話し合う二つの影は一切の無駄が無く、手際よく動いていた。
「さて、プラハル。準備はいいよな?」
「ええ、バッチリよバーズ。一片の漏れもないわ」
「よし。じゃあ行動開始だ」
これは時間として少し前の事。バーズとプラハル、クリートの両親が起こしたおはなし。
2人はとある目的のため、この街へ来た。さて、それについて少し前から思い返してみましょうか……
「私、許せないわ!パパ、きちんとこのお礼をしてあげましょう?」
「ああ、そうだねママ。俺たち家族に何をしてしまったのか、思い知らせてあげようか」
これは2人のこんな会話から始まった。
時はクリートがリベネを雇って訓練をしている頃。
バーズとプラハル、2人は乗合馬車に乗って移動していた。
「どうやってお返ししてあげたらいいかしら」
「とりあえず俺たちに負わせただけの分は返さないといけないなぁ」
「そうねぇ。ウフフフフ」
「アハハハハ」
そんなことをこぼす2人に、同席していた冒険者や旅人らは戦慄していた。そして後に1人の冒険者はこう言ったという。
『あれはやばすぎる!!あんな殺気今まで感じたことなんてなかったさ!声を聞いているだけで毛が逆立ち、鳥肌も出ていた……!何より最後の笑い声だよ!全く感情がこもっていなかったし、何より目が完全に笑ってなかったんだよ!!』
まあ、完全に周囲の人が無駄に迷惑を受けてていただけである。
そんな話はさておき、しばらく馬車に乗って移動した2人。どこへ向かっているかというと…
「お客さんら!もう直ぐ着きやすぜ!」
「ここね」
「ああ、ここだね。間違いない」
2人が向かっていた先とは!
幾多もの躍る水流と華やかに舞う光で飾られた、水と光の街『ウォルゲスタ』!!
2人を含め総勢15人が乗っていた馬車は街の門を潜り、中へ入った。
「やはりいつ来ても活気のある街だな」
「そうね、人と人との良い繋がりがたくさん見えるわ」
「ああ、だが残念ながらこの街にも黒いところがたくさんあるだろう」
馬車から覗ける景色を見て、2人はそう呟いていた。
確かに通りは人で賑わっており、人と人との繋がり合い、良い関係性が見えてくる。だが、少し深く観察すれば、陰で起こっているであろう悲惨な現状も想像できてしまう。
「いち早くこの街のトップを消すべきのようね」
「そのようだ。降りたら直ぐに宿を借り、準備を整えよう」
「了解よ」
他の人には聞こえない程度の声で話し、馬車が止まると料金を払い、行動を起こすために準備へと駆けた。
「俺は宿屋確保と武器を集めに回ってくる。プラハルは道具と備品を頼む」
「言われなくても。武器を集めるついでに細串針も頼むわね。使うから」
「わかった。一時間後、あそこの路地で」
「ええ」
プラハルのその言葉を最後に2人は目的の場所へと向かっていった。
───1時間後───
二つの影が同時に指定された路地へと走ってきた。
言わずもがな、バーズとプラハルである。
「収穫は」
「バッチリよ。ついでにヤツの情報も集めておいたわ」
「さすがだな」
「褒めるのは後で、そっちは」
「上々だ。裏道りを回れば直ぐに集まった」
「よし、さっそく宿屋で計画を立てましょうか」
「ああ」
出会って数秒、それだけの間で互いに伝え合い、そしてまた行動を始めた。
まだ日は高い。人は大勢いて通りは賑わっていたが、それを苦もせずにスイスイと避けて通っていく。
宿屋『銀の鍵』にたどり着くには対して時間は要らなかった。
「おかえりなさいませ。お部屋の準備は出来ております、二階の奥の部屋へどうぞ」
「ありがとう。助かる」
「いえいえ。どうぞごゆっくり」
宿屋の女将から部屋の鍵を受け取り、その部屋へ向かった。
なぜ今鍵を受け取ったのか?それはバーズが時間の短縮を図った為であった。
この宿は受付後、客が取った部屋に不備がないか再度チェックをする決まりがあった。客に不満を与えないようにと、女将の心がこもったおもてなしをするためである。
そのためバーズは先に受付だけすまし、一時間後また戻ってくるからその時に鍵をもらうと言って、外へ出ていったのである。
その結果、時間を無駄にすることなく効率的・最大限に必要なものを集めることができた。
「さて、どこから侵入すべきか」
「それなら裏口があるわ、見張りも立っていないみたい」
「ほう…この状況で見張り無しか。どうやら俺たちのことを危険視していないみたいだな」
「所詮村の薬屋風情とでも思っているんじゃないかしら?まあ、その安易な判断が災を呼ぶのだけれどね」
あーでこーでこうしてこうなって……
すでにプラハルが情報屋から得ていた知識で迅速に計画が決まっていく。
「よし、侵入経路と対象のいる部屋の確認はこれぐらいで大丈夫だろう。次は買ってきたもののチェックだ」
「私が目利きでしくじるとでも?侮られたものね」
「そこは心配してないさ。ただ、万全を期すためだ。万が一、億が一にでもそんな可能性があるのなら潰しておきたいからな」
「それもまぁ、そうね。確認しときましょうか」
計画が立て終わったので、買ってきた装備や消耗品のチェックへ移った。
売り物を買うときは2人とも十分に気を付けて買うようにはしているが、ただ見ただけでは分からない内部のヒビなどを確かめるために全てを隅から隅まで調べ尽くしていく。
ちなみに、買ったものは7割武器で残りの3割が毒矢などの消耗品である。
消耗品の量に対して、何故武器の方が多いのかと思うことだろう。
それは基本的にこの武器たちは使い捨て用だからだ。
刃物で一度切れば相手の血が付着し、僅かでも切れ味が悪くなる。その僅かな差が何かを生んでしまうことがある。だから武器は基本使い捨て、繰り返し使うとしても三回が限度としている。
「よし、ほぼ使えそうだ」
「短剣30本に片手剣が6本、小斧が10本、あとは隠しクロスボウ2つに痺れ薬と眠り薬の毒矢がそれぞれ40本ずつ。それに細串針が30本ね。多いとは言えないけれど、これだけあれば十分足りるわね」
「そうだな。基本的に警備兵は殺さず気絶で済ませるが、警報を鳴らそうとしたり叫んだ場合は速、殺だな」
「ポーションも大量にあるし、あとは時間を待つだけね」
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なーんて、若い頃通りすがりの迷宮商人が言ってた時に買った古いものだ。
何年も使っていて外の袋部分は汚れてしまっているが性能は衰えてなどいない。安心して使うことのできるものだ。
そんな無駄な話は置いといて、潜入・戦闘準備が終わった2人。後は決行時間を待つことぐらいだ。
「今のうちに休息を取っておこう。プラハルは先に風呂に行ってくるといい。俺は食事を取っておく」
「了解よ。身体中の匂いを消しておく事にするわ」
「ではまた」
そして再び2人は別行動をする事とした。
─────3時間後─────
ホー…ホー…
二つの影が闇に紛れて音も立てずに住宅の屋根を駆けていた。
「対象はこのまままっすぐよ」
「了解」
影の正体は……あぁもういいや、この語り方めんどくせ。2人はプラハルとバーズ。決行の時間になったから標的のマベジー・ジェンベントとかいう奴のもとへむかってるとこ。
「おい、語り手。職務放棄するな」
「誰に向かって何を言っているの?」
「おや?何故だろうか?どうしてもツッコミをいれなければと…」
「仕事中よ。気持ちを入れ替えなさい」
「ああ、すまなかった」
ちょいと気づかれかけたが大丈夫大丈夫。
2人はすごいスピードで屋根の上を駆けて目標まで到達しましたよっと。
「ちょうど裏口のようね。情報の通り見張りはいないみたい」
「計画通りだ。このまま進めるぞ」
「承」
ちょうど裏口に着き、情報屋の情報通り見張りがいないのを確認して潜入開始。
「敵2、4」
「承。3c…2...1...」
──ガッ!グガガ……
──グッ!ウググ……
かわいそうに…何が起こったかすらもわからずに2人の警備兵は意識を落としていった…
2人の警備兵を人目のつかないところに隠し、次へと進んでいくプラハルとバーズ。
道中出会う警備兵を道具などを駆使し、全て気絶させて進む。
「思ったよりも数が多いな…」
「少しの警備は普段からしてるようね。それだけ悪事をしているのか…それとも隠したいものがあるのか…」
「何はともあれ標的の部屋だ」
「ええ。開けるわよ」
「……待て。何か聞こえるぞ」
プラハルが扉を開けようとするのをバーズが静止し、耳を澄ませる。
え?道中のバトルシーンはって?語り手の仕事量舐めんなよ!?毎話だぞ!?毎話!!もう疲れてんだよこっちは!そんなもんいらねぇだろがぁ!!(今回のみ語り手が暴れております。彼の苦労の程、ご理解の上、失礼をご了承ください)
「語り手うるさいぞ」
「少し黙って」
え?俺が悪いの?というかいまさらだけどなんで干渉してこれてんの?おかしくね?これ後日録音だぞ?おーい、聞こえてるなら返事をして───
えー…先輩が失礼しました。ここからは私が変わって語り手をさせて頂きます。
2人が扉越しに耳を澄ませると、1人の男の声が聞こえてきた。何やら独り言を呟いている様子。
「後もう少し、もう少しだ…もう少しで私の計画が完成する…!」
もはや独り言とは思えない声量で呟いていた。
「計画?どうやら悪いことを考えてたようね」
「さっさと捕まえて吐かせるか」
「ええ、いきましょう」
そう言うと2人は扉から少し距離を取り、助走をつけて扉にタックルした。
べキャッ!!
鈍い音と共に装飾された両開き式のドアがクルクルと宙を舞う。
「な、なんだぁ!?」
「マベジー・ジェンベント!貴様を捕縛する!」
「素直にお縄につきなさい!」
いきなり真っ正面のドアが吹き飛んで驚きを隠せないマベジーに対し、プラハルとバーズは問答無用と捕縛しにかかる。
「ちっ!そんな簡単に捕まってたまるかよ!『炎ようず巻き対象を穿て!《炎槍》!』」
だが、マベジーの方も馬鹿ではないらしくとっさに詠唱をしてこちらに魔法を撃ってくる。
その炎の槍を危なげなく2人は避ける。
「火魔法の使い手だったか。これは想定外だな」
「そうか!残念だったな!私の炎に包まれて死ぬがいい!《炎槍》!」
「だが嬉しい想定外だ。魔法に絶対の自信を持つ奴で」
「『水よ力を貸して《水壁》』」
一発目を避けた2人だか、マベジーが再び魔法を撃ってきた。だが、その魔法は2人に当たる前にプラハルが紡いだ防御魔法によってかき消されてしまった。
「んなっ!?」
「さて、悪さをする子にはお仕置きが必要だな」ビュン!
「へ…?」
鋭い風切り音と共に左手に違和感を感じたマベジーが視線を自身の左手へと徐々に移していく。
違和感の正体はすぐに分かった。否応にも分かってしまった。
「手が…!私の左手がぁぁあぁ!!!」
「左手ひとつぐらいでうるさいな。静かにしとけ」
ゴンッ!
「へぅっ……」
「おっと、死なれちゃ困るからな。止血止血っ」
なにも危なげなくマベジーを捕縛(?)することが完了した。
悪者はこうなる運命なのです!!
…失礼いたしました。
「私の出番あまりなかったわね」
「いや、魔法の援護は助かったぞ。俺が剣を振った時、密かに身体強化魔法をかけただろ」
「あら?気づいてたの?」
「ただの戦闘に精一杯の初心者とは違うんだ。それぐらいわかる」
「そう。じゃあとりあえずこいつを叩き起こしましょうか」
マベジーを捕まえた2人。この後どんなことが起こるのでしょうね…
そんなことは気絶したマベジーには知り得ないことだった。
大変お待たせして申し訳ございませんでした。(まぁ、待ってる人なんていないと思うけど…)
結構文章構成などがぐちゃぐちゃになっておりますので、誤字・脱字など多々あると思います。
もしも発見いたしましたら、ご指摘いただけるとありがたいです。