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14.いざ開店

ようやく1話書き上げられた…最近書くペースが遅くなってきていて困る…


チュンチュン


チュンチュンチュン


「ん…あぁ………もう朝〜?」

「お早いご起床で。クリート様」


朝。小鳥たちのさえずりが美しい音色となって響いている優雅な朝。


「あ〜…おはようリベネさん。…………この状況について何か言うことは?」

「何のことをでしょうか?」

「いや、だから…」


目の前で紙とペンを持って何か絵を描いているリベネさんがいる。


周りを見て状況を確認すると、だいたいスケッチをしている理由がわかった。


「すぅ…すぅ…」

「………………近い。けどかわいい」


ミザリーが僕の体に完全にくっついているのだ。まるで木にしがみつくコアラのような。


ミザリーがかわいくてスケッチをするのならば良い。うん。それは価値があるほどのものだからね。だがしかし?


「なぜ僕は上裸なのか、そこのところについて教えてもらいましょうか?リベネさんや」

「教えるも何も、その方が双方にとって良い。と思い、やった次第です」


こんの人…!明らかに確信犯でしょうが!


「…いや、たしかにミザリーの感触を直で感じられるのは嬉しいよ?」

「それは恐縮で」

「だからといって上裸の必要はないよね?別に手を繋いだりさ、もっとあったよね?」

「…………っは!?そっちの方が純で尊い!?」

「一体あなたは何をしようとしてるの!?」


リベネさんが……リベネさんがおかしくなった…アベル同様変になった…


僕がリベネさんは『兄×妹』推しという受け入れがたい真実を目の当たりにし、ショックを受けて震えていると…


「まあ、冗談はここまでにしましょう。もうすぐで朝食の準備ができますよ」

「え…?冗談…?本当に冗談だったの…?」

「はい。もちろん冗談です」

「じゃあその手に持ってる紙とペンは?」

「この紙とペンは夕食のメニューを考えるために持っていただけです。最近料理のリパートリーが減ってきていましたので」

「なんだ…よかった……」


本当の真実を聞き、僕は安堵する。


変なことしたから眠気なんて吹っ飛んだよ…


「クリート様ー!ミザリー様ー!朝ごはんの準備ができましたよー!」


下からシャマラさんの元気の良い声が聞こえてきた。どうやら昨晩はしっかりと眠れたようだ。


「クリート様。お召し物を整え、朝食をお食べになってください。ミザリー様は私が起こして差し上げますので」

「うん…ありがとう。お願いするね」


そういって僕は部屋から出て、リビングの方へ向かっていった。


服は完全にあなたのせいなんですけどね?


「………………危うくバレるところでした」

「すぅ…すぅ…」

「ミザリー様は本当に純粋無垢で可愛らしいですね…」


その部屋でリベネさんが本当に僕らのことをスケッチしていたなんてことを知りもせずに…


リビングにて。


部屋の真ん中に置かれている食卓の上には朝食とは思えないほどの量の料理が並べられていた。


「どうですか!私の料理の腕は!」

「いや、あの、うん。すごいけど…朝食にしては多いよね?」

「ふつうにこのくらい食べないのですか?たしかに少し多いかもしれないですけど」

「この村の人の戦闘力がおかしくっても胃袋はふつうだからね!?というか燃費いいのか知らないけど逆に小食な方だよ!?」


そう。この村の住民、戦闘力が強いわりに小食なのだ。なんか朝に少し食べれば夜まで平気で持つ見たいなんだよ…超低燃費じゃん…


「なんですと!?これは分量を間違えてしまったようですね…」

「食べきれなかった分はそこの魔道具に入れておけばいいから…まあ、美味しそうだしいただくよ」

「どうぞお召し上がりください!それにしてもこれがあの魔道具とは…想像と違いましたね…」


僕は祈りを告げ、食事を始める。その間にもシャマラさんは魔道具…冷感貯蔵庫をまじまじと見ていた。


まぁこれ、ただの熱伝導率が高い金属の箱に詰めたい冷気を出し続ける魔法陣を書き込んでるだけなんだけどね。


きちんと外は熱伝導率が低いもので冷気が逃げないようにカバーしてるよ。


食べ始めて少し経つとミザリーも来て一緒に朝食を食べた。すごい眠たそうにしてた。そんな姿もかわいい。


「ふぅ…美味しかったよ。少し食べすぎちゃったみたいだ」

「おいしかったー!」

「ありがとうございます!なにぶんこの祝福ギフトの関係上一人暮らしのことが多かったもので…」

「その努力の結果が結びついたってわけだね」


料理を作る過程でも祝福の影響は出てたんだろうなぁ…指切ったりしてそう…


「本当にここに来てから祝福の効果が出なくなったんですよ!まだ3日目なので絶対に起こらないとは言えませんけど、2日も何も出なかったのは初めてです!」

「この家にはいろんな仕掛けがしてあるからね。それのどれかが反応したのかもしれないね」


実際、僕もなぜシャマラさんの祝福が出てこないのかについてはよくわかってはいない。猫耳と彼女の境遇ににつられて働かせることにはしちゃったんだけども…


今日からの店の営業に何か起こらなければいいな…


「クリート様、ミザリー様。お着替えをなさってください。あと2時間ほど経てば開店になります」

「そっか、もうそんな時間になるのか。じゃあ着替えてくるから、準備を勧めておいてくれる?」

「承知いたしました」

「よろしくね。ほら、ミザリー。行こうか」

「は〜い!」


僕とミザリーは再び二階へと上がっていった。なにも気づかず。


リビングで潜む大、中の二つの影。


「どうでしたか?」

「バッチリですね。スケッチも完了しましたし、脳内にもしっかりと焼き付けました」

「本当に好きなんですね〜。あのお二人のこと」

「この家のメイドとして、そして一人の家族として皆様には愛情を持って接していますから」

「私はまだそこまで行けませんね…どうしても他人、と思ってしまいます」

「そこは追い追い教えてあげましょう。開店準備を始めますよ」

「はいっ!」


はじめの会話が少し不穏なものだったが、別になんともなかったメイド二人だった。


「うん!これでよしっと」


僕はうちの店、『癒しの薬』の制服を着て、準備は完了だ。


「にいさまみてみて〜!」


ミザリーはその場でくるくる回ってこちらに服を見せてくれる。


ミザリーにはフリフリワンピース風の制服を着てもらっている。流石に長袖にズボンは着せられない。この歳の女の子に。


「やっぱり似合うね。新調してよかったかも」

「えへへ〜」

「どう?着た感じは。どこか変とかない?少しきついとか」

「ううん!なんにもないよ!おおきさばっちり!」

「それは良かった。ちゃんとした大きさじゃないと動きにくいからね。機能性も重視しながら見た目に可愛さを出すためにフリルをつけたり…」

「にいさま〜もうすぐおみせのじかんだよ〜?」

「あ、ごめんごめん。それじゃ行こうか」


つい熱弁してしまった。あの制服にはいろいろ頑張ってたくさんつけた。


防汚防水はもちろん、万が一、ミザリーに何かあった時のために魔法・物理防御の魔法陣を塗ってある。さらに悪さしようとしている奴には撃退用の…………言うのはやめておこう。


とにかく僕の努力や技術を詰め込んだ作品となっている。あれを作るのにどれだけ時間がかかったか…………30分くらいだっけ?


「おや、ミザリー様。お可愛らしい服で」

「でしょでしょ〜!にいさまがつくってくれたんだ〜!」

「それはそれは。では一緒にお店へ参りましょうか」

「うん!」


嗚呼……なんてかわいいんだ…この世に生を受けていることに感謝………


自慢されるのは恥ずかしいけど…


そんなことをぼやきつつ、僕も店用の部屋へ向かう。


向かったミザリーとリベネさんの他にシャマラさんはもう準備を終えてこちらを待っていたようだった。


「準備お疲れさま。もうすぐで開店するから、気合い入れといてね」

「は、はい!皆さんの邪魔にならないよう尽力します!」

「そこまで硬くなくてもいいよ〜」


きっちりと練習はこなしてたし、夜は自主勉強もしてたみたいだから大丈夫だと思うけど……まあ、初日は緊張の一点張りだからね。慣れてもらうしかないかな〜。


最後に僕だけにしかできない細かい準備を済ませ、ついにお店を開店!


カランカラン


「いらっしゃいませ」

「い、いらっしゃいませ〜」

「どうもね。おやおや、君は新人さんかい?」

「は、はい!今日からここで働くことになったシャマラと言います!よろしくお願いします!」

「うんうん。元気があっていいねぇ。頑張ってねぇ」

「ありがとうございます!」


店を開けるとすぐに杖を持ったおじいちゃんが入ってきた。


この人はうちの常連さんの一人で、よく腰痛に効く薬や湿布を買っていく。若い頃にモンスターに受けた攻撃で足腰が悪くなってしまったという。


「いらっしゃいませ」

「い、いららっしゃいませー!」

「あら、おはよう。新人ちゃんね。ここの仕事は簡単そうで難しいから頑張ってね」

「あ、ありがとうございます。1日でも早く覚えれるように頑張ります!」

「うふふ。若いっていいわねぇ」


シャマラさんが緊張して小刻みに震えている

…声も少し震えて同じ言葉を言っているように聞こえるな。


次に来た人はここの元従業員であったおばさんだ。僕が小さい頃、父様と母様が用事でいない時に店番を任されていたほどに信頼できる人。最近、甥っ子が出来たらしくいろんな薬や赤ちゃん用のミルクなどを買っていく。これまた常連さんだ。


こんな説明をしている間にもお客はどんどん来る。ドアベルが意味をなさないほどにだ。


これもまぁ、仕方がない。


「最近お店閉めてたみたいだけど、大丈夫だったの?」

「はい。大丈夫ですよ。薬草の在庫が少なくなってきてたので、それを取りに何日か使っていただけですから」

「あらそう?大ごとじゃなくてよかったわ。今じゃこのお店は村に欠かせないからねぇ。もしなくなりでもしたらあたしたちが困っちまうよ」

「毎度贔屓にしていただきありがとうございます。こちら品物ですねー」

「ありがとうね。また来るわ」

「ありがとうございました〜」


そう。話してた内容にもあったが、ここ何日か休んでいたのだ。聞いてくるお客には薬草の確保とだけ言っているが、実はそれだけで休んでいたわけじゃない。先の事件もあったし、店の代替わりということもあって色々父様に教えてもらっていたんだ。売り上げの一部を領主に納めること、計簿のつけ方、月に一度か来る商人との取引など、店を経営していくことで必要となってくることについて教えてもらっていた。これまた量が多く、数日かかってしまった。


数日閉めていた反響で、今日はお客が多い。いつもなら店が空く時間でも人がちらほらといる。


これはシャマラさんの初仕事には厳しかったかな…


そう思い、当の本人を見てみると、


「これは〜〜〜〜というやつでいいのかい?」

「はい!こちらは〜〜〜〜〜〜に効くという効用を持っておりまして、毎日飲むと段々と良くなっていきますよ」

「ほぉ〜。そうかいそうかい。それじゃあこれを二つもらおうかねぇ」

「ありがとうございます。ご一緒にこちらもいかがですか?これを使えばお薬が簡単に飲めるようになりますよ」

「そんなものもあるんかね!最近なかなかうまく飲めなくてねぇ、それがあると嬉しいねぇ。それじゃあそれを3つもらえるかい?」

「かしこまりました。お運びしますのでどうぞ」


どうやら全然大丈夫だったようだ。薬の名前や効用だけでなく、一緒にすると良いものまでおすすめ出来ている。これは一人で任せるまで時間はかからないかもね。


「「ありがとうございました〜」」


そんなこんなでお客をさばいているうちに午前の部は終わった。ここから昼の間はお客も少ないし、休憩できる時間だ。


「ふぅ〜…緊張しました」

「そう?お客さんに質問されても上手に返してるし、自分から進んで困ってるお客さんに声をかけてたりして、そうは見えなかったよ」

「途中からスッパリと緊張が消えたんですよー。お話ししているうちに緊張がほぐれていったようで…常連さん方はすごいですね」

「長年利用してくれてる人が多いからね〜。今じゃこの村の8割が常連さんじゃないのかな?」

「どれだけ村中に知られてるんですか…先程やって思いましたけど、大変じゃありませんか?」

「ん〜…そうだなぁ…」


大変…大変かぁ。僕も父様の手伝いをするようになってから随分と経つしなぁ。そんなことはもう感じなくなったのかもな〜。


「常連さんがほぼだからね。いつも買っていくものは大抵おんなじだから、別に大変だとは思わないよ」

「すごいですね…達観してますよ。年下の子に負けちゃってますよ私…」

「まあまあ、僕も最初の頃は苦労したよ?」


あの頃は大変だった。僕が3歳半ぐらいの頃、初めて父様の手伝いをした日。いつも見ていただけの風景とは全く違うと思い知らされた。


まず、問題点1。背が低いからまずもって商品に届かない。たかが3歳児の背丈である。商品棚の三分の一程度だったから届くわけもなかった。


次に、問題点2。握力、筋力ともに無し。3歳児の力じゃ持ち上げるのがやっとであり、運ぶことなどできやしなかった。


そして問題点3。これが一番僕にとって苦しかった。それは…そう、かわいがられることだ。3歳児がお父さんのお手伝いなんてしていたらまあー、愛でられるね。「偉いねぇ〜」とか「かわいいでちゅね〜」とか。普通の3歳児ならこの状況では喜ぶだろうが、なにせ中身は元高校生である。そんなちょっと思春期の男子にこんなこと言われたら恥ずかしくてたまったもんじゃないわ!


ともかく、そんな苦難を乗り越えこの場所にいるんだ。大変なんて感じなくなるのも当然だよね。


「すごいですねー…私もはやく慣れるように頑張らなきゃ」

「うんうん。はやく慣れて常連さんと仲良くなると良いさ。色々話してると面白いことが聞けるからね」

「それはちょっと気になりますね」

「特にヤシチさんとか頼りになるよ。この村のことは大抵把握してるし、近くの街にもよく用事で行くことがあるから、街がどんな状況なんかも教えてくれるよ」

「そんなに情報に長けている人がいるのですね。今度お話ししてみたいものです」

「またきた時に教えてあげるよ」


そんな談笑を交わしていると、勢いよく店の扉が開かれ、数名の人がなだれ込むように入ってきた。


「おやおや、どうしたの?」

「た、頼む!ポーションを売ってくれ!仲間の一人が死にかけてるんだ!」

「…ッ!!見せてくれるかい?」

「フォビア!連れてきてくれ!」


フォビアと呼ばれた全身鎧フルプレートアーマーを着た男性らしき人が法衣をまとった女性を抱いて連れてきた。


「う…うぅ…」

「大丈夫か!しっかりしろ!」


その女性の胸元には見るも無残に大きく抉り取られるように切り裂かれていた…

誤字・脱字等がありましたら、報告していただけると幸いです。

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