そのスキルはあるはずのないスキル
「討伐された??あれはそういうものじゃねぇ!
新人プレーヤーが何人集まっても倒すことができない存在なんだよ!」
《ゴールデンボアは討伐されました。
原因を追究いたしますか?》
「YESだ!早くしろ!!」
《了解いたしました。今しばらくお待ちください》
くそっ、どうなっているんだよ!あいつを倒せるとなると究極スキル持ちか!?
アバター作成時に3つ全て究極スキルならありえるのか?だが、熟練度も高くない初見のスキルで倒せるものなのか。
いや、初期ステータスでは無理だ。それに近いもの複数人の可能性が高いのか……。
どうであってもすぐに対処しなければ。
てか、これが上司に知られるとまずい!
《原因の把握を完了いたしました》
「で、どうだった!!」
《はい、あるプレイヤーお一人がゴールデンボアを討伐したようです。》
「………はぁ??え、1人?そんな冗談に付き合っている時間はねえんだよ。どうなんだ!」
《お一人です。では、それを見ていたボアの視点を借りて実際の映像を見ていただきます。》
そう、プライベートもあるのでゲーム開始の数日のみだが、データを取るためにモンスターの視点からゲームの世界を録画できるようにしているのだ。
あくまで、モンスターの難易度調整などのためであったが。
《では、再生いたします》
その声とともに、俺の目の前にある大きな黒い画面から切り替わり、ゲームであることが信じられないほどなグラフィックを誇る風景が映し出された。
今見ても凄い画だが、問題はそこではない。
数秒して、ある1人の男性が映し出された。
「こいつか?……こいつ、ゲームの中でクマができてるぞ。なんとなく、友達居なそうな雰囲気出てるな。」
ふざけたことを話していると
《ゴールデンボアがあの男性に向かって突進をしていきます》
その声とともに、黄金に輝く毛、そして通常のボアよりも数倍大きな筋肉隆々の体を持つ、勇ましくも誇り高いボアの王が男に向かって突き進む。
大多数が男の身の心配をする映像のなか、それは起こった。起こってしまった。
「!!?なんだ今のは!ゴールデンボアが何か見えない壁のようなものに弾かれたぞ!!」
《そこも驚きなのですが……》
「ん?まだ何かあるの
その言葉を遮るかのように爆音が鳴り響く。
「っ…………」
言葉が出ない。それはこのような状態なのであろう。
しかし、絶句するのも無理はない。
スキルもフテータスも含め、圧倒的な力であるゴールデンボアである。
そんな絶対的な力を前に怯え、逃げるのではなく、一撃の拳の前に無残にも散らしたのだから。
「……お、おい。アレはなんだ?」
《……今の現象は究極スキル3つを引き当てたとしても熟練度0のプレイヤー1人では再現不可能です。》
「そうか。………いや待て。不可能だと?」
《はい》
「だが事実できているぞ!まさかチートか?」
これは俺自身で話していて違うというのはわかっていることだが、だとしても口に出してしまう。
《いえ、それは不可能です》
「ならばアレはなんだ!!」
《解析の結果、ユニークスキルだとわかりました》
「おい、ふざけるなよ」
それは、そのスキルは
《プレイヤーには実装予定になかったスキルです》
そう、そもそもアバター作成時に引くことのできないスキルであった。
会社側の俺も、そしてゲームの大部分を担っているノアでさえも実装のしていないスキルをあの男は持っていたのである。
ーー噂されている主人公ーーー
おい、ゲーム始めて早速バグかよ〜
この事態を、現状を、深刻さを理解するのは、もう少し先の話である。
次は主人公視点に戻ります
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