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デュークと女子大生  作者: 若松ユウ
Ⅰ 到着から現状把握まで
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B 不思議の国に迷い込む

B 不思議の国に迷い込む


「ここは、いったい」

 目を覚ましたヤヨイは、肩まで掛けられた布団をめくりながら上体を起こし、キョロキョロと視線を走らせたり、服を指でつまんで引っ張ってみたりしては、自分が置かれた環境を把握しようと努める。

――駅に向かう途中で、急に眩暈がして倒れて、それから、えぇっと。アレッ。いつの間に、服を着替えたのかしら。

「気が付かれましたか」

「わっ」

 背後から声を掛けられたヤヨイは、驚いて振り向く。見れば、そこにはクラシカルなメイド服を着た女が、水差しとグラスを乗せた台車の側に立っていた。女は優雅な仕草でグラスに水を注ぐと、両手でヤヨイに差し出した。

「お水です。どうぞ」

「あっ、どうも」

――待って、これ、どういう状況なのよ。記憶のブランクが大きすぎて、理解が追い着かないんだけど。とても日本とは思えない場所だし、このメイドさんらしき人物も日本人離れしてるし。でも、言葉は通じるってことは、日本のどこかよね。

 ヤヨイがモヤモヤと考え事をしながら水を飲んでいると、おもむろに女が話し始める。

「泉の畔で倒れていたところを、乗馬中のサーラさまが発見され、ここまで運ばれました」

「サーラ、さま」

 ヤヨイは、空になったグラスを下ろしながら語尾を上げて言う。女は、ヤヨイの手からグラスを取り上げながら、一息に説明する。

「エンリ公国の第一王子にあらせられるかたです。ここは、その公邸。私は、ここで侍女を勤めるものです。サーラさまをご存知ないとは、よほど遠い異国からの旅をされてきたか、よほど強い衝撃を受けて記憶を失くされたようですね」 

――聞いたこと無い国だわ。突拍子もない話だけど、冗談を言ってる感じでは無さそう。あっ、でも、そう言われてみれば。

「たしか、白い馬の背中に乗せられてたような」

 天蓋を見ながら、何かを思い出すように呟くヤヨイ。

「それは、愛馬のヨハナのことでしょう。どうやら、まるっきり忘れてしまってる訳でも無さそうですね。無理に思い出さなくても結構ですが、何か思い出しましたら、速やかにお知らせください。申し遅れましたが、私は、フィアと言います」

 片手を胸に置きながらフィアが名乗ると、ヤヨイは軽く会釈をしながらフィアに向かって名乗り返す。

「私は、ヤヨイよ」

「ヤヨイさま、ですね。それでは、失礼いたします」

 フィアは、台車を立ち去ろうする。ヤヨイは、フィアを呼び止める。

「待って、フィア。私が着てた服と、それから荷物は、どこにあるの」

 フィアは立ち止まり、ヤヨイのほうを振り向いて答える。

「お召し物は洗濯して、物干し場で乾かしています。荷物に関しては、何も」

「あら、そう。ありがとう。それだけだから」

 それだけ言うとヤヨイは、再び考え事をはじめる。フィアは、不思議そうな顔をしながら台車を押し、その場を立ち去る。

――スマートフォンで調べる訳には、いかないのか。弱ったなぁ。そもそも、電気が通ってるのか謎だわ。電球も、蛍光灯も見当たらない。

フィア:十五歳。侍女(メイド)灰色(グレー)の瞳。銀髪。

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