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デュークと女子大生  作者: 若松ユウ
Ⅲ 放火事件発生
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Q 地震雷に次ぐ災害

Q 地震雷に次ぐ災害


「ずいずいずっころばし、ごまみそずい。ちゃつぼにおわれて、どっぴんしゃん。ぬけたら、どんどこしょ」

 公邸の客室で、ヤヨイが窓辺に立って歌っている。すると、階下で黒っぽいケープに身を包んだ数名が、庭を横切って外へ行くのが見える。

――誰だろう。フード部分を目深に被ってるから、顔が分からないなぁ。

 ヤヨイは、その様子を気にしながらも、歌い続ける。

「たわらのねずみが、米食ってちゅう、ちゅうちゅうちゅう。おっとさんがよんでも、おっかさんがよんでも、いきっこなしよ。いどのまわりで、おちゃわんかいたのだぁれ。もう、いいかい」

「今度は何をしてるんだ、ヤヨイ」 

 歌いきったヤヨイが振り向くと、そこには首を傾げたサーラが立っていた。

「サーラ。貴族議会は、もう終わったの」

 ヤヨイは、サーラに疑問を返した。サーラは、ヤヨイに応じながら、辺りを見回して言う。

「あぁ。つい今しがた、結論が出たところだ。ところで、シエルの姿が見えないが」

――議会が終わったところなら、さっき見たのは、議員さんの従者が誰かだったのかな。

「それを捜すのが、鬼の役目よ。かくれんぼで遊んでるの」

「なるほど。私も捜して良いか」

 ヤヨイがサーラに了承の返事をしようとしたとき、階下から悲鳴と叫び声が聞こえてくる。サーラは、素早く廊下に飛び出し、音のした方向へ走っていく。ただならない様子に、ヤヨイも不安げな顔で追いかけていく。

  *

「議員たちは、ひとまず避難を完了した」

「誘導、ご苦労」

 敬礼しながら報告するニッシに対し、サーラは短く礼を述べる。どちらも、表情は硬く、険しい。

「火の手は、議事会場の裏から上がり始めたものらしい。詳しくは、消火が済むまで何とも言えないが」

「そうか。厨房や水廻りとは反対方向だな」

 サーラは顎に指を当て、首を捻る。

「不可解だろう。俺も、放火の疑いが高いと睨んでる」

「フム。おそらく、その線で間違いないだろう。容疑者に、目星は付いているのか」

「おおよそは。ヤヨイが、直前に怪しい二人組を見たという。それと、その話を聞いたグレイが、急に表情を曇らせて、どこかへ行った」

「心当たりがある、ということか」

「あぁ、たぶん。憶測の域を出ない話ばかりで、申し訳ない」

「いや、充分だ。助かる」

 二人のあいだには、しばらく、気まずい沈黙が流れた。

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