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another  作者: 加藤イノリ
第1章 変わる日常
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7-発見

 僕は園田のあまりに突拍子もない言葉に返す言葉を見つけられないでいた。パラレルワールドという文字だけが頭の中をぐるぐる回っている。そんな僕を見かねて、園田が一人で口を開く。


「まあ実際、見つけたと言っても大して詳しくわかっていないのが現状なんだけどね」


 そう言って園田は苦笑いをしながら頭をかく。


「2週間ほど前、いつものようにパラレルワールドへの接続実験を行っていたら、突然マシンが制御不能になってね。また失敗か、と思ったんだが……」


「突然、これくらいの大きさの光のゲートが現れたんだよ」


 園田は自分の腕を使って、その大きさがどれくらいのものだったか示してくれる。それはだいたい普通の扉くらいの大きさだった。


「光のゲート……ですか」


 僕はやっとの事で言葉を口にするが、ただ園田の言ったことを繰り返すだけのものになってしまった。


「私はそのままゲートと呼んでいる。あの時は私たちも何が起こったのか分からず、困惑したものだよ」


「それには奥行きなどは存在しない、薄い光の壁と言えば分かりやすいかな」


 僕は首を縦に振る。園田の表現は、映画などの空想世界でありがちなものだったので、それほど難なく想像がついた。現物も僕の思い描いてるものと大層差はないはずだ。


「それから、どうしたんですか?」


 僕は自分の好奇心を抑えきれず、話の続きを催促する。


「うん。さすがに何の対策もなく、生身で触れるわけにもいかなかったから、まずは飛行ロボットを飛び込ませてみることにしたんだ」


「それで、そのロボットはどうなったんですか!?」


 僕は興奮交じりに園田に問う。


「残念ながら、ただ光の壁をすり抜けただけだったよ。どの方向から、何度試してもダメだった」


「そんな……」


 期待していた分、それを聞いたときの僕の落胆具合は酷かったのだろう。園田も慌てて言葉を繋ぐ。


「待て待て、話はまだ終わりじゃない」


 園田の言葉に僕は一度下げかけた顔を上げる。


「ゲートはものの十数分で自然に閉じてしまったが、発生時のデータを解析して、あることが分かったんだ。」


「あること?」


 園田は少し得意げに話を進める。僕は先ほどの失敗を踏まえ、必要以上に期待せずに園田の言葉を待つ。


「実はある一定の周波数を持つものしか、そのゲートには入れないんだ」


「初めてゲートが現れた時の条件を満たせば、再度ゲートを開くことが可能なのは、すぐに実験して確認済みだった。だから、あとは飛行ロボットの周波数をその値に設定するだけ」


 今度は確信を持って、園田に問いかける。


「だったらやっぱり!」


「うん。今度はすり抜けることなくゲートの中に入り、別の場所へと移動した」


 予想はついていたものの、実際に事実を告げられると驚かずにはいられなかった。またも言葉を失っている僕に気を遣ってか、園田は僕の返答を待たずに説明を続ける。


「私たちは最初、単なる空間の転移、要は瞬間移動のようなものを疑ったんだが、ロボットから送られてきた画像を照合しても、この世界のどことも一致しなかったんだ。だから、それが並行世界であるということを確信したんだ」


 だんだんと高度な話になってきて、少し理解が追い付かない。


「一致しなかったって、でもパラレルワールドと言っても、同じ地球なんですよね?」


「ああ、それは大気の成分や重力・引力などから確認は済んでいる」


「それなら……」


 どこか納得がいかず質問を重ねようとした時だった。


「それなら一致しなかった、なんてことはないだろう。って言いたいのかしら?」


途中から僕の言葉を代弁したのは、白衣を着た金髪スレンダーの女性。話に夢中になっていて、近づいて来たことに気づかなかった。


「おお、瑠美君」


 園田が女性の名前を呼ぶ。瑠美と呼ばれた女性は僕の方を見ながら、


「この子が……そうなの?」


 と園田に訊く。


「うん。高木セン君だ」


「どうも、初めまして」


 園田の紹介に続けて挨拶をし、頭を下げる。


「こんにちは。あらやだ、結構可愛い顔してるじゃない」


 そう言ってその女性は必要以上に僕に顔を近づけてくる。さすがに驚いたし、少し照れくさくなり対応に困る。それに香水だろうか、甘い香りが鼻をつく。


「こらこら、嫌がっているじゃないか」


 僕の困り果てた姿を見かねてか、園田が助け舟を出してくれた。


「いや、別にそういうわけでは……」


 口ではこう言ったが、内心助かったと思ったし、助け舟を出してくれた園田には感謝だ。


「えー、残念。また今度ゆっくりお話ししましょうね」


「あっ、はい」


「それじゃあ、私はラボに戻ってるわね。何かあったら教えて頂戴」


 それだけ言い残して、瑠美という女性は手を振りながら去っていった。


「全く、ろくに自己紹介もしていないじゃないか」


 園田は彼女の後姿を見つめながら、呆れ半分で呟いた。そしてまた僕の方に向き直る。


「驚かせて済まないね。彼女は菊池瑠美(きくちるみ)。私の研究チームのメンバーの一人だ。あんな感じでいつも自由なんだよ」


「そう……みたいですね」


 あんな行動を見た後では、僕もさすがに賛同する以外に選択肢はなかった。菊池と上手に接するようになるには時間がかかりそうだ。


「おっと、いけない。話を戻さないとね。えーと、さっき瑠美が言ったことを君も言おうとしていた、ということで間違いないかな?」


 園田がうまく話を戻してくれたので、首を縦に振ってそれに答える。


「君の言わんとすることもわかる。が、考えてみてくれ。分岐した別の世界とは、要するに私たちが選ばなかった世界だ」


「僕たちが選ばなかった世界……」


 普段あまり聞き慣れない表現に、理解が追い付かない。そんなことは織り込み済みであったかのように、園田が補足で説明を加える。


「例えばだよ。君が自分の家の庭に桜の苗木を植えたとしよう。しっかりと面倒を見て育てれば、木は大きく成長し、春にはきれいな花を咲かすだろう。こっちが世界A」


 園田はここまで一気に話し、説明を続けるために息継ぎをする。


「そして、君が桜の木を植えなかった別の世界を、世界Bとする。当たり前だけど、その世界では庭に桜は咲かないし、それ故世界AとB、それぞれの君の家の外観は大きく異なるだろう」


 ここまでは理解できたが、それとさっきの話のどこに関係があるのだろうか。


「今言った例は、世界規模で見たらとても小さなものだが、それらの選択が不特定多数、しかも長い期間行われたら……」


「僕たちの世界と一致しなくても不思議ではない、ということですね?」


 僕もようやく結論に達する。園田は呑み込みが早くて助かる、とでも言いたげに微笑んで頷く。


「もちろん、いつどこで世界が分岐したかによっても大きく異なってくる。まあ、私たちはたまたまその中の一つを見つけたに過ぎないから、今までの話も推論に近いがね」


 そうは言いつつも、所々に自信が垣間見えるのは、園田がそれだけ時間を費やして研究して来たからだろう。


「大気成分や重力・引力が現在の地球と同じという点から考えると、さほどかけ離れた運命をたどってきた世界ではないようだ。実は、人間や動植物の存在もある程度確認できている」


 ここまで聞いてきて今更のような気もするが、実際にパラレルワールドが存在して、そこに人間が暮らしている、なんて事が有り得るのだろうか。にわかに信じがたい。



「そして、私たちはその世界をこう呼ぶことにした」


「”アナザー”」


 コメント、評価など励みになりますので、些細なものでもいいので頂ければな思います。宜しくお願いします!

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