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another  作者: 加藤イノリ
第1章 変わる日常
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6-可能性

 食事を終え、僕らはレストランを後にし、また研究所らしき場所に戻ってきた。先ほどは全体の雰囲気に圧倒されて、あまり気づかなかったが、かなり充実した施設のようだ。

 僕なんかが見ても、用途の分からないマシンがあちらこちらにあった。あのIFSの本社だということを考えれば、ごくごく普通のことなのかもしれない。


 しかし施設の規模に対して、研究員の数が少ないように感じられた。優秀な人材が集まれば、これが当たり前なのだろうか。


「ここでは何を研究しているんですか?」


 恐らくこのまま自分で考えていても一生答えが出ないので、思い切って園田に訊いてみる。


「気になるかな?まあ気にするな、という方が無理な話だね」


 園田は少し勿体ぶった言い回しで話す。少し間を置いて、


「高木君はパラレルワールドって知っているかい?」


と園田が尋ねてくる。


「はい。一般知識程度には」


 パラレルワールド。実は世界が無数の地点で分岐していて、自分たちの生きている世界と並行して、他の世界も存在しているという考え方だ。並行世界、並行宇宙とも呼ばれる。一昔前はその可能性を信じ、研究に没頭する科学者も大勢いた。

 

 しかし、その存在の不確実性と研究の難しさ、宇宙という目先の魅力などが相まって、今では研究する人は殆ど残っていないと言われている。


「まさか、パラレルワールドについて研究しているんですか?」


 僕は園田の口振りから考えられる、一つの可能性を口にする。すると、園田は頷きながら、


「ああ、そのまさかだよ。もうかれこれ10年以上研究に携わっているんだ」


 とにこやかに答える。しかし、その表情ははすぐに少し哀し気なものに変わった。


「少し不思議には思わなかったかい?施設はこんなにも大きいのに、肝心な研究員の姿があまり見えないだろう」


「みんな最近は宇宙だ、火星だとばかり口にしているからね。私たちみたいなのは完全に少数派なんだよ」


 そう言って園田は遠い目をしていた。僕が先ほど感じていたことは思い違いではなかったようだ。


「そう、ですよね」


 僕も自分の知識と照らし合わせて相槌を打つが、それ以上は何も口にしない。彼のようなプロフェッショナルに、僕みたいな素人が何か言ってもむしろ逆効果だろう。そして少しの沈黙の後、突然、今まで空虚を見つめていた園田が僕に向き直る。


「だけどね、少数派だからといって、その理論や行動が間違っている、というわけではない」


「それは、どういう意味ですか?」


 僕は園田の言葉の真意を測りかねて、すぐさま訊き返す。すると園田は少し小さめの声でこう呟いた。


「……見つけたんだよ」


「え?」


「パラレルワールドを」


 その時の園田の顔はとても自信に満ちていて、ギラリと輝く目が少し不気味でもあった。


 お読みいただき、有難うございます。アクセス数の増減に一喜一憂してます、加藤イノリです。今のところは特にハラハラ・ドキドキさせるような展開は無く、割と平坦に進んでいますが、徐々に変わっていきますので、辛抱強くお付き合いいただければと思います。

 コメントや評価、ブックマークなどお待ちしていますので、宜しくお願いします。

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