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another  作者: 加藤イノリ
第1章 変わる日常
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2-始まりを告げる雨

 六月に入り、雨模様が続いていたある日の放課後。


「あー、ちかれたー。おい兄弟、本降りになる前に帰ろうぜ!玲奈ちんも!」


「だーかーらぁ、ちん言うな!」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさーい!」


「全く、調子がいいんだから」


 そうやっていつものやり取りを交わす二人。現代の天気予報は非常に正確で、分単位での詳細な予報が出されている。ムツキの言っていた通り、もうすぐ土砂降りになるので、その前に帰宅したいところだ。


「よし、帰るかー」


くつろいでいた僕も座っていた椅子から立ち上がり、3人で教室を後にする。


「おお、高木!まだいたのか」


 家路に就こうと廊下を歩いていると、突然後ろから声を掛けられた。担任の加地先生が、僕らの方に近づいてくる。


「あ、先生。どうかしたんですか?」


「おうおう、何したんだ兄弟!授業中に腹筋でもしたのか?」


「そんなことをする変態は一人だけよ」


 ムツキの普段通りの軽口に、玲奈が呆れながら突っ込みを入れる。

 

 数日前ムツキは授業中に、足上げ腹筋なるものを行っているところを見つけられ、先生にこっぴどく叱られていた。この様子だとあまり反省はしていないようだが。


「実はさっき、お前に会いたいって、こういう人が訪ねてきてな」


 先生は名刺らしきものを胸ポケットから取り出し、僕に手渡す。


「……IFS?」


 ‟Innovative Future Science‟、様々な分野の先進技術を開発している会社で、近年の科学技術の発展、特に宇宙開発に大きく寄与した会社の一つと言えるだろう。そんな会社が僕に何の用だろう。


「まさかまだ残っているとは思わなくてな。もう帰ってしまった、と伝えたら、その名刺を渡すように頼まれたんだ」


 僕は部活に所属していないので、普段はこの時間には帰宅しているが、玲奈が学級委員長としての仕事をしなければならず、それに付き合って残っていた。先生が知らなかったのも無理はないだろう。


「それで、何の用事かは言ってなかったんですか?」


「すまない。詳しくはその番号に連絡してくれ、と言っていたよ」


「そう……ですか。わかりました。ありがとうございます」


 要件を済ますと先生はその場から立ち去り、また三人だけになった。


 するとムツキがさっそく、


「先生に呼び出されるだけでは飽き足らず、IFSからも呼び出しとな、兄弟!」


 と笑いながら茶化してくる。そんなムツキの言葉は反応せずに、玲奈が疑問を口にする。


「でも、本当に何の用かしらね?もしかしてすごい発明でもしたの?セン」


「まさか」


 正直、全く身に覚えがない。発明なんてもってのほか、特に理系科目の成績が良いなどということもない。人違いなのではないか、とまで思ってしまう。


「まあ、家に帰ってから連絡してみるよ」


「もしかしたら、宇宙旅行にご招待!とかだったりな」


 と、ムツキが目を輝かせる。


「んー、それは逆に困るかな」


 宇宙に興味がないわけではないが、未知の世界というものへの畏怖があるし、それに当たり前だが学校にも来なければならない。そう考えるとあまり現実的ではないだろう。


「じゃあ、もしそうだったら俺に譲れよな!ってか、やば!早く帰らないと豪雨になる!!」


「忘れてた!」


 ムツキの言葉で三人とも我に返り、焦って玄関に向かい、学校を後にした。



 あの時は理由こそ気になりはしたが、誰もこの事を深刻になど考えてはいなかった。


お読みいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ、コメントや評価待ってますので、よろしくお願いします。

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