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私の思い出

p.m.7:30

一郎は驚くべき光景を目にしていた。

妹の栞は兄に散々悪口を吐き捨ててきたが、

今、目の前にいる妹は悪口どころか兄をさも尊敬しているような口ぶりだ。


「なんだかんだ言ってアイスを買ってきてくれるんだからっ♡もうっ。」


いや、訂正しよう、尊敬というより愛情が強い。

一方、一郎は妹の実態を知り、血相を変えていた。


「…う…うそだろ。これって…。」


そう、いわゆる『ブラコン』ブラザーコンプレックスだ。

要するに、お兄ちゃんが愛してやまないということだ。


すると、妹は机から何かを取り出す。

どうやらファイルのようだ。

それを楽しそうに…いや、幸せそうにめくる。

それは何せ、兄の写真がたくさん入ったファイルなのだ。


「お兄ちゃんが1人っ。お兄ちゃんが2人っ。お兄ちゃんが…あはははっ。」


かなりの重病だ。

当のお兄ちゃんひっそりと言う。


「お兄ちゃんは栞をこんな子に育てた覚えはないぞ……!いつもどおりツンデレでいいんだ……!」


グッと握りこぶしを作る。


「ツンデレこそ最高なんだよ……!どうしてそれをわからないんだ……!」


「一郎?ご飯って言ってるでしょ……。ん?あんた栞の部屋の前でなにやってんの?」


変なスイッチが入り、背後から近づいてきた母の気配に気づかなかった一郎。なんとか言い訳をする。


「いやー、栞にご飯だぞっ!って言ってんだけど、全く返事ないからノックしようと思ってたところなんだよ。」


「もう。2人とも来ないから心配したじゃないっ。栞もちゃんとご飯の時間くらい守りなさい!」


そう言うと隣から。


「はぁーい!でも今日はちょっとお兄様に聞きたいことがあるのでもう少し後に行きますお母様。」


と元気よく返事をするので、母はキッチンへと戻る。一郎は気を紛らわすように言う。


「はぁ〜、腹減ったー!聞きたいことは食事の後でいいだろ?」


「いいからこっち来い!!!コラッ!」


「は…はぁい。」


と妹の部屋へと引きずりこまれた。



p.m.8:00

兄は妹の部屋に連行されていた。

体を椅子にテープで巻かれ、両腕はロープで縛られ拘束されていて、扉には鍵が何重にもかけられている。そして尋問が始まる。


「見たろ?」


とても怖い声で、妹が問う。


「……はい。」


一郎のその返事を聞いた瞬間。真っ赤な顔を両手で隠す栞。


「ど、どのあたりからだ!」


「俺のあげたアイスを幸せそうに頬張る所からです。」


「うっっ。」


必死に顔を何回も隠す妹。

一郎としては、そろそろ精神的にきつそうな栞にギブアップを取らせ、無事に釈放される事を望んでいた。


「それに、俺の写真を幸せそうに見て、幸せそうに数えていたところも見た。」


「グハッ!」


何回も立っては崩れ落ちて立っては崩れ落ちてを繰り返す栞。

すると、一郎の予想とは違い、彼女はギブアップするどころか開き直った。


「ふ…ふんっ…。もう、いい!そうよ、私はブラコンよっ!今までお兄ちゃんがいないと生きていけなかったブラコンよ!」


「……そう来たか…。」


「思えば、そう、それはあの時からだったわ…。」


回想が入る


私が小学校5年生くらいだった時くらいに、私のクラスでブラコンブームが起きたの。


ブラコンブームが起きた理由としては、その時のクラスの女子でほとんどの子に兄がいてね。みんなで兄の自慢話をする時が毎日と言っていいほどあったの。


みんなはそれぞれ言ったわ。


「私のお兄ちゃんは〇〇がすごいのよ!」


とね。

そして、彼女達は自慢するたびに自分の兄の素晴らしさに気づいていったのよ。


そして私もその中の1人だった。だけど、私はある事につまずいた。そりゃ、自分にも兄がいるのだから兄の素晴らしさはわかっているつもりだった。けど、今一度考えては見たけど、あまりにも普通すぎて特に語る事が見つからなかったのよ。


でも、流行に混ざる事、友達と話題を共有する事は大事だから必死に探したのよ。でも分からなかった。スパーツはやってないし、成績はオール3褒められるどころか、笑われる。


そう考えると当時の私は兄が少し嫌いだった。


「なんで私のお兄ちゃんだけは普通なの?」


なんてずっと思ってたし、口ずさんでた。

でも、それはすぐに見つかった。


私が困っていたら、すぐ助けてくれる。

私が悪いのに庇ってくれる。

私の喜ぶ事をしてくれる。

私の相手をしてくれる。

好きなものを私にゆずってくれる。

などなど言い切れないほどの『優しさ』


でもどんなに心が広くても誰だってそんなの持ってるなんてみんな言うだろう。


だから、私は一捻り考えた。


「普通な優しさ」と。


みんなに私はこう言う。


「私のお兄ちゃんは普通に優しいの!」と。


みんなは当然こう言う。


「私のお兄ちゃんも優しいよ?」とね。


だから私はこう言うのだ。


「私のお兄ちゃんは栞の事を普通に助けてくれるの!」


「そんなの私のお兄ちゃんもたすけてくれるよ?」


「うん。でもね、私のお兄ちゃんは【普通】なのよ!みんなのお兄ちゃんは何かがそれぞれすごいんでしょ?なら、私のお兄ちゃんは【普通】すぎてすごいのよ!」


ってね。

ちょっと無理やり過ぎたかな?当時は思ったけど、今はその言葉の意味がはっきりと分かる。


普通がどうだけかっこいいか。

普通がどんだけ気が楽なのかとか。

普通がどんだけ安定しているとか。


普通の人間は普通すぎてつまらないとつまらないとみんなは思っているが、私はそうは思わない。例えば、自分の兄がサッカー選手と考えるとまず、私と兄とで見比べられる。一気に妹としての立場やけじめが変わる。それに、もし、サッカー選手の兄が麻薬などの犯罪で騒ぎになったとしたら、普通の一般人よりはすごく報道陣やマスコミに取材やインタビューを迫られるだろう。

少し、話を盛りすぎてしまったが、普通だったら妹の私も普通に暮らせる。その安定さこそがいいのだと私は思う。


話を戻して、私が兄の普通さをみんなに言ったのだが、みんなは


「あー。確かに。私のお兄ちゃんは頭がいいんだけど、そのために塾にほとんど毎日行ってて、私の相手はあまりしてくれないな。」


「私のお兄ちゃんもピアノの練習ずっとしてて、約束破った事もある!」


とまでに共感してくれた。

私はとても嬉しかった。やっと自分の兄の素晴らしさを見つけ、それをみんなに共感して貰えた。

みんなの輪の中に入れた瞬間だった。


そして中学に入った頃だった。

私が町内のお祭りに兄と2人で行った時だった、私はお祭りという事でテンションが上がり、どんどんと奥へ奥へと進むうちに兄とはぐれ迷子になってしまった。


その時は家に帰ればなんとかなるだろうと思い、そのまま祭りを楽しみ家に帰った。すると、兄がまだ帰ってきていないと言うのだ。私は兄なら同じように家に帰ってくるとばかり思い込んでいた。しかし、帰ってきてないと言うことはまだ、祭り会場にいるに違いないと、すぐに会場にもどった。


するとどうだろう、全身傷だらけの兄がそこにはいた。後から聞いた話だが、会場にいたほとんどの人に私の目撃情報や居場所を知ってないか聞いて走っていたと言うのだ。私がただただ身勝手な事をしたまでに。


そして、そんな兄は両親達から何があったか聞かれると、祭り気分ではしゃいで走っていたら階段から転げ落ちた。と。

はっきり言ってしまうと、私は兄に、この時に好きになったのであろう。


兄は素晴らしい事なんてないと小学生の頃は言ったが、しっかりと兄は素晴らしい長所を持っている。【優しさ】だ。誰がなんと言おうと1番付き合いの長い妹の私が言うんだから間違いはない。

なんだかんだ、優しい所。


そんな兄の事が私は大好きなのだ。


読んでいただき、ありがとうございました!

良ければ、最初から読んで見てください!!

よろしくお願いします!!

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