嫉妬
一郎の部屋をなんとか出た笹口兄は急いで階段を降りて玄関へと向かう。
するとそこに一郎達の母がキッチンの方から廊下へと出て来て、ばったりと会う。
「あら、笹口 峻輝くんだっけ?やっぱり帰るの?」
「あ、はい。お世話をかけました。では、」
そう礼儀よく頭を下げると、玄関へと再び走り出そうした。が、一郎達の母がそれを邪魔する。
「あ、そうだわ!チカちゃんが『もし、お兄ちゃんが今日中に帰ろうとしたら、これを渡して下さい』って。」
と何か手紙を取り出し、それを笹口兄に渡す。
それを貰い、恐る恐る中身を確認する。
それには…
《これを読んでいるという事は、私のお兄ちゃんはここを逃げ出そうとしているんでしょ?悪いお兄ちゃん。でもそうはさせないよ。そんな事したら私はお兄ちゃんのヒミツを周りの人々は愚か、親戚中、SNSに書き込みばらまきまくるけど、それでも大丈夫って事ならどうぞ出て行って下さい。…まぁ、お兄ちゃんの事ならそんな根性が無いのは妹だから知ってるけど。妹より》
と、それは脅迫状とまでに恐ろしい物だった。
(これは素直に戻った方がいいな…。さすがにSNSはやばい…。)
と、いつもどおり弱気になる彼だったが、
先ほど助けてくれた一郎の事を思い出す。
《峻輝!ここは俺がなんとか食い止める!》
そんな彼の言葉と行動が今自分がしようとしている事を否定する。
《早く行けぇ!》
彼の男らしさが自分の情けなさを感じさせてくれる。
彼にも妹がいて2人兄妹なのに、同じ環境の自分とのこの差はなんだ?
よっぽど彼の方が兄貴らしい。
心に溜まるモヤモヤとしたもどかしい"これ"はなんだろう。
そう思いながら胸辺りに手を当てる。
「ふっ…そんな事より先にやる事があるよな?」
そう吹っ切れて自分に語りかけると降りてきた階段をゆっくりと上がりだした。
一方、一郎は自分の部屋で笹口妹、千花と話し込んでいた。
「チカちゃんはそんなに峻輝の事が好きなのか?」
「答えるまでも無いですケロね。宝くじで8億円を当たったとして、お兄ちゃんと8億円と言われてもお兄ちゃんと言える自信がありまくりですケロ。」
「ガチか。」
そう話しながらも笹口妹をドアの方へと行かせまいと死守する一郎。
「一郎さん、どうしてもそこを退いてくれないですかケロ?」
「うん。嫌だね。男の友情を裏切るわけにはいかないからな。」
「では、もし私のお兄ちゃんがそれを裏切って戻ってきたらどうしますケロ?」
「何?…峻輝がそんな事するわけないだろう。」
とても自信があるように言ってくる笹口妹を見て何か疑問を頭によぎらせる一郎。
と、その時だった。
背後から迫る栞に一郎は反応できなかった。
すかさず一郎を後ろから押さえつける。
「捕まーえたっ♡」
「!?くそっ!騙された。」
辺りにあったガムテープでぐるぐると椅子と一緒に一郎を縛る。
もはや、プロ並みの手さばきだ。
「ふふっ。ごめんね一郎さん。…でも、さっきのは本当よ。私のお兄ちゃんは必ず戻ってくる。」
と扉を開けた時だった。
そこにはちょうど笹口兄が立っていた。
「ほらねケロ。」
「…!?どうして戻ってきたんだよ!お前のために逃がしたのに!」
そう話しかけるが笹口兄は何も答えず、ただただ妹の事を見つめ、何やら語り出す。
「俺は千花に弱みを握られてから今まで、何回も千花のいう事に従ってきた…。俺はその弱みを多くの人に知られたくないから全力で隠してきた。」
「…?だから何?」
「そこで俺は思った。なぜ、妹はこんなにも俺を服従させたいのだろうか。いやむしろ、妹がそんな事をしようと思った原因はなんだろうかとな。」
「…。」
淡々と語る笹口兄は真剣な目で妹を見る。
そんな妹は少し目線をそらす。
「考えてみるだが、どれだけ頭を使っても答えは出なかった。今でもわからない。だから質問する。どうしてなんだ?教えてくれ。」
「…そりゃあそうよ。…お兄ちゃんになんて私の気持ちなんて分からないわよ!」
頭の鈍い兄の言葉にとうとう思いが溢れてしまう妹の頬に涙が流れていた。
「昔のお兄ちゃんはね。それはそれはサッカーが上手くてカッコよくて私はもうその時からお兄ちゃんの事が好きだったわよ。でもね、毎日毎日練習しに行くせいで、私とは遊んでくれもしないし、話してもくれなかった。」
「…。」
「そんな中、中学でしおちゃんに出会った。でも、しおちゃんのお兄ちゃんは『いつも私の面倒を見てくれたり、たくさんお話ししたりしてくれる。妹である私にも優しくしてくれる』ってしおちゃんから聞いた時、とても私は嫉妬してしまったわ。」
そう聞く東兄妹は自分たちにも責任があると感じて少し顔を背ける。
「だから、私もそんなお兄ちゃんになってほしい。もっと私のいう事を真剣に聞いてほしいって思ったからこうなったのよ!」
「そうか。そういう事だったのか。…でもな、俺はその事を聞いたところで今更後悔はしないし、過去の事をどうこう言うつもりはない。」
「…はぁ!?どうゆうつもりよ!」
「だってそうだろ?サッカーを習い続けた結果、今では部活でもレギュラーだ。楽しくサッカーができている。」
「ふざけんなよっ!何よそれ!私への思いは何もないの!?」
笹口妹は兄の胸元を掴み、怒鳴り散らす。
それと同時に彼女の涙も飛び散る。
「…わけ無いだろ。何も無いわけ無いだろ!!!」
笹口兄も同じく泣いていた。
そんな見たこともない兄を見て唖然とする妹。
「謝りたい事ばかりでまず、何から謝っていいか分からないくらいだよ…。妹を放っておくなんて最低すぎるよ。そんな事なんで分かってないんだよ。なんで妹の気持ちをわかってあげないんだよ。ふざけんなよ俺!」
両手で妹の両肩を握りしめる兄。
「それはそれで妹に弱み握られてはそれに従いまくって、何も言わずにめんどくさいだの思ってクソがっ!」
「…。」
「千花。今までこんな兄でごめんな。もっと兄としての態度をしないといけないのに号泣しててごめんな。一郎みたいに根性がなくてごめんな。そして…。」
両手を妹の両肩から離し、背中の方へと包み込む。ギュッと抱きしめて妹の耳元で言う彼はとても笑顔だった。
「こんな俺を好きになってくれてありがとう。俺もお前が大好きだ。」
読んで頂き誠にありがとうございます!
もし良かったら最初から読んで見てください!
今回は余裕があったので投稿して見ました!
《コメント》
ゴールデンウィーク真っ最中ですね。
自分はゴールデンウィーク楽しんでいますよ!
みなさんも十分に楽しんでくださいね!
それではまた日曜日!




