脱出
夏休み初日
東家に笹口兄妹が泊まりに来ていた。
東兄妹と笹口兄妹は一郎の部屋で机を挟み、対面していた。
改めて自己紹介をしているようだ。
「えーっと…。東 一郎です。妹の栞の兄です。よろしく。」
最初に一郎が軽い挨拶をしながら自己紹介をする。
「おほんっ。笹口 峻輝です。妹の千花の兄で、一郎とはクラスメイトです。」
次に笹口兄が自己紹介をする。
「私は東 栞ですっ。お兄ちゃんが大好きですっ。結婚したいくらい好きですっ。てか、してくださいっ。てか、お兄ちゃんに拒否権はありませんっ。あ、よろしくですっ。」
「おい、斬新な自己紹介するな!」
妹の栞はいつも通りのペースで話す。
「あ、私は笹口 千花ですケロ。口癖は今は「ケロ」にハマってますケロ。しおちゃんとはクラスメイトですケロ。私もお兄ちゃん大好きですケロ。」
「千花?…ちょっと怖いよ?」
笹口妹は何か企むようにニヤリと笑う。
一通り話が終わると笹口兄は一郎を呼び少し部屋の隅っこでコソコソと話す。
「一郎…。頼むよ…助けてくれ。」
「…?どうしたんだよ。」
少し震えてそう言う彼は何か怖がっていた。
まぁ、何に怖がっているのは大幅分かっていたが。
「いいから…俺をこの家から出してくれないか…!?頼む!」
「お前なぁ…来て早々何言ってんだよ。」
「一郎。お前は千花の本性を知らない…。あいつは思っているほどズル賢く、怖いんだ。」
「…??」
今、栞と話している彼女はとても楽しげだしとても可愛い。昨日話した限りではそんな性格とは感じさせないほどいい人だった。
なので笹口兄が言っている事がとても信じれなかった。
「待て待て待て、昨日話して見たがとても優しくて可愛い子だったぞ?」
「あぁ、そうだろうね。でもあいつは俺の前だと違う。」
「何がどう違うんだ?」
「あいつは俺の事が好きすぎるあまり、俺を下僕、いや、奴隷にしたいと言う欲望があるんだ!」
それは一郎にとってさおさら信じられない言葉だった。
「ここに泊まりに来るってなったのも、千花が『来ないと妹CDずっと聞かせるぞ』って脅すから…。」
とてもブルーになる彼だが
その『妹CD』と聞いて一郎も顔が青くなる。
(俺が聞かされたのも栞の奴がチカちゃんから貰ったに違いない…。)
「分かった…!なんならもう、一緒に逃げよう!」
「ありがとう…!感謝するよ一郎!」
話がまとまり、振り返ると目の前に妹二人組がいた。
明らかに笹口妹が怒っている。
「あれ?…千花…どうした…?」
「ねぇ、兄さん。一郎さんに私の事チクりましたね?」
「ん…?何言ってんだよ…。言うわけないだろ?」
「おい。」
「すみません…。」
口癖がない笹口妹の言葉はよりとても重みのある言葉に聞こえた。
そんな彼女に即土下座をする笹口兄はとても兄に見えなかった。
「お兄ちゃんも何一緒に逃げようとしてんの?」
「はい…面目次第もございません。」
一郎も笹口兄の横で一緒に土下座をする。
だが、一郎は顔を変える。
「でも、少しお兄ちゃんの思いも分かって欲しいな。」
「はぁ?何言って…」
すると土下座から立ち上がり、栞にゆっくり近づいていく。
栞も驚きながらそれに後ずさる。
「栞なら、俺の気持ちわかってくれるよな?」
「え…なに?…え?…」
後ずさる栞の背中に壁が当たり、後ずさらない。
次の瞬間。一郎は妹の栞に対して、壁ドンをぶちかます。
そして…
「なら、俺の我儘を1つ聞いてくれよ。」
「え…う…うん…♡」
彼のめったに見られないオラオラ系男子な迫りが守備範囲外だった栞は、気持ち良さそうに座り込み幸せそうにほぼ気絶していた。
「…よし。」
元の彼に戻ると溜息をひとつ付き、
次は笹口妹の方を見る。
「くっ。迂闊でしたケロ。一郎さんがそんなキャラ演じられるなんて知らなかったですケロ。」
「そりゃ、今思い付きでやって見たからね。結果、上手くいって良かったよ…。峻輝!ここは俺がチカちゃんを食い止める!先に行け!」
「い、一郎…!お前って奴は…。」
なぜか、この平和な日常の中で死亡フラグを立たせる一郎。
「そう簡単に行かせると思わない事ケロね!」
「早く行けぇ!」
「すまんっ!」
こうして、笹口兄は一郎の部屋を出たのであった。
部屋には笹口妹と一郎と、気絶中の栞が残されていた。
読んで頂きありがとうございます。
この話は毎週日曜日、気まぐれで暇な日に投稿予定です。
良かったら最初から読んで見て下さい。
《コメント》
すみません、もう少しブラコン話にお付き合い下さい(笑)
最近は暑い日が続いて、水分を多くとってる気がします。特にジュース。
みなさん水分補給を大切に!
それではまた来週!




