昼休みのひと時
学校に着いた一郎は前の席の『笹口峻輝』と仲良く話していた。
笹口はとてもフレンドリーで背は183㎝と高く、顔は色白で運動に関してはサッカーがとても上手いと有名な人だった。
「なんだー。東くんって普通に面白いじゃん。いつも後ろから独り言聞こえてくるから、なんかヤバイ人かと思ったよ。」
そんなイケメン笹口は、爽やかに話す。
「一郎でいいよ。まぁ、あれは忘れてくれ。」
「あははは、分かったよ。」
2人は楽しそうに話す。そんな中、一郎は思う。
(なんかあっけなく、また友達ができたな…。まぁ、嬉しくない事ではないが、あの3ヶ月の間は何だったのだろう。)と。
まぁ、隣の席の雨流と話していたのを見て、話しかけやすくなったのであろう。この調子でどんどん友達が増えていけばいいなと一郎は心の隅っこで思った。
「一郎は何か部活やらないの?」
「俺は帰宅部でいいよー。特に運動神経良くも悪くもないし。」
そう2人で話していると…
「おっはよっ!…あれ?いつの間に2人とも仲良くなったの?」
この声、この笑顔。雨流だ。
「ついさっきね。雨流は今日も朝練?」
笹口が言うと一郎は疑問に思う。
「ん?…雨流って部活やってたの?」
「もちのろんよっ!私はバスケ部所属なのです!」
またこの最高の笑顔だ。可愛いの他に言葉が浮かばない。
「しかもね、雨流さんは一年のバスケ部の中でダントツで上手いんだよ!」
「もー!お世辞はいいって!そう言う笹口くんだってサッカー上手いって評判じゃんっ!」
ここにいるのが場違いと思うほど一郎はメンタルがボロボロになってた。
「まぁ、とにかく、お疲れ。」
「うぃっ!」
とにかく分かった事は2人ともそれぞれのスポーツで上手いと評判なのだという事と雨流のテンションが高いという事だ。
友達と一緒にこうして楽しく会話できる。この先、ふざけたり、放課後にどこか寄ったり、お互いの家に遊びに行ったりと普通の日常生活が続くのだろう。やっとそう思えてきた一郎だったが、それは昼休みに起きた。
「キーンコーンカーンコーンッ。」
4時間目の授業の終わりを伝えるチャイムが鳴り、
一郎は得意げに弁当を出す。
いつもなら、ひっそりと出し、ひっそりと食べるのだが、今日は違った。友達が2人もいる。やる事は1つ。みんなで弁当を和気藹々と食べる事だ。そんな一郎は進んで声をかける。
「なあなあ、昼3人で一緒に食べないか?」
その時だった。
「おい!峻輝!早くしろよ!売店名物の唐揚げパンなくなるぞ!」
それは笹口の友達であった。
「あぁ、今行く!って事でごめん。また後でね。…今日こそ唐揚げパン手に入れてやるぞ!」
と元気一杯な声と共に彼は行ってしまった。
でも、たかが1人減っただけ。まだ雨流という強い味方が…。
「日奈ー!今日イブンイレブンの限定商品、『激辛クレープ』買って来たから、一緒に食べよー。」
それもやはり、雨流の友達であった。
「え!?まじ?あれって全然買えないやつじゃないの!?…って事で、ごめんね東。私、辛いものには目がないの。じゃっ!」
「…え。く…クレープって甘いから美味しんじゃ…あ……はぁあ。」
浮かれていた一郎だが。そりゃそうだ。あんなにスポーツが上手い2人は一郎以外にもたくさん友達がいる。けして、一郎しか友達がいないというわけではないのだ。
2人に置き去りにされた一郎はため息をつきながら、教室を出て屋上へとトボトボ向かった。
屋上への階段を登っていた時だった。
上から誰かが降りてくる。
普通ならそんな気になる事ではないが、一郎はとても気になってしまった。その理由、それは、呟きながら降りて来たからだ。
「ったく、この学校にろくな人間の1人か2人いないのか…。」
聞こえるくらいの声の大きさだ。
チラッとその人を見ると偶然目が合ってしまう。
「…おい!テメェ、何見てんだよ。」
めんどくさい奴に絡まれた。そう思う一郎。
「いや、独り言をそんな大きな事を言われると、必然的にそっちに目は向くよ。」
「何しようが、いつ呟こうが勝手だろ。」
そう言いながら一郎の胸元を掴むその人は女であった。
きっと、笹口も自分の事をこんな感じで避けていたのかな…と思う一郎。
「あぁ、勝手だよ。なんせこの俺もたかが友達ができないだけで、人の目も気にせず1人孤独に呟いていたんだからな。」
そこまで堂々として言える事でもない。
そう、経験談を聞くと彼女は胸元から手をそっと離す。安心する間も無く彼女は離したその手を壁に突きつけた。
そう、この光景は「壁ドン」だ。
それはいいのだが。彼女は一郎よりも背が低いし小柄だ。頑張って壁ドンをしているので可愛らしい。
「ふ、ふぅーん。要するに同士と…そう言いたいんだな?だが、あいにく、友達はいる。私はただ趣味の合う人がいないため、腹を立てていたのだ。」
「ほー。んで、その問題の趣味というのは?」
そう一郎が聞くと、彼女は少し穏やかにこう言う。
「攻める喜び。要するにドSの趣味って事だよ。」
「…へぇ。そりゃまた凄いな。」
と言うが、彼は最近、妹の事情を知ったからと言うもの、あまり驚きにくくなっていた。
「そう言う割には、あまり驚いてないように見えるのだが…。まさか…お前にも同じ趣味が?」
「馬鹿野郎。あるわけないだろ。」
「ふふふ。だろうな。お前はとてもそんな風に見えないからな。」
「んで、それなりに探したのか?同じ趣味の奴を。」
そう話を続ける2人は今も壁ドンの体勢なのだ。
一郎は少し居心地が悪いと思うが、彼女は楽しそうだ。
「あぁ、探し回ったさ。だが、1人も居ないどころか、私は変人扱い。まったくだ。」
「だろうな。だからこうして俺に少しでもストレス解消しているのだろう?」
「あははは!よく分かってるじゃないか。お前やっぱり素質があるんじゃないか?」
「あるわけ無いだろ。まったく。」
いつの間にか打ち解け合っている2人。
息がぴったりだ。
「まぁ、少なくともお前は気に入ったよ。名前は?」
「東 一郎だよ。…君は?」
「私はす……じゃなくて遥香だ。鈴ノ音遥香。」
「鈴ノ音遥香」長髪で、ピンっと立った癖毛がなんとも可愛らしい。とても落ち着きのある顔なのだが、性格がそれを無駄にする。それほどまでに喋り方がはしたない。
「とりあえず、もう直ぐ昼休みが終わるから弁当食べさせて。」
「あぁ、わかった。」
と、手を引き戻す鈴ノ音。
「じゃあな。まぁ、また困ったら話しかけてくれ。俺は一年一組にいるから。」
そう言って別れた。
一郎は屋上へと行くなり呟く。
「また、変わった奴に会ったな。栞といい勝負するくらい危険な匂いがする。」
そう笑いながら弁当を開ける。
今日の弁当はオムライスだ。オムライスなのだが、そこにはケチャップで、
『妹大好き』と言う文字が書かれてあった。
「訂正しよう。栞の方がずば抜けて危険だ。」
スプーンでその文字をぐちゃぐちゃにする。
そしてため息をつく。
ここ最近で起こった事、変わった奴らとの出会いを青空に浮かぶ入道雲を見ながら思い返す。
羽山は一郎がみんなと接触させて、変化するか試すと言っていたが、こんな自分と接触して果たして変化するのか。と悩む彼は大人な雰囲気を醸し出していた。
悩みながらオムライスを食べると、ふっと笑いが溢れる。
「…てか、あのまま3人で食べてたら俺死んでたな。」
読んでいただき、誠にありがとうございます!
もし、よろしければ最初から読んでみてください!よろしくお願いします!




