街とポーションとお金
街に着く頃にはすっかり夜が明けていた。
一晩中歩いたにも関わらず、あまり疲れは感じていなかった。空腹感などもない。
キキは自分が人間じゃなくなったと染み染み感じるのだった。
街にはすでに開いている店もいくつもあり、通りには人々の往来があった。
大きな街ではなく、建物の雰囲気などからも、オタク知識の中にあるファンタジーゲームの田舎町といった感じだ。
街を歩いていると、薬屋の看板が目に入った。
実際には、日本語で書かれているわけではないのに、なぜか看板の字が読める。
不思議に思いながらも、将来薬の開発者を目指していたことと、自分が薬品になってしまったこともあり、興味本位で店に入ってみることにした。
店の中には様々な薬草、缶に入った塗り薬、瓶に入った薬液、袋詰めされた粉薬などが置かれていた。
「おぉー!これがあの有名なポーションか!」
瓶に入った薬液を見てオタク魂が熱を持ってしまった。
様々なRPGで出てくる有名な回復アイテムであるポーションが目の前にあるのだ。テンションも上がってしまう。
そもそも、ポーションとは水薬の様に液状の飲み薬のことであり、日本で売られている水薬もポーションである。
「ポーションか〜、欲しいな〜、俺が持ってるコインで買えるのか〜?」
そんな事実にも気づかず、物欲が高まっていく。
「あんた、文無しかい?」
ポーションを眺めて30分。ついに店のおばさん店主に声をかけられてしまった。
「え、あっと、全くないわけじゃないんだけど、これだけしかなくて…。」
手持ちのコイン10枚を取り出し見せる。
「なんだ、普通のポーションなら買えるじゃないか。」
そう言っておばさん店主はポーションを2本棚から取り出す。
「1本銅貨5枚だよ。もう一本はおまけしといてあげるから持ってお行き。」
そう言って苦笑いを浮かべながらポーションを2本渡してくれた。
「ありがとうございます!」
「あいよ。毎度あり。」
もらったポーションをカバンに入れる。
そして、もう一つおばさん店主にお願いしてみる。
「あの、よかったらお金の計算について教えてもらえませんか?」
「あんた、金勘定出来なかったから30分そこにいたのかい!?」
「…はい。」
この世界で生きていくためには、必ず必要になる知識だ。
この人なら信頼できるし、お願いしてみたのだが…。
「しょうがないね。乗りかかった船だ。」
信頼通り良い人のようだ。僕の見る目は確かだな〜。
一通りお金の計算について教えてもらった。
この世界に紙幣はなく、”金貨””銀貨””銅貨””鉄貨”の4集類の貨幣が存在していて、金銀銅鉄の順で価値があるようで、それぞれ、価値が10倍ずつ上がっていくようだ。
例えば、鉄貨10枚で銅貨1枚と言った感じ。
「よくわかりました。ありがとうございました。」
「どういたしまして。じゃあ、気をつけて旅をするんだよ。お嬢ちゃん。」
「はい!」
キキはご機嫌に店を出て、再び街の中を散策するのだった。
誤字などありましたら適宜修正していきます。
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