大戦準備 奴隷商side
時間は遡る。
「痛って〜…。なんだったんだ…?そういえばあの女狐は!?」
1人の男が目覚め、あたりを見回している。
周りには仲間達が自分と同じく地面に口づけをしていた。
「くそっ!!起きろお前ら!起きろ!」
寝ている仲間達を文字通り叩き起こす男。この男、無謀にもキキに火属性魔法をぶっ放し、盛大に返り討ちに遭った奴隷商の男だ。
正確に言えば、奴隷商が雇った人攫い兼傭兵だった。他の仲間達も同じく雇われた奴らであり、男と似たような奴らだ。
ただ、この男はただの雇われと言う訳ではなかった。実は、奴隷商の雇い主とかなり長い付き合いであり、実質は雇われのであっても奴隷商の側近のような立場なのだ。無論、今回のことに関して責任を取らされるならこの男だろう。
「うっ…。なんだ…。」
「ふざけやがって…。」
「オーマイゴッド!」
口々に悪態をつきながら起き上がる仲間達。1人カタコトの英語を喋るおかしな奴もいるようだが、打ち所が悪かった訳でなく素だ。
「一度ボスのところまで戻るぞ…。」
男達は商店の1つに突っ込んでいる馬車を回収し、自分たちのアジトへと戻っていった。
アジトまでは大体馬車で1日程度かかる。
馬車を急がせ最短距離で戻り、ボスへの面会を行なった。
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「おぃ!獲物はどこだ?」
笑いながら聞いてくるデブが目の前にいる。
このデブが男達のボスであり、奴隷商の最高責任者デーブスである。
「それが…。」
男が説明を行う。
この男、キキに火属性魔法をぶっ放した男だ。名前をジールと言う。
ジールは事の全てをデーブスに話した。
「なに!?白髪の女狐を逃した!?」
「はい…。獣人族ではない種族の仲間が居たようです。そいつに邪魔をされました。」
キキの種族が薬品だとは思いもよらないようだ。
「そいつは何者だ!?」
「わかりません。ですが、私の魔法をいとも簡単に無力化し、仲間を含めて全員を一瞬で倒すほどの相手です。かなり危険な存在だと思います…。」
自分を倒した相手をこのように評価しなければならない悔しさからか、尻すぼみに声が低くなっていく。
「むぅ…、どう思う?」
「そうですね〜。」
デーブスの横に立っている男が反応する。
男は全身を真っ黒なローブで覆っていて顔は見えない。手には赤い宝石が付いた杖を持っている。
「もし、その白髪の女狐を捉えるとしたら、今の戦力では勝てないでしょうね。3日で出来る限りの戦力を集めてそこから狩りに出るのが今出来る最善かと。」
「よし、そうしよう。早急に傭兵を集めろ!金は弾む!何としても白髪の女狐を手に入れるぞ!」
「はい!」
ジールは返事を返し、準備をしに部屋を出ていった。
「では、私も準備をしなければなりませんので失礼します。」
黒ローブの男もそう言うと部屋を出ていった。
「馬鹿な男だ…。」
部屋を出た黒ローブの男は誰にも聞かれない小さな声で呟くと、口元を歪に歪めてその場を去るのだった。
誤字などありましたら適宜修正していきます。
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