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ゾディアック・リドゥ  作者: 鎌里 影鈴
第一章 凡人と微睡みの少女
6/30

第5話 真実は流星のように唐突で

メロンソーダ片手にテレビ観賞。鎌里 影鈴です。

第5話では、物語の核となる単語が多数出ます。

少しでも興味のある方、ぜひ見てください。


 「時間」を組み込まれた「空間」は一般的に「世界」と称され、一説ではその数は百を超えると言われている。

 しかし数十年前まで、世界は一つだけだと思われていた。

 それが二十五年前、ある一つの災害が世界が複数存在することを証明した。

 その名も――「異界結合」

 極度の空間の歪みと衝撃が連鎖したことにより起きた異次元爆発現象。

 それにより世界は甚大な被害を受けたが、結果的に別の世界を知る新たな礎となったことは否めない。

 四大世界の発見による名称改定をして以来、特に公表された情報は無いが、いずれ大きな発展があるだろう。

 ……そういえば、こんな説があった。

 世界は複数存在するが、その総体ともいえる「宇宙」は幾つあるのか?

 その答えは、非常にシンプルだ。


 「宇宙」という存在は、世界に一つだけしかない。



  ◆ ◆ ◆



「宇宙都市……だと?」


 無音の空間になりつつあった礼拝堂。

 その沈黙に困惑の色を塗ったのは、ライオだった。


「はっ、馬鹿馬鹿しい。そんなものあるわけ――」

「どうして、そう言い切れるんですか?」


 嘲るようにして言うライオに、バルサが言葉を出す。


「どうしてって、んなもん決まってる。人間は、地球にしか存在しないからだ」

「……僕も今までは、そう思っていました。でもライオさん。真実は違ったんだ」

「何が違うってんだ」


 ライオが苛立ちながら問うと、バルサは真剣な眼差しで答えた。


「人間はこの地球だけではなく、他の惑星にもいるんだよ。同じであって同じじゃない――地球に」

「あの、バルサ君? 全く意味がわからないんだけど」

「同感だねぇ」


 リュイナが頭上に疑問符を浮かべ、ヘートルがそれに同意する。他の二人も、同じ様子だ。


「じゃあ、順を追って説明しよう。――四大世界って、わかるよね?」

「うん。「人間界」に、「天聖界」に、「悪魔界」。それと「幻間界」、だよね」

「正解。異世界の存在が明らかになるまで、僕らの世界には決まった名称は無かった。でも昔起きた謎の『大災害』によって、世界に名前が付いた」


 何故か『大災害』の名前は思い出せなかったことに違和感を感じたが、バルサは気にせず続けた。


「ミミアさんは幻間界とは違う、別世界の地球から来た人間なんです」

「別世界ねぇ。ちなみに、どの世界かな?」

「天聖界」

「おい、天聖界ってのは天使や神が住む世界って話じゃねぇか。そんなふざけた場所に人間がいるなんて、冗談にも程があるぞ」

「全部話せば長くなりますが、どうやら天聖界には、不思議な力を持った人間が少なからずいるらしいです」

「ほう。ということは、その子も力を持っているのか」


 と。年のためかずっと聞く側に身を置いていた町長が、余程気になったのか細い目を光らせて言った。


「そうみたいです。ですが――」

「……私情のため、口外は禁じられて、いる」


 バルサが視線を向けると、ミミアが目をうつらうつらな状態で答えた。


「この話はここまでにして、次に世界の崩壊について話そうと思います」

「ちょっと待った。宇宙都市ってのは、天聖界にある都市ってゆう解釈でいいんだよな?」

「? そうですが……」


 バルサが話を進めようとした最中、ライオが確認なのか話を戻して来た。


「何か気になるのか。ライオよ」

「別に、何でもありません。町長」


 ライオは平然とした態度でかつ丁寧に答えた。

 何故か町長と話すときのライオは、表情が売って変わって騎士のような振る舞いになるのだ。


「では、世界の崩壊について。――皆さん、「星導の女神」の話は、ご存知かと思いますが……どうやら、あれは実話だったらしいです」

「ええっ! そうなの!?」


 バルサが何とか内容を噛み砕いて言うと、リュイナが真っ先に驚きを見せた。


「あの話、私童話だと思ってたよう」

「俺もだ。――確か、空から来た女神が四つの大陸に力を与えた話だよな」


 リュイナにまたもや同意したヘートルが、星導の女神の話を一言でまとめてくれた。


「そうです。ミミアさんに教えてもらった話を要約すると、その四つの力は、天聖界の一族が創り出したもので、ミミアさんは、その一族の末裔らしいんです」

「ほう……!」


 それを聞いた瞬間、町長の目が再び光り、リュイナも興味深々といった様子で瞳をキラキラさせていた。


「で、この世界に不祥事である力が落ちて来まして、それが幻間界にあり続けると……世界自体が力に潰され、崩壊することになります」

「成る程。ーーしてその力とは?」

「……黄道、十二星座」

『――!!』


 ミミアの言葉を聞いた途端、その場にいた全員が息を呑んだ。

 それはそうだろう。黄道十二星座といえば、誰もが知ってる有名な星座だ。

 それが未知の力となって、世界の脅威となるのだ。声が出なくなるのは、当然なのかもしれない。

 しかし――


「はっ、冗談はよせ。バルサ」


 突如として、ライオが鼻で笑ってバルサの話を否定した。


「ライオさん。またですか」

「なんとでも言え。それより貴様。その女の言ってることが、嘘じゃねぇって証拠はあんのか」

「それは――ない」

「だろ? だったらそんな話真に受けてねぇでーー」

「でも、目を見ればわかる」

「何……?」


 バルサは言い返すと、ミミアの方をちらと見てから、ライオに視線を戻す。


「確かに、ミミアさんが真実を言ってる確証はない。正直、出会ってからまだ一日しか経っていない子を信じるなんて、僕はどうかしてると思った。でも困っている人を見捨てるほど、僕は馬鹿じゃない」

「困ってる? 見たところこの女に、そんな表情は見えねぇが」


 そう。僕も昨日と今日で理解した。

 ミミアは――感情が表に出ない、とてもクールな子だ。

 だが、いくら無表情だからといって、その瞳に感情の色がない訳ではない。


「ミミアさんは、心の中で悔やんでいた。テレパシーをもらった、僕だからこそそれが鮮明にわかる」


 一切の迷いなく、信念を貫く。


「僕は――ミミアさんを助けたい。それだけだ」


 その言葉は重く、バルサ自身にのし掛かる。でも、バルサは潰れずに持ちこたえる。

 その心は、既に決意を固めてしまったから。


「いやはや、実に愉快愉快」


 と。バルサとライオの間に、町長が割って入って来た。


「バルサよ、よくぞ言った。それでこそ、男というものじゃ」

「町長。ありがとうございます」

「ええてええて。そちが信じるなら、儂らも信じよう」

「町長! 良いのですか!?」


 ライオが驚きの声を上げると、町長はさも愉快そうに笑った。


「何、信じるぐらいは皆平等。もしその女――ミミアの話が戯れ言だったとしても、何も変わらんよ」

「そうそう。第一、バルサ君が皆の前で嘘をつくとは思えないし」

「まぁ。そうだねぇ」


 町長にリュイナ、ヘートルがバルサの話を、ミミアを信じてくれた。

 そして、残されたライオは――、


「ちっ、わかったわかった。信じればいいんだろ、信じれば」


 ぶっきらぼうな態度で賛同してくれた。


「皆さん――ありがとうございました」


 バルサは感謝を込め、頭を下げた。

 その応対を、ヘートルがにこやかな笑みで返してくれた。



「いいよいいよ、そんなに固くならないで。それよりバルサ。何故そのことを、俺達に話そうとしたんだい?」

「はい。実はこの危機は、黄道十二星座の力を集め直せば、世界が救えるらしいんですが、その集める役を、僕がやることになりまして」

「それは何故だい?」

「それは……あれ、そういえば聞いてない」


 ミミアが送ったテレパシーには、この世界の危機やその打開方法の情報が入っていたが、その理由や論理は無かった。

 ついでとばかりに、バルサが聞いてみる。


「あの、ミミアさん。どうして僕が、力を集める役になったのか、教えてくれないかな」

「……から」

「え? ごめん聞こえない」

「…………」


 ミミアが、バルサに手招きをしてくる。

 また耳を貸せってことなのだろうか?

 よくわからないが、取り敢えず自分の耳をミミアの口元に近づける。


「――――」

「え、ええっ!!」


 テレパシーではなく、ちゃんとした声でその内容は聞き取れた。

 直後、バルサの頬が赤く染まり、慌ててふためく。


「ミ、ミミアさん。それは――」

「え、何々? 私にも教えて、ミミアちゃん」


 バルサの反応を見てか、リュイナを筆頭に周囲にいる人達が気になりだした。


「ちょっ、リュイナ。これは……」

「はいミミアちゃん。皆に聞こえるよう大きな声で言ってみよーう」

「うん……」

「だ、だから――」


 バルサが止めようとしたが、その時点でミミアは口をいつもより少し大きめに開けていた。

 そして――その言葉を放つ。


「誓いの汁を、もらったから」


 瞬間、窓に亀裂が走るような音がした。

 先ほどとは違った、重苦しい空気が全身を縛る。


「バルサ君……」

「な、何かな。リュイナ」


 リュイナの周囲に、黒いオーラが立ち上る。

 バルサの背筋に悪寒が走った。


「リュイナ、誤解しているかもしれないから正直に話す。汁っていうのは多分――」

「こんの、ふしだら野郎ーッ!!」

「ごふっ……ッ」


 黒いオーラを纏ったリュイナの拳は、目にも止まらぬ速さでバルサの溝尾に撃ち込まれた。




「汁って言ってたから、てっきりふしだら系だと。まさか汗だったなんて」

「人の話は最後まで聞こうね。リュイナ」


 礼拝堂の一件から数分後。意識が暗転したバルサは、自分の家のベッドで目が覚めた。

 その直後、リュイナは涙目で何度も謝っていた。

 もう大丈夫だよとバルサは言ったが、リュイナは泣き顔のままでいた。どうやらバルサが死んでしまったんじゃないかと思っていたらしい。

 確かに、リュイナからボディーブローを喰らったのは今まで一度もなかったし、驚きはした。でも素手で殺されるほど、バルサは軟弱ではない。

 ただ夢の中で、満開の花畑と赤い血のような川は見たが、あれは決してそういうものではない。絶対に。絶対に。


「ミミアさんも、勘違いされるようなことは控えてね」

「ごめん」


 ミミアは言って、無表情で謝るという高度な技をやってのける。まぁ、本人にとってはそれが普通なのかもしれないが。


「ミミアさんの世界では、汗を誓いの汁と言うの?」

「最近、は、使ってない。でも、昔は言ってた」

「昔かぁ……」


 バルサは頭の中で推測を行った。

 確か何処かの国では、汗には微弱ながら魔力が宿っていると信じられているという話があった。

 その話が本当なら、汗が契約やら誓いやらに使われるのも納得がいく、と思う。

 しかし、昔使っていたというのなら今使う必要は無かったのではという疑念が脳裏を掠める。


「それはそうと、バルサ君はいつミミアちゃんに、自分の汗をあげたの?」

「あげたっていうか、あれは舐められたと思うんだけど……」


 バルサは昨日の記憶を振り返る。

 異形を倒し、その頃は寝たきりなミミアを背におぶってバルサは町に戻った。

 その道中、背中に微かな動きが感じられた。その時だ。

 ミミアに誓いの汁、もとい首筋の汗を摂取されたのは――


「あれ?」


 ふとバルサは、何かに行き詰まった。

 何故か記憶に齟齬が発生したような、不思議な感覚だ。


「どうしたの? バルサ君」

「……いや、何でもない。それより、今後のことについて少し話そう」


 バルサはそう言うと、近くにあった椅子に腰掛けた。


「黄道十二星座を集める方法なんだけど――」

「旅は駄目だよ」


 リュイナが食い気味に反応を示し、バルサは軽く息を吐いた。


「リュイナ。どうしてそこまで頑なになるの?」

「それは……私が寂しいからって理由じゃ、駄目?」


 リュイナが体をもじもじさせ、頬を紅潮させて言う。


「なら、リュイナも旅に出ればいいじゃないか」

「えっ」


 その発想は予想外だったのか、リュイナが目を丸くする。


「それだと、リュイナも危機に巻き込む結果になるけど、一緒に旅をすれば、寂しくならないよね?」

「そうだけど……」


 リュイナは言った後、顔を俯かせ、しかしすぐ首を横に振る。


「だけど! それでも駄目! ……二、三日くらいなら離れてもいいけど、バルサ君はそれ以上国に出ちゃいけないんだよ」

「う~ん」


 黄道十二星座の力を集めるには、旅をするのが一番効率が良いと思ったバルサだが、リュイナが中々了承してくれない。

 最悪、リュイナを無視してしまった方が速いが、友情に傷痕が残る可能性が高い。信頼できる友を傷つけるのは、出来れば避けたかった。


「……あの」


 と。その時、ミミアが蚊の鳴くような声を出した。


「それなら、私、に、考えが、ある」

「え、あるの?」


 ミミアはゆっくり頷くと、声を大きく出すために小さな口を広げて言った。


「六日、経ったら……全部、叶う」

如何だったでしょうか。

今回の話は主人公のバルサが男を見せ、その後に誤解されて気絶するというパターンにしました。

神よ、何故そうなった・・・・・・。

感想、アドバイスをお待ちしております。

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