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ゾディアック・リドゥ  作者: 鎌里 影鈴
第一章 凡人と微睡みの少女
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第10話 草の中枢都市ハーディースト

人は上っ面を受け入れることは出来ても、真相を受け止めることは難しい。鎌里 影鈴です。

約十五日ぶりの投稿となります。今作品を読んでくれていた皆様、お待たせしました。それと同時に、誠に申し訳ありません。

投稿の間隔を守れず、このような結果になってしまったのは、僕の能力不足です。

こんな人間が思うことは一つ、皆様に自分の作品を読んで頂きたい。それだけです。

 視界が開けた先には、嗅ぎ慣れたものと少し違う風の匂いと、それを作り出す森と山脈が見えた。

 どうやら自分たちがいる場所は、景色を一望出来る丘のようだ。

 濁りのない空気が、優しく肌を撫でる。


「ーーで、ここはどこなんだい? ミミア」


 バルサは後ろを向き、自分の背後にいたミミアに問い掛けた。

 虚ろな表情をしたミミアがゆっくりと口を開く。


「ここは、ソラスンの、中枢都市・・・・・・の近くの丘」

「中枢都市ーーってことは、『ハーディースト』か」


 中枢都市ハーディーストーー草の大陸ソラスンの代表国であり、国一番の領土を持つ都市だ。


「でも、何でこの都市に飛んだの?」

「広い街、の方が・・・・・・星の力、探しやすい」


 なるほど。まずは情報収集というわけか。

 バルサはすぐさま理解すると、くるりと踵を返して言った。


「よし。まずは〈空駆ける彗星(コメータ・シエル)〉をどこかに隠そう。それから、都市に行って情報を集めよう」

「うん」

「ちょっと待ってよー」


 バルサと、バルサに短く返答したミミアと、暫く呆けていて状況を把握していない様子のリュイナは転送装置に乗り、〈空駆ける彗星〉に元々付属していた飛翔機能で空中を静かに滑空した。




 その頃、サルファの山にて。


「っ! これは・・・・・・」


 クレーターの偵察を日課のように行っていたライオは、その光景に絶句した。

 クレーターの中央にあった巨大物体が突如として姿を消したのだから、当然だ。

 物体の所有者である女が起動させてどこかに移動させたか、或いはすでに搭乗して遥か遠くに行ってしまったか。

 これで災厄が取り除かれたと思えば、幾らか気が楽だろう。

 だが、サルファに住む数人と共に姿を消したとすれば話は別だ。


「勝手に行きやがって・・・・・・」


 旅に出るならせめて、町長に挨拶や報告の一つや二つやってくれれば、とライオは思う。

 と。そこに、飄々とした、それでいて思考が読めない表情でヘートルがやって来た。


「いやぁ、これは驚いた。まさかこうなるとは」

「こうなるとは、どういうことだ?」

「バルサとリュイナとミミア。この三人が一緒に旅をするという結論だよ。感情的で危なっかしいけど、実に面白い」

「面白い? 貴様、あいつらのことどう思ってんだよ」

「そうだねぇ。強いて言うならーー年下の友ってとこかな」

「はっ! ふざけやがって」


 ライオは苛立ち気味に鼻を鳴らすと、目線をヘートルから外した。


「なら、お前はどうなんだ。ライオ」

「・・・・・・あの女二人はまだいい。リュイナはサルファの大事な住民であるし、ミミアという奴はまだ怪しいが、恐らく用が済めばこの町を離れるだろう。だが」


 言葉を止め、睨み殺すような視線でヘートルを見る。


「俺は個人的に、小僧(バルサ)とお前が嫌いだ(・・・)。へらへらしていつも甘い、薄っぺらい奴だからな」


 冷たく突き放すように、強く言葉を放った。

 それを目の前で聞いたヘートルは、


「へぇへぇ、そうですかい」


 溜め息混じりに、若干ぶっきらぼうな態度で返した。


  ◆ ◆ ◆


 二対の木の間を通ると、辺りには色んな生物が沢山歩いていた。

 バルサの住む町より長そうな通路に数々の人や亜人。荷車を引く馬のような、竜のような生物は初めて見る。

 自分が田舎者だからということもあるが、バルサは目先に広がる景色に唖然としていた。


「・・・・・・バルサ?」


 後ろを付いていたミミアが、服の袖を引っ張ってくる。


「ああ、ごめん。ちょっと、びっくりしちゃって」

「バルサ君。こんな広い街、始めてだもんね」


 ミミアと同様、落ち着いた様子のリュイナがそう言った。

 彼女も田舎者のはずなのに、やけに平然としていると感じた。


「リュイナは平気なの?」

「うん、平気だよー。ハーディーストには、何回か来たことあるし」

「へぇ。いつ来たの?」

「確かーー三年前かな」


 ということは、バルサが十三の時で、リュイナが・・・・・・


「ーーリュイナが八五二歳の時か」

「・・・・・・・・・・・・」


 一帯が静まり返り、日差しで暖かいはずの空気が冷えてきた。

 そんな異変に気付いた直後。後方に何やら黒い霧のようなオーラがゆっくりと浮き出ていた。

 それを纏わせているのは、言うまでもない。


「リュイナ?」

「・・・・・・このーー」


 膝を軽く曲げて腰を低くした体勢を取り、後ろに回した右手を強く握りそして、


「人でなし野郎ぅっ!」

「はぐっ・・・・・・!?」


 バルサの鳩尾に見事なストレートを打ち込んだリュイナだった。

 威力はまるで無いようなものだが、当たった場所が場所なのでかなりのダメージが身体を貫いた。

 バルサは意識が暗転しかけたが、ここは都市の真ん前だということに気付き、無理矢理といった様子で持ち直した。


「げほっ、げほっ・・・・・・リュ、リュイナ」

「もうっ! バルサ君のバカバカバカぁ! 乙女の秘密を暴露するなんて、もう破廉恥もんだよ! 即昇天だよ!」

「ごめん、ごめんって・・・・・・」

「うぅ~~~~~~」


 若干ズキズキする痛みに耐えながらも謝るバルサに、リュイナはまだ感情が抑えられていないのかぽこすかと両手でバルサの胸元を叩いている。

 その時には既に、リュイナが纏っていたオーラは綺麗さっぱり霧散していた。

 バルサがこの状態を見たのは、これが二度目だ。

 生まれた時から今まで、リュイナとは友達のような付き合いをしていたが、黒いオーラというものはあまり見たことがなかった。

 今日からリュイナのあの状態を「黒鬼化(こくきか)」と名付けようと、バルサは無意識に懲りずに思った。

 するとーー


「いやぁ、あんた達面白いね」


 都市側の方から、一人の男がバルサ達に話し掛けた。土で薄汚れて尚且つ質素な服装から、都市の農民であることが予想される。

 男はバルサの前に立つと、人懐っこそうな笑顔を浮かべた。


「俺は名はサタカ。ハーディーストの住民で、農業を営んでいる者だ。君たちは?」

「あ、はい。僕はバルサ・オーガントです」

「私はリュイナ・アウォスラ。そして彼女がーー」

「ミ、ミミア・・・・・・です」


 サタカに聞かれて三人はそれぞれ自分の名前を言った。ミミアは人見知りなのか、バルサの背中にすがりながら目線を下に向けている。


「バルサにリュイナにミミアね、うん。良い名だ」


 サタカはそう言うと、笑みを少しばかり濃くした。

 その顔は、何を思っているのかがすぐにわかる、真っ直ぐな表情だった。


「ところで、君たちは旅の者かい?」

「はい。サルファから来ました」

「ほう、サルファか。それはまた遠い道のりだっただろう。君たちがよければ、宿を案内しようか」

「いえ、それは結構です」


 バルサはそう丁寧に断りを入れた。

 確かに、サルファからハーディーストの道のりは大陸内と言えど、かなりの距離であることは知っている。しかし、バルサ達は空間移転装置があるため、移動に使う体力は無いに等しい。


「そうか? それならいいんだが・・・・・・」


 バルサの返答を聞いたサタカは、少し肩を落として残念そうな表情を作った。

 何と言うか、わかりやすい人だなと思ったと同時、申し訳ない気持ちになってしまった。

 それは後ろにいた二人も思ったのだろう。互いに視線を交わすと、バルサはサタカの方に向き直った。


「あの・・・・・・僕達、実はこの都市についてよく知らなのでーー」


 バルサは言葉を述べると、次第にサタカの曇った表情が戻り、希望が舞い降りてきたかの如く輝きを出し始めた。


「よろしければ、都市全体の案内をお願いしたいのですが・・・・・・」

「喜んで!」


 サタカは餌に食い付いた獣のように賛同した。

 やはり、かなり純粋にわかりやすい人だ。


「よし! なら早速、ハーディーストを案内しよう! 付いてきたまえ!」


 言うが速いか、サタカはズカズカと街の通路を突き進んだ。


 中枢都市に来て早々、バルサ達は都市と関わりを持った。

 これから起こる出来事を、何も知らないまま・・・・・・。


 







厚かましいようですが、感想をお待ちしております。

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