第一章 プロローグ
皆さん初めまして。鎌里 影鈴といいます。
小説を書いてみたい好奇心がずっと付きまとい、作品を手掛けていくことに至りました。
蒙昧な者の趣味程度で生まれたお話ですので、それでも気になさらない方は下記へと目を注がせてください。
人生を脅かすほどの驚愕。それは、どういった時に使えるのだろうか。
不自由の一つもない生活を当然だと認めているのなら、その時が訪れた途端、あまりにも衝撃的すぎて気が動転してしまうかもしれない。
もし先の言葉に適う体験をしたならば、きっと瞳孔は限界まで見開き、全身が強張る。口から一切の文言さえも発することはできないはずだ。
今。丁度そのような状態に陥っているのが、ある一人の少年である。
慣れ親しんだ故郷の森。
種子を運ぶ風は、砂塵を舞いに舞わせる。
己の周囲に並んでいた木々は薙ぎ倒されて、枝や葉は粉々に砕け散っていた。
数瞬で起きた外面の変化。昨夜の嵐より惨たらしく、とても呆気なく景色は上書きされてしまった。
砂煙が晴れて、森を滅茶苦茶にした兵器が姿を見せる。
直径数十メートルのクレーターに、槍の穂先に似た蒼い飛来物が座している。
それの細い先端が地面に刺さり、アンバランスな形を保つ。微動だにせず、研磨された鉱石じみた輝きとともに異様さを放っている。
少年は脅威を前にした震えを押し殺し、兵器に近付く。
死ぬ可能性はあった。しかし、どういう訳か逃走という選択肢は頭になかった。
荒い斜面を滑り、足音をひそめながらゆっくりと、確実に一歩ずつ踏み出す。
あと少しで対象に触れられる、そういったところで、突如、飛来物が低い音を鳴らした。
「っ……!」
身構え、警戒を一層に張る。
駆動したかのように思えた異物は、表面を局所的に薄めていく。
そしてぽっかりとできた穴の中。そこであまりに見慣れた、しかし奇妙な格好のものが浮かび出てくる。
「……人?」
風や砂で渇いた喉から、頭上の認識を紡いだ。
色素の抜けた長い髪、黒のドレス、小柄な全体像……現実離れした光景で混乱した思考で、ようやくその人間が少女であると行き着く。
その姿はまるで、童話の姫君を模した人形のよう。
淡い光に包まれ宙を浮く少女は、閉じていた両目を開ける。
近場で見据えていた少年を見据えると、桜色の唇を小さく動かす。
――誰か、叶えて。と――。
この度は、私の作品を読んで頂き、誠に有り難うございます。
不定期更新になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
ご感想をお待ちしております。