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現と夢

作者: 音音 ココ

僕は、天国にいる。人生とは先がわからない、だからこそ楽しいのだ。これは、僕が底辺の世界から天の世界に這い上がった物語。誰もが可能性を秘めていることを、忘れさせない。君も、この世にたくさんの宝を残そう。生きているうちに………………………。

〜最良と最悪〜


僕は、世の中で言えば、置いてきぼりな人間。僕たち人間は、働くために生きているわけではない。次世代に子孫を残すために、毎日一生懸命生きているのだ。だから、別に働かなくてもいいと思う。生きていれば、それでいいと。そんなことを思っているが、僕も一様働いている。小説家という分野で。全く売れていないが、書こうという意欲は、毎日あるのだ。書いた原稿用紙を、いろんな出版社に持っていくが、全く取り合ってはくれない。それどころか、〝君は誰″とだけ言われる。まぁ、名前も知られていない僕が書いた小説、売りたくもないと思っているのかもしれないが、これでも、子供時代から小説を著していて、結構人気だった。いつから売れなくなってしまったのか、僕に教えて欲しいぐらいだ。今住んでいるアパートも、もう10年ぐらい住んでいる。言っとくが、年齢は30歳とまだ若い方だ。そんなこんなで、出版社から帰った僕は、自分の部屋のベランダに出た。次の小説の案を考えなければならないからだ。そう簡単には思いつかないが、思いつく時もある。ふと急に、家電が鳴った。僕は、サンダルを脱ぎ、電話の前で受話器を取る。電話の相手は、先ほど原稿を売り込みに行った出版社からだった。

「先ほどの蒼葉出版の佐々木希ですが、あなたの小説売らせていただきたい。」

と、いうものだった。僕は、自分の本が売れさえすればよかった。だから、受話器から聞こえてくる言葉は、僕にとって神様のお告げかと思った。そのお誘いの返事は、もちろん

「はい、宜しくお願いします。」

受話器を元の場所にそっと戻すと、勢いよく家を出た。近所のコンビニでビールを買い、走って家に戻ってきた。今日は、祝い酒。一人なのが少し寂しい気もするが、そんなことは御構い無し。自分の本が書店にまた並ぶのだ。嬉しさと興奮のあまり、どんどん酒が入り口から入ってゆく。普段は酒が強い僕でも、酔ってしまった。次の日の朝、腰痛と頭痛で最悪な日となった。


〜未知なる世界〜


一週間たって、やっと腰痛と頭痛が完璧に治った。長い苦しみからやっと解放された僕は、この苦しみと喜びを、次の小説にいかせないかと考えていた。でも、こんなことを書いて、読んでる人は楽しいだろうか、とも考えていた。違うことを考えたほうがいいのではないかと、そんなことは後でもいい。久しぶりに外の空気を吸いたくなった僕は、着替えて近所の公園に行ってみる。平日昼間、公園に誰もいないことは行く前から分かっていた。まぁ、僕にとっては、誰もいない方が静かで落ち着くからいいが。池の前のベンチに腰掛ける。そよそよと吹く風は、独自の言葉で会話をしているように聞こえる。その時だ、頭が急にガンガンと、内側からカナヅチで叩かれたように痛くなった。その痛さは、どんどん増していって、痛くなってゆく。

『僕は、死んでしまうのだろうか。』

どんどん痛くなっていく頭の内部。最後には、考え事すらできない、頭がかち割れそうなくらい痛くなっていた。気がつくと、訳のわからないところにいた。目の前には、丸い電球みたいなのがぶら下がっている。僕の体に何が起こったのだろう、一体ここはどこだろう。


〜苦しみのトンネル〜


目が覚めた僕は、少しの間静止していたが、頭がやっと回転し始めて、辺りをキョロキョロと見回した。真っ白な壁に真っ白な床、花の飾ってある棚の引き出しを開けてみると、一枚の封筒が入っていた。僕は、その封筒を手に取り、名前が書いてないかと確認をする。すると、裏の左下に、僕のペンネームが書かれていた。まるで僕が、ここに来ることを誰かが予知していたかのように。封を開けてみると、便箋にたくさんの指示が羅列してあった。

「僕に命令してるのか」

僕しかいない部屋に、怒りの声が反響する。でも、この指示に従わないと、この知らない土地から、部屋から抜け出せないような気がしたので、自分のプライドが傷つくが、従うことにした。っていうか、従うしかなかったのだ。この部屋から抜け出す方法などあるわけがない、いやなかったのだ。

手紙、いや指令書❮ベットをどけろ❯と書いてあった。鉄製のベットを、ひとりでどけるなんて無茶な話だ。しかし、どかさないと抜け出せない。どかすしかないようだ。持ち上げてみると、思っていたより重くはなかった。僕は、ベットを端にどけると、司令書に書いてあったとおり扉があった。でも、床に扉があるため、開けてみると、紐をつたって降りるしかなかった。言っておくが、僕は、臆病だが怖がっている訳では無い。多分、いや怖がっていないと思わないといけない。次の部屋があるとされるしたには、先が見えなかった。でも、勇気を振り絞って降りることにした。最初は明るかったが、どんどん暗くなってゆき、最終的には、真っ暗になって、何も見えなくなってしまった。僕は、恐る恐るしたに降り続けた。もう何時間降り続けただろう、そう思った矢先だった。突然周りの光景が見えるようになった、今まで真っ暗で何も見えなかったのに。僕は恐る恐るしたに顔を下げてみる、すると、下から眩い光が差し込んでいた。やっと外に出られると皆は思ったかもしれない。でも、終わりではなかった。ここからが、本番なのである。

僕は、早くここから抜け出したくて、降りるスピードを上げた。だが、スピードを上げればあげるほど光が遠のいていっているような気がした。早くつきたいのに、なかなかつけない。そして僕は気付く。本当に抜け出せないことに。そのうち僕は、抜け出せないという精神的苦しみからも抜け出せなくなってしまった。そんな時、不意に足首を掴まれた。ものすごい力で、足を引っ張ってくる。僕は、引っ張る力が強すぎて、一生懸命握っていた紐を離してしまった。すると、勢いよく下に落ちていく。そこからは記憶がない、きっと落ちている途中で気を失ってしまったのだろう。


〜永遠の並木道〜


僕の足首を引っ張ったのは、一体誰だったのだろう。ところで、僕が今立っているのは、並木道のスタート地点と思われる場所だった。僕から見て、両側とも、均等に木が立っていた。手のひらを見ると、皮を擦りむいていた。僕は立ち上がり、ジンジンするお尻を優しくさする。そして、歩き出そうとした時、足元でクシャっという音がなった。恐る恐る、足元を見てみる。すると、前の部屋でもらったのと同じ封筒が落ちていた。僕はもしかしてと思い、拾い上げ開けてみる。僕の予感は的中、やはり指令書だった。でも、内容は簡単だった。❮並木道をまっすぐ歩け、さもなくば死ぬ。❯死ぬ、今度は脅してきているようだ。どうして、並木道をまっすぐ歩くだけなのに死ぬのか、それまでの僕は、その意味がこれポッチもわかっていなかった。何の警戒心もなく、僕はニコニコしながら並木道を歩いた。外と同様に、風も太陽もきちんとある。何の変哲もない、どこにでもあるような並木道をまっすぐ、ただまっすぐに歩き続けた。でも、途中で僕はある異変にきずく。さっきから、周りの景色が変わっていない。しっかりとまっすぐに歩いているはずなのに、景色が変わっていない。僕は、歩き続けた。今度は、周りにあった石などを置いて。僕の予想は当たったらしく、最初に石を置いた場所に戻ってきた。いまやっと、『死ぬ』という言葉の意味がわかった。でも僕はバカじゃない、このことに気づいたのだから。でも、きずいたのはいいが、抜け出す方法がわからない。無駄に歩くと体力を消費すると思った僕は、道に座り込んだ。今まで、たくさんの本を読んできた。いまの状況と同じシーンがある小説だってたくさんあった。でも、その小説たちは面白くなかった。僕の考えていた抜け出し方法ではなかったからだ、僕だったらこうする。そう思った時、もしかしてと思い、ふと上を見上げる。僕は、天才かもしれない。僕の考えていた抜け出し方法、それは、(木の枝に、たくさんの鈴が付いている。その鈴を使って、曲を奏でる。曲は、さくら。どうしてかって、その鈴が付いている木は、桜の木だから。)というもの。この並木道の、僕のちょうど目の前の木の枝に、鈴が付いていた。木の幹には、《サクラ》と書いてあるプレートがくっついていた。僕は、木によじ登りサクラを奏でる。すると、並木道の1番はじに、扉が現れた。僕は、そこまで全速力で走る。今度は、ちゃんと扉の前に着くことができた。深呼吸をして一度落ち着く、そして、ドアノブに手をかざす。なんでかは知らないが、妙に緊張する。次に待ち受けているのは、一体どんな指令なのか。僕は、ドアノブを回し、扉を開けた。


〜黄金の稲穂〜


ドアノブを回し扉を開けると、そこには黄金色の稲穂がたくさん生い茂っていた。1歩を踏み出す、握っていたドアノブを離し。すると、扉は勝手に締まり消えてしまった。残ったのは、見覚えのある白い封筒。拾い上げ開けてみる、便箋にはこう書いてあった。

【お前は、善か悪か。今、試す日が来た。】

まただ、僕が最初からここに来ることを知っているかのような書き方をしている。一体僕にこんなことをしているのはどんなやつなのだろう。それも気になるが、書いてあった内容も気になる。行動的指示はないが、警戒心なく進むのは無防備だと思った。今まで通ってきた部屋には、おかしなトリックがいくつも隠されていた。だから今回も、絶対に何かトリックがあると僕は考えていた。しかも、僕の腹は空腹で唸っていた。外の空気を吸いに散歩に出た僕は、手ぶらだった。金も、食料もない。抜け出す前に、餓死してしまうんじゃないかと心配だった。だから僕は、食料がないかと詮索しながら歩いていくことにした。だが、木の実がついている木など、いや、木が一本も生えていないのだ。このままでは、餓死まっしぐら。でも、どうせ抜け出せるかどうかもわからないのだから、死に方は違っても、結果的に行き着く場所は一緒のようだ。そのうち日も暮れ、暗くなってきてしまった。僕は今きずいたことがある、ねる場所がないことだ。このおかしな世界に来て、夜になったことは一度もなかった。だから、寝る場所など必要がなかったが、今回は必要みたいだ。だからといって、こんな知らない場所に安全な場所を探そうとしても、全てが危険であり、寝るなんて到底ありえない話だった。空腹に耐えながら少し先まで歩いてみる。すると、湧き水がある場所を見つけた。僕は、周りから薪を拾い、たまたまポケットに入っていたライターと、その辺にたくさん生えている稲穂を使い火を起こした。湧き水で顔を洗い、すぐに地面に横になった。何日も寝ていなかったのか、僕はすぐに寝付いてしまった。

気がつくと太陽は高く登っており、火はとうに消えていた。体の疲れが取れたのか、体も足も軽やかだった。だからといって、目的地が決まっていない僕には無駄だった。どうしようと悩んでいると、近くで話し声が聞こえてくる。声のする方に近ずいてみると、変な会話が聞こえてきた。

『 稲穂姫、早く仕事をなさってください。昨夜、南の国の稲穂が燃やされて殺されたそうです。犯人を探さなくては、稲穂姫。』

という内容のもの。稲穂姫とは一体誰なのだろう、というか昨夜稲穂が燃やされた。もしかしてと思い、つい稲穂姫という人の前に出てしまった。相手は、急の事できょとんとしている。それもそうだ、知らないやつが急に出てきたらびっくりもする。少し経ってから、稲穂姫と呼んでいた家臣みたいなやつが、しゃべり始めた。

「お前は何者だ。さては、スパイか。」

そのセリフは、僕が言えべきだと思うが、そんなことはどうでもいい。僕は謝りたいと思ったから、人の前に出たのだ。

『 ごめんなさい、昨夜湧き水の出ている近くの稲穂を、火を起こすために燃やしてしまったのです。本当にすいません』

稲穂姫と呼ばれるその人は、僕に優しく微笑んだ。

『 貴方でしたか、でも困っていたなら仕方が無いですね。許してあげましょう』

そう言ってくれた、僕はその人に頭を下げた。気持ちを込めて、ありがとうと言った。伝説で聞いたことがある、稲穂の神様稲穂姫。夕日に輝く肌や髪は、どこの神や人間よりも美しい姫だと。でも、あくまで伝説。本当に稲穂姫がいるのかもわからない、この人が稲穂姫なのかもわからない。気がつくと、稲穂姫と呼ばれる女性は遠く向こうを歩いていた。もしかしたら抜け出せるかと思い、ついていくことにした。随分遠くにいたので、追いつくために走る。すると途中で、クシャっと音がした。下を見てみると、白い封筒が落ちている。先程もらった手紙が落ちたのかと思い、パーカーのポケットに手を突っ込んでみる。すると、封筒は2枚きちんと入っていた。では、今拾ったのは新しい指令書。しかし、まだ抜け出せてないのにどうしてあるのか。封を開け便箋を取り出す、すると、やはりその手紙は、僕に当てられたものだった。内容は、❮落ちているものを拾え❯というものだった。一つのステージに一枚の指令書、それが、急に二枚目が出てきて、落ちているものを拾えよって、人を馬鹿にしているとしか思えない。見失った稲穂姫の足跡をおい、突き止めたが、空腹と疲労、入っていった建物の厳重な警備のおかげで入れそうにもない。僕はその場に座り込んでしまった。 稲穂姫らしき人の入った建物は、藁で出来ている屋根のみすぼらしい家だった。なのに厳重に警備されている、稲穂姫らしき人の家かと思った。が、そんなはずはない、本来稲穂姫というのは稲穂の神様のようなもの。こんなところに住んでいるはずもない、それとも本当の稲穂姫ではないのか。そんなことが頭の中でぐるぐるとよぎっていく、何分たったかはわからないが、ぼろ屋敷から先程の女が出てきた。屋敷からも、ぞろぞろと人が出てくる。話を盗み聞きしていると、このぼろ屋敷は北稲穂地区の区長の家だったらしい。そして、何か決めゼリフでも言ったのかはわからないが、「そのお言葉、この胸に刻んでおきます。稲穂姫様」

と家の者が言っていた。本当に稲穂姫なのか、それとも違うのか。そうして考えるうちに、稲穂姫にまた捕まっていた。どうやら隠れていたのが見つかったらしい、僕は《迷い通り》という場所に連れていかれるみたいだ。そこは、人生の迷い人が沢山いる場所と何かの小説に書いてあった気がする。だが、何の小説かは忘れてしまって思い出せない。稲穂姫の神輿の後ろを歩き続けて3日、迷い通りの入口に着いた。そして神輿から稲穂姫が降りてきた、そして僕の方を見るとこう言った

「最後だが、何かそなたには願いはないのか。訳があってついてきたのだろう、何なのだ。」

僕は、言ったら現実に返してくれるのか。迷い通りに行かなくて済むのか、その時迷い通りと出てきた小説のことを思い出した。僕が幼い頃に書いた小説に、稲穂姫という登場人物と迷い通りという場所が出てきた。その本の題名は『黄金の稲穂』、この本の最後は刺客に稲穂姫が殺されるという結末。もしその本の内容通りなら、もうすぐで稲穂姫が殺される。僕があたりを見回すと、稲穂姫の後ろの茂みからキラキラと光るものがあり、あっという間にその光るものは稲穂姫の後ろめがけて飛んできた。僕はきっと抜け出せないまま死ぬのだろう、いや飢餓で死ぬ。どうせ死ぬのなら、稲穂姫を狙った矢に自ら当たったって構わない。僕は、急いで立ち上がり稲穂姫の後ろに仁王立ちした。そして、僕の心臓に当たった。痛かった、口から血が出た。今度こそ死ぬのだ、天国か地獄かはわからないが、ここから抜け出せることはできる。意識は朦朧とし、心臓の鼓動が遅くなってゆく。そして意識が完全に無くなり、鼓動も完全に止まった。


〜ベストセラー〜


僕は死んだ、死んでしまったが抜け出すことが出来て嬉しかった。まさか、こんなに早くこの世からいなくなってしまうとは思わなかったが。 僕は真っ暗な世界にいる、いいことをしなかったから地獄に来てしまったのか。遠くの方から声がする、その声は聞いたことのある声だった。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん。」

お兄ちゃん、僕は目が覚めた。目の前には、涙目の両親と妹の顔があった。一体何がなんだかわからなかった、どっちが現実で夢だったのか。その後、妹から全ての成り行きを聞き、目が覚めて一ヶ月後に退院した。何ヶ月ぶりかに自分のアパートの部屋に戻った。妹が家に来て換気をしてくれていたおかげで、澄んだ空気が部屋に入っていた。部屋の隅にある本棚を見た、今まで書いた小説がホコリをかぶって並んでいた。僕は、僕自身が今回経験した出来事を小説にすることにした。3ヶ月かけて書いたその本は、大ベストセラーになり、後世に数々のベストセラーと名前を残し、いなくなった。その本の題名は


『現と夢 』



人生とは、長いようで短い。だから、伝えたいことごあったなら、伝えたいと思った時に伝えておくべきだ。後で必ず後悔する時が来る、大切な人がいるならそばにいるべき。守りたいなら、そばを離れてはいけない。植物も動物も感情を持ち生きている、だからこそ楽しいのだ。何かがかけてはいけない、この世の中にあるものは、全てが必要なものであり、それがあるからこそ生きていけるのだ。生涯にそのもの達に感謝し続けなくてはいけない。

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