表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「黒い家と殺人事件」
8/43

第七話 『 監視者 』

 監視者が探すものとは!?


「ハアハアハア」


 俺は〝あいつら〟を探していた。


 希望ヶ丘学園内を走り回るある男。誰かを探しているようだが。


「――おっと、見つけた」


 彼が探していたのは同じA組のクラスメイトの舞園と石川と高橋の三名。


「あいつら、今朝にどうしてあそこまで戦場むくろをかばう。それに青葉のセンコーに戦場むくろの住所なんて聞いてどうするつもりだ」


 暴いてやろう。あいつらと戦場むくろのつながりを!


 彼の名前は堂島ドウジマ快跳カイト

 創と同じA組のクラスで、有馬駅連続殺人事件について調べている。今朝の戦場むくろの机に落書きを指示したのも赤いペンキを使ったのも全て彼を中心に行った事だ。だけどそれにはそれ相当の意味があった。真実は某テレビ局による極秘情報より。有馬駅連続殺人事件の主犯の戦場貞子が〝逮捕された〟事を今日昼に世間に公開する予定との話。そう、戦場貞子は逮捕されていた!


 彼の父親は某テレビ局の幹部で、彼も巻き込まれる形で仕事に携わっている。『これだけ世間を騒がせているニュースなんだ。犯人が捕まり次第に緊急生放送でもして視聴率を独占すれば良いのに……』なんて思っていたけど、実は真実の情報をメディアや他の局に高値で売りつけ、各テレビ局やメディアがほぼ同時刻に世間に戦場貞子の逮捕を報じるという契約をしていた。それはそれはかなりの高値で売り回されたわけだが、きっと裏切る業者も出てくるだろう。この世界でそれは自爆を意味するらしい。そして今日の午前11時45分に戦場貞子の逮捕は世間に正式発表された。


「あいつら……戦場貞子が逮捕されたことを知っているのか」


 堂島は遠くから創ら3名を尾行している。途中コンビニへ寄っていた3名。堂島は余すことなく監視を続ける。


「よし」


 携帯を手に取り〝ある人物〟に現状報告をする。以下堂島と連絡先の相手の会話より。


「もしもし」


「親父。とりあえず状況を知らせておくぜ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 堂島ドウジマ 和雄カズオ(42)

 男性 身長180cm 体重72kg

 堂島快跳の父親 職業はAD

 様々なテレビ番組制作に携わる業界随一の

 大物ディレクターにして作詞活動もしている。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 


「例の3名の生徒の尾行を続けている。どうやら彼らはこれから戦場むくろ宅へ向かうみたいだ」


「ほう」


「とにかく尾行は順調だ。引き続き尾行を続ける」


「頼むぞ。――そういえば」


「ん?」


『その3名の生徒に高橋という女がいる。彼女の下の名前は偽名だ。学園名簿には【高橋星子】とされているがそんな人物は存在しない』


「何!?――どういう事だよ」


「現在分かっているのはそれだけだ。あんまり怪しい行動をするようであれば、その都度俺に報告をしてくれ」


「オーケー」


「その件も視野に入れて引き続き調査を頼む」


「了解。んじゃ切るぜ」


「ああ」


 堂島の父と通話を切った。


 それにしても、高橋星子は偽名だって!?――何だって偽名なんて使ってるんだ……怪しい、怪しすぎる!


 舞園たちがコンビニから出てきた。――高橋、あいつは何者なんだ?


 堂島は壁によたれ掛かり、身を潜めて創らの行動を観察する。しばらくして彼らは山道へと続く階段を登っていた。


「ほう、あの山奥に戦場むくろの家があるのか。――ん?」


 先程舞園たちと会話をしていた老夫婦が堂島の前を通り過ぎる。


「あの子たち本当に行っちゃったわよ?」


「仕方が無いであろうばあさんよ。きっとあの子らには何か事情があるのだよ」


「でも、あの子たちはまだ子供よ?」


「戦場夫妻はもうあの家には住んどらん。問題なかろうて」


 ――戦場むくろの両親は共に行方不明なんだよな。それにしてもあの老夫婦、意味深な会話しちゃって……


 堂島はその老夫婦に見つからないように隠れ、再び舞園たちの尾行を続ける。


そして数分後。


 どうやら舞園と高橋は休憩中のようだ。堂島もその場に腰掛ける。そして15分の休憩時間を過ごしているその時、創らよりも遠くから女の声が聞こえる。


「こらーーっハジメ、高ちゃん!――まだそんな所にいたの!?」


「うるせー!――僕らはお前と違って此処を楽々登る体力は持ち合わせていないんだよ!」


「もう、せっかく戦場むくろの家を見つけたのにまだこんな所で休むつもり!?」


 石川が舞園たちの元へと駆け寄る。唾を飲む堂島。


 なるほど、青葉のセンコーは本当の情報を舞園たちに渡したんだな。まあ、嘘を教えてどうにかなるわけでもないけど……

 

 休憩を終え颯爽と山道を進んで行った舞園達。


「――よし」


 堂島もそれに続く。――しばらく尾行した所で小さく視界に現れたのは、二階建ての黒い家。人気が全く感じられない真っ黒な家。山奥にひっそりと構えるそれは、不気味なものにしか見えなかった。――とその時!


 プルルルルルルルル……どこかから着信音が鳴り響く。


「電話だな。あいつらの携帯ではない。とすると戦場むくろの自宅電か?」


 しばらくしてその電話は鳴り止んだ。


「ん、石川の奴……」


 石川ナツが黒い家のドアを開けていた。まさか中に入るつもりなのか?


「すみませーん、希望ヶ丘学園のA組の生徒の者ですけど、どなたかいらっしゃいませんかー!?」


 ――反応は無い。


「すみませーーん!?」


 ――とその時だった。石川の後ろに立っていた舞園の様子がおかしい。


「ちょっと舞園くん!?」


 様子を見ている堂島。最悪な状況が目の前で起こっている。


 舞園が倒れた!……どうした舞園!――助けになりたいが、ここはもう少し様子を見るべきだ。どうやら舞園は意識を失ったみたいだ。ん?


 視界を黒い家に集中して置いた堂島。そこで彼が目にしたものは二階の窓から舞園らを見下ろす謎の人影。


「あ、あいつは」


 ――人の顔が確かにある!――あいつは戦場むくろなのか!?――お、おい気付け、石川、高橋!――口に出して叫んでしまいたい。でも出来ない。ここまで来て尾行をやめるわけにはいかない。俺は悪魔で舞園たちと戦場むくろの関係を探るのが目的なんだ。な、何かこうもうひとアクションでも起こせ!


「ハジメ、ハジメ!――しっかりしなさい!」


「ど、どうしちゃったんでしょうか……舞園君」


「ハジメは昔からたまにこういうことがあるのよ。ゴメン高ちゃん、救急車を呼んでくれないかしら?」


「――御免なさい!――わ、私携帯持ってないんです!」


 それは離れたところにいる堂島快跳にも聞こえる会話だった。


「携帯を所持していないだと」


「そうなの!?――それじゃあ高ちゃんは、ハジメの頭が床につかないように頭を抱えていてくれない?」


「う、うん分かった!」


 そう言うと高橋は石川と交代して舞園の体を抱えた。


「で、電波……電波が無いわ。そんな、何でよ。電波が無いわ此処!」


「そんな……」


 その会話を聞いた堂島は携帯の電波を確認する。電波はかすかに一本だけ残っていた。


「電波がある……クッ!」


 どうするべきだ。どうするべき?――そんな事考えるまでもない。俺は将来世界の一流バスケマンになるんだ。断じてジャーナリストではない、考えるまでもない、呼ぶんだよ、救急車を!


 ――堂島は辺りを見渡し、舞園たちから少し離れて救急車を呼ぶ電話をする事にした。電話を片手に、再度舞園達に視点を戻す。


 あれ、舞園が起き上がっている。意識が戻ったのか?


 ――急いで舞園達の傍へ戻ろうと小走りをする。堂島は元々隠れていた場所に近づくとある異変に気付いた。


「人影が消えてる」


 ちょっと待てよ。もしあれが戦場むくろなのだとしたら、舞園たちが無防備に戦場宅にいるのは危険過ぎやしないか?


 フラッシュバック

――――――――――――――――――――――――――――――

 今朝の教室内にて


「ちょっとあんた達、どういうつもりよ!」


「何言ってんのよ石川さんよー。俺たちは別にクラスメイトをいじめたくてこんな事してるんじゃないッスよ?」


「戦場むくろさんが、まだ貞子の妹なんて判明してるわけじゃないじゃない!」


 フラッシュバック終了

――――――――――――――――――――――――――――――

 場面戻る(堂島快跳)


 もし本当に、戦場貞子の双子の妹だったらどうするんだよ。なぁ石川さん。


 そのまま監視を続ける事にした堂島。もっと舞園たちの会話が聞き取りやすい場所まで近づく。舞園はどうやら大丈夫そうだ。


 場面移動

――――――――――――――――――――――――――――――

 3人に移る(舞園創)以下3人の会話。


「御免みんな。もう大丈夫だからさ」


「全く信じらんない。あんまり人を心配掛けさせないでよね!」


「ナツ、そんな言い方はあんまりですよ」


「良いんだ、実際そうだし。悪かったな」


「もう平気なのね!?」


「おうよ。それより僕は何時間倒れてたんだ?」


「大した時間は経ってないわ。〝2~3分〟程度じゃない?」


「そうですね」


 僕は安心していた。ナツとは長い付き合いだからこそこういう時にズバッと思ったことを言ってくれているんだ。変に気遣われるよりかはよっぽど心が柔らぐ。そしてそれはナツ自身にだって分かっている事なんだろうな。だからこそ叱ってくれる。そういう意味では、これが僕に対してのナツの全力の気遣い方になるわけで……そんなナツに僕は救われているんだ。――って、あれ。


「うわああぁ!!」


「今度はなに!?」


「ド、ドアが開いてる!」


「あっ、開けっ放しにしちゃってた」


「おい!」


「もう帰りませんか?――何だか怖くなってきました」


「そうねー。ハジメの体調も気掛かりだし、今日のところは帰ろうか!」


「――お、おい見てみろよ!」


「え?」


 創が二人を引き止める。戦場むくろ宅の中を覗いてみると何とも荒れている様子。その荒れっぷりを見てとても普通の家では無いのは間違いないが……それより彼らは先程人の足音を確かに聞いていた。中の様子を覗いてしまった創が思わず再度訪ねてみる。


「――すいませーん?」


「さっき足音がしたわよね。むくろさんかしら?」


「…………」


 足音は確かに聞こえた。それに何だこの荒れ様は!――僕らはこのままこの自宅を後にして良いのか!?


「――反応ないのでもう帰りましょうよ」


「――そうね、ハジメ?」


「――そうだな」


 彼らは、戦場自宅を後にして改めて伺うことにした。でも、この直後にハッキリ脳裏に焼きついたある女の声。ドアを閉める際に聞こえた女のかすれた小さな声と……ギギギギ……ドアを閉め……


「――ううう」


 女性の声。


「えっ!?」


「――ん? どうしたの?」


「静かに!――今誰かの声がした!」


「中に人は恐らくいるわよ。だって足音聞いたじゃない。でも出てこないんだからしょうがないわよ」


「――ん、ああ、確かにそうだな」


 しばらくドアを開けたまま玄関の外で立ち尽くしていた創。


「ほら、もう帰るわよ?」


 ナツと高橋は既に玄関を後にしていた。――何か頭の中で引っ掛かっていたものを残したまま、ドアを閉めようとしたその時!


『――けて…………』


「え!?」


『――助けて…………』


「助けぇうわあ!!」


 この状況の不気味さ余りに慌ててドアを閉める創。酷く息が荒れている様子。――むくろ宅の庭の外に居たナツが創を呼ぶ。


「良い加減にしなさいよー!」


 その場から逃げるようにして二人の元へと走る創。


「あんたが此処で倒れた以上は、小刻みに休憩を挟むわよ、良いわね?」


「…………」


「ちょっとハジメ、聞いてるの!」


「――はい?……え?……ああ」


「舞園くん本当に大丈夫ですか?」


「――ん、うん。ダイジョーブ」


 彼らは戦場むくろ宅を後にした。玄関前でもう一度振り向いた創。山奥でどっしり構える黒い家。


 風が鳴り響く。その風の音は、まるであの不気味な黒い家を更に不気味に見せようと煽るかのような音。頭が真っ白なまま黒い家を見ている創。女の人の声が聞こえたような気がするけど、それは間違いなのだろうと自分に言い聞かせながら。


 ――あれ、二階の窓。えっと、あれ。確か意識が遠のく際にえっと、何だっけ?


 何か大事な事を忘れてしまっているような、女の声とは別の〝何か〟が引っ掛かるようだ。思い出せないと諦めた創は、黒い家から目線を離した。


 女の声の正体とは!?

 ※後書き

 重要人物達はこの物語を大きく左右していきます。ややこしくなるかと思いますので、後に重要人物一覧で詳しくまとめられていきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ