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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「黒い家と殺人事件」
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第六話 『 黒い家 』

 向かう先は……


 創はナツと高橋と共に青葉先生の情報を頼りに戦場むくろの自宅へ向かっていた。途中小腹が空いたのでコンビニへ寄る3人。創がコンビニに行った際に必ずと言っていいほどみかんの入ったみかんゼリーを購入してい

る。その他にサンドイッチと冷えたココアを購入した。


 さらに時間を進めて


「この辺りだよね?」


「――だと思うんだけど」


 青葉先生から聞いた戦場むくろの住所付近にいた3人。近くまでは来ているが、戦場むくろの自宅を見つけられずにいる。――とそこへ通りかかった老夫婦。創は慣れない敬語で老夫婦に戦場むくろの自宅の場所を尋ねてみることにした。


「すみません!――ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど、この辺に

戦場さん家がどこにあるのか知りませんか?」


「戦場さん?――はて、どちらさんで?」


「ばあさん、戦場家といえばあのウチじゃよ」


「あのウチ?」


「子供を残してどこかへ行ってしまわれたあの夫婦の事じゃろう……」


「――ああ」


 両親がどこかへ行った?


「お前さんらはあの家に何しに行く気じゃ。悪いことは言わん、あのウチには近寄るでない」


 え、何、その何か気になる言い方は。


「それはどういう事なんですか?」


「わしは助言をしたぞ!――後で憎まれ役を買われても御免じゃからな!」


「な、何を言ってるんですか」


「戦場さんの自宅の場所は分かるのね?」


「ああ」


「どういうつもりか知らないけど私達は行くわよ!」


 キッパリ言い切るナツ。


「あ、あの戦場さん一家に何かあったんですか?」


「…………」


「あの?」


「………………」


「何も答えたくないみたいね。良いわ、他を探しましょうよ」


「ちょっとナツ!――す、すみません……」


「――そこの長い階段を登った先じゃ」


 おじいさんがゆび指す方向を見るとそこには階段があった。見たところ山へと続く階段のようだが……この先に戦場むくろの家があるのか?


「わしから答えられるのはそれだけじゃ。ばあさん行くぞ!」


 老夫婦はそのまま去ってしまう。


「あ、ありがとうございました!」


 既に戦場むくろの自宅があると思われる道へ続く階段の前に立っている高橋。


「行くんですよね?」


「ああ」


 頷く高橋。そして長い階段を登って行く3人。道中登り坂になっていて一応道という道はあったが、進めば進むほどに辺りは森で彼らは山登りをしている気分になっていた。


「本当にこんな所に戦場さんのおうちがあるんでしょうか?」


「進めば進むほどそれは疑問視されるが、今は手掛かりがないんだ」


「そうですよね」


「こらー二人とも、歩くのおそーい!――早く来なさいよ!」


 創と高橋のペースに合わせる事無く先に進んでいた体力自慢の石川ナツ。


 あいつの体力少し分けてくれよ……


 更に数分後…


「ハアハア……まだ着かないのか?……この坂、どこまで続いてるんだ?」


 ふと高橋に気をやると、創以上に息を切らしていた。


「大丈夫か高橋、そんなに息切らして……」


「ハアハア……だ、大丈夫です!」


「無理すんな、すんごいキツそうだぞ。よし、此処で休憩にしよう」


「ハア……ハアハア……」


「おーいナツ!?」


 大声でナツを呼ぶ創……けれどもナツの返事はない。


「もうあのバカ、一人で勝手に何処まで行ってんだよ!」


「あ、あの、私は大丈夫ですから」


「別に急いでるわけじゃないんだし僕も疲れた」


「え、はい」


「ナツ、僕たちここで休憩するからなー!――聞こえたら返事をしろ!」


 ――やはりナツからの返事はない。


「もう良い」


 その場に腰を下ろす創と高橋。コンビニで買ってきたサンドイッチと冷えたココアとみかんゼリーと取り出しサンドイッチから頬張る創。サンドイッチをじっと見つめる高橋……その視線が気まずく感じた創は思わず……

「良かったら1個要る?」


「えええぇ!?」


「何だそのわざとらしい驚き方は」


「――なっ私が?」


「若手のリアクション芸人がわざと驚いたような感じだったぞ」


「――よく分かりません」


「要らないのね、分かった」


「え、い、いや」


「…………」


「…………」


「――なあ高橋、これからは僕とナツには遠慮すんなよ。だって僕たちもう友達だろう?」


「――じ、じゃあお言葉に甘えて1個貰おうかな」


「はいよ」


 約15分ほど休憩していたその頃。遠くから〝女〟が創らを呼ぶ。


「こらーーっハジメ、高ちゃん!――まだそんな所にいたの!?」


「――あの野郎……うるせー!――僕らはお前と違って此処を楽々登る体力は持ち合わせていないんだよ!」


 ナツが創と高橋の元へと駆け寄る。


「もう、せっかく戦場むくろの家を見つけたのにまだこんな所で休むつもり!?」


「何だと!――あいつの家を見つけたのか?」


「うん!」


 その言葉を聞き急に体力が回復した気がする!――やっぱり気持ちで負けてたのかな……


「高橋、ナツが戦場んちを見つけたってさ!――行けるか?」


「お、お、んおう!」


「え、おう?」


「――よし行こう。」


 今の高橋の返事は、何かを意識して何かを頑張った結果起こった何かであろう。直後の高橋の赤面した姿を見て2人は何かを感じ取っていた。ナツに先導されて山奥をひたすらに進む3人、そしてついに到着する。


「――此処が戦場むくろの家……」


 家の玄関の入り口に確かに【戦場】と表記された表札があった。その家は一軒家で2階建てになっており、見た目の印象はただただ黒かった。庭は荒れていて、花壇の花はどれも枯れていた。以下3人の会話。


「な、なぁ?――率直な感想を言っても良いか?」


「何よ」


「不気味過ぎやしないかこのウチ!!」


「ちょっと、聞こえたらどうすんのよ!」


「だってよお……」


「――でもこんな様子じゃ、今でも人が住んでいるとは思えない感じね」


「ああ。庭の手入れも長いことされていないみたいだな」


「うん」


「でも……此処まで来たら行くしかないよな?」


「別に〝お化け〟が出るわけじゃあるまいし、行くだけ行ってみましょ」


「ひっお化け!?」


「――ん?」


 様子がおかしい高橋。お化けのキーワードに引っ掛かったようだが。


「ちょ、ちょっとナツ、お化けとか怖い事言わないでよ!」


「高ちゃん?」


「わ、私、お化けとかそういうの駄目なんです!……い、言われてみればこのおうちにお化けが居そう!」


「ちょっ高橋、一旦落ち着こうか?」


「――ふむ、ナツよ……これで分かったよな?」


「高ちゃんにお化けの話は禁句ね。オーケー了解したわ」


「オーケーよーしよし高橋、もう大丈夫だ。ナツは此処にはお化けなんて居ないんだよって話していたんだよ。慌てないで」


「――ほ、本当?」


「本当さ!――あの霊感の強いナツがそう言ってるんだ!」


「――は?」


「そうだよな、ナツ!?」


 ここは僕に〝合わせろ〟と目で合図する創。聞いてないわよと言わんばかりの表情を浮かべるナツ。


「――そ、そそうなんだー。私って実は霊感あってさー、確かに此処にはお化けの気配ゼロね!――霊らしき物質的なあれやこれやは全く感じないわ」


「――ふぅ」


 少し落ち着いた様子の高橋。――意外と単純な奴なんだな


 ――そして、創たちは恐る恐る戦場むくろ宅へと足を踏み入れた。近づく最中にヒソヒソ話が繰り広げられる。


「ハジメ、この借りはきっちり返してもらうからね」


「悪かったって。おかげで高橋は落ち着いたんだから結果オーライだろ?」


「だからってなんで私が霊感強いことになってるのよ!」


 高橋が二人の異変を察知したのか、首が折れるんじゃないかと思う速さで振り返る。慌ててヒソヒソ話をやめる2人。


 既に戦場むくろ宅玄関前。意を決してインターフォンへと手を伸ばす創、その時!


 プルルルルルルルルルル……


 何処かから電話の着信音が鳴り響く。創達は、すぐに電話が鳴っているのに気付いた。耳をすますとそれはむくろ宅からの着信音みたいだ。


「電話鳴ってるね」


「ちょっと待ってみよう。電話中にインターフォンは失礼だよね」


 ――電話はしばらくして鳴り止んだ。留守なのかと思うくらい電話が鳴っていたけど……


「押すよ」


 頷く二人。創がインターフォンを押す。だがしかし!


「――反応ないね」


「もう一度押すわよ!」


 今度はナツがインターホンを押した。――が、やはり反応はないようだ。


「留守のようですね」


「え~、此処まで来てまさかの留守!?」


 と創が言っている最中に、ナツが突然思わぬ行動にでる。ガチャッという音が聞こえ、何故か戦場むくろの自宅のドアが口を開く。いや、ナツの手によって開けられたのだ!


「開いてるわよ?」


「おい、何してんだ!」


「勝手に開けたら駄目ですよ~!」


「もしかしたら入浴中とかで気付いてないだけかもしれないじゃない」


 ――なんて言いながらナツは迷うことなくそのドアを全開する。ズズズズ……不安を仰ぐ重た~い音が3人の聴覚に響いていく。そのまま黒い家の中の様子を確認してみる。――このタイミングで一人の異変。息が荒い創。どこか様子がおかしい。と次の瞬間!――バタバタバタバタバ!……3人が顔を見合わせる。


「今の足音?」


「――みたいですね」


「すみませーん、希望ヶ丘学園のA組の生徒の者ですけど、どなたかいらっしゃいませんかー!?」


 ――反応は無い。


「すみませーーん!?」


 創の様子がおかしい。息が荒くて苦しそうな表情を浮かべている。その上顔色が悪く、膝に手を当ててしまっている。


「――ん、舞園くん?」


「あれ、どうしたのハジメ?」


「――悪い。ちょっと気分が悪くなってきた……」


「ええ!?」


 とその時!――ダッダッダッ!……また足音だ。今のは3人共確実に聞こえた。


「――誰かいるのは間違いないみたいね」


「ちょっと舞園くん!」


「…………」

 意識が薄れてゆくこの感覚……これってまさか、またあの記憶障害が発病するのか?――待って、待ってくれ……此処で二人に迷惑を掛けるわけにはいかない……えっあ、あれ二階の窓……あの影は人の顔?……人の……


「ナ、ナヅ!……う、うべを見ぼ!」


 最後の力を振り絞って、ナツに2階の窓にある人影の存在を伝える創。その直後に意識を失ってしまう。体の力が一気に抜けていくような感覚、ナツが創に何か訴えようとしているのが見て分かるが、既に何を喋っているのか分からない状態。そのまま地面に倒れこんでしまう。


 ナツ、人影に気付けるか!?

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