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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「黒い家と殺人事件」
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第五話 『 戦場むくろ 』

 創らが教室で見た光景は!?


 僕らが教室に入って目にした光景……それはとても信じられるものではなかった。赤いペンキが床一面に広がっていて、一人の生徒の机に落書きされた文字は以下の内容。


 『人殺しの妹!――人殺しの妹!――人殺しの家族!――しね!――消えろ!』


その机の生徒は、新入生にしてただの一度も学校に登校していない女子生徒のものであった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 戦場イクサバ むくろ(15)

 女性 160cm 48kg

 希望ヶ丘学園新入生にして不登校生徒

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「戦場……」


 戦場貞子と苗字が一緒の戦場むくろ。なるほど。彼女が戦場貞子の双子の妹と噂されている張本人ってわけか。


「ちょっとあんたたち、どういうつもりよ!」


 ナツが教室に入る。


「この机って戦場さんの机じゃない! どういうことよ!」


 黙り込んでいる1Aのクラスメイト達。


「ねえ、答えて!」


「やめろナツ」


「だってっこんなのあんまりじゃない!」


 何も語ろうとしないA組の生徒達。その時だった。一人の男が鼻で笑う。以下【堂島】とナツの会話より。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 堂島ドウジマ 快跳カイト(15)

 男性 176cm 63kg

 運動神経抜群でバスケット部員 ツンツン頭が特徴

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「何言ってんのよ石川さんよー。俺たちは別にクラスメイトをいじめたくてこんな事してるんじゃないッスよ?」


「何よアンタ」


「――お前だって少しは思うところがあるんだろう?」


「ど、どういう事よ」


「ふっまあいいや。とにかくだ、戦場むくろが事件の容疑にかけられているこの状況下に置いては、あの女には学校に来てもらっては困るわけなんスよ」


「だからってこんなのあんまりだわ、片付けなさい!」


「オイオイ、無茶を言っちゃいけねぇ。これは俺たち自身、自分の身を守るためにやっていることだ。何もお前に……」


「自分を守るためですって?――違ってたらどうするのよ!」


「違ってたら?」


「戦場むくろさんがまだ貞子の妹なんて判明してるわけではないじゃない。それに……」


「仮に妹だったとしても有馬駅連続殺人事件に関係ないかもしれない……とでも言いたいんだろう?」


「そうよ!」


「でもよー、もし関係してたらどうするんだ?……もしこの学園の生徒が何らかの事件に巻き込まれたりしてたらどうするんだ?……答えなんて誰にも分からない。だからこうして小さな可能性から消していく必要があるんスよ」


「そ、そんな事言い出したらキリがなくなるじゃない!」


「だー、うるせえな!――だったら事件の現場にいた団体の二名の逃亡者はどこにいるか答えられるんスか?」


「そういう事は言っていない!」


「こっちにだって小さい可能性とはいえ、ある程度調べをつけてるんスよ」


「え?」


「メディアが発表した戦場貞子の情報だ!」


 不意に堂島の手から一枚の紙を渡される。その内容は以下の通り。


 戦場貞子(15)女性 168cm 43kg

 赤いマニキュアをしていて爪は長い。背中には刺青が彫られている。青柄はコンパスと定規で三角マークの形をしていて、その中央上に人の目があるものだった。有馬区在住で彼女には双子の妹と二人で暮らしている。職業は無職。団体組織の部下に当たる容疑者達は皆K中学の卒業生であることが判明している。


「K中学って【かしわ中学】?」


「そういう事。ここいらの近所の中学校でアルファベットの頭文字がKと言えばかしわ中学しかない。そんでもって戦場むくろもまた、かしわ中学の卒業生なんスよ」


 かしわ中学といえば僕の母校の中学の隣の学校だ。有馬区在住でK中学と言えば確かにかしわ中学しか無いはずだ。


 とそこへ割って入ってきたのは。


「どうでも良いけどさー、こんな事してむくろちゃんがもし学校へ来たらアオ達ヤバく無く無く無い!?」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 椎名シイナ アオイ(15)

 女性 164cm 47kg

 軽音楽部員 ど派手な格好とピンクと青色の髪色が特徴

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「どういう事ッスか、葵ちゃん」

「だってだってだってー!――こんな事したら、むくろちゃん怒ってアオ達を皆殺しにするパターンだってあるんじゃんじゃん?」


「ちょっと!」


「もーし堂ちんの言う通りーむくろちゃんが戦の貞子のふたっごの妹ならば、ならび?――こりゃアオ達やばいことしてるくないないばー!」


「それに」


 今度は低い声が口を挟んできた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 熊田クマダ 威之助イノスケ(16)

 男性 195cm 90kg

 あだ名は〝くまお〟巨大な体つきで大人しい性格

 後は謎に包まれている……

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「そもそも奴はこの学園にただの一度も登校すらしていない。こんな事するだけ無駄だと思うが」


 熊田の一言でA組の生徒達は、しばらく教室が沈黙になる。


 クラスメイトの連中……こいつらは何だ。くまおと呼ばれるその男。とても高校生とは思えない巨大な体格と落ち着きよう。それに自分を〝アオ〟と呼ぶこのチャラチャラ女、耳にピアスまでしてるじゃないか!あれは校則違反なんじゃないのか?……このツンツン頭の堂島。こいつはすっかり戦場むくろが戦場貞子の双子の妹だと決め付けているようだが……


「とにかく片付けるのよ、良いわね!?」


 ナツの問い掛けに答えるのは創。


「そうだな。どのみちこんなことしたのが青葉先生にバレたら怒られて片付けさせられるのがオチだし」


 と、その時。A組の教室に入るは青葉先生……


「な、何じゃこりゃああぁ!!」


 HRでは、ペンキを雑巾で拭き取り落書きの机は新しいのと取替え、反省会を開いた。それにしても戦場むくろという不登校人物。全てが謎に包まれた彼女を、とりあえずかばった事になった創とナツ。しかし創らは彼女の事を何も知らない。それは同時に疑うことも信じることも出来ないという事にもなる。


 創は悩んでいた。どうすれば良い。いっそ会いに行ってしまうか色々と悩んだ末に青葉先生に相談してみる事にした。


 放課後。創と高橋とナツの三人は職員室に居た。僕ら三人は戦場むくろに会いに行こうと決めていた。青葉先生に頼んでみたら何か方法が見つかるかもしれない。


「青葉先生……」


「私も戦場さんについては頭を悩ませているところでな。自宅に連絡しても電話に出ないんだ」


「僕たち戦場むくろの自宅へ行きたいです」


「…………」


「先生は危険だと言って僕たちを止めますか?」


「危険?――ああ、あの生徒達の間で騒がれている噂のことか。一理なくもない証言も耳に入ってきてな。色々と調べてはみたんだが、双子の姉についての情報は一切無かった」


「それじゃあ!」


「私は彼女の担任の先生だ。私は何よりも生徒を信じている。この希望ヶ丘学園の入試試験のときに面接があったろう?」


「はい」


「私は彼女の面接の際に面接官としてその場に居合わせていたのだよ」


 そうだよな。少し考えれば分かることだ。戦場むくろはこの学園の生徒。つまりこの学園の学園長や教師たちの中では戦場むくろと面識がある人もいるんだ!


「実は私の中で彼女はとても印象に残っているんだ。……彼女はとても優しい女の子でね。動物が好きなんだ。忘れもしない、それはね……」


 回想シーン

――――――――――――――――――――――――――――――

 希望ヶ丘学園面接日(戦場むくろ)


「次の方どうぞ」


「失礼します」


 面接室に入室する戦場むくろ。小さく頭を下げる。面接室には菊池学園長と青葉先生がいた。以下菊池学園長と戦場むくろの会話。


「どうぞ座って下さい」


「あ、あの……よろしくお願いします」


「はい宜しく。では、まずお名前からどうぞ」


「戦場むくろです」

 名前を言い終えると彼女はポケットからハンカチを取り出した。


「では戦場さん、この学園を志願した理由や動機を説明して下さい」


「はい。私が希望ヶ丘学園を志願した理由は、この学園で去年行われた【自然を大切にしよう計画】に大変興味をもっています」


「はい」


「…………」


「――もう少し具体的にお話を聞かせて貰って良いですか?」


「はい。その自然を大切にしよう計画には3つの活動をやられています。1つ目は有馬市からゴミをなくそう。それは日付けを指定して市民も一緒に参加出来て、指定された場所を市民と団結してゴミ拾いをする活動でした。その活動には私も1度参加したことがあります。色々な人たちと触れ合って綺麗になっていく街や道路をみてとても感激しました」


 少し時間を進めて


「ガタガタガタ……」


「戦場さん、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」


「は、はい。すみません。あの、お水を1杯頂けませんか?」


「お水?――えっと、青葉先生」


「はい」


 水を取りに面接室を出る青葉先生。とりあえず適当なコップに水道水を入れ面接室に戻る。


「はいお水」


「すみません」


 水の入ったコップに口を付けてゆっくりと喉に水を通す戦場むくろ。その時間約30秒間。その間一度も口からカップを離すことなく、ただ菊池学園長と青葉先生の目を見つめていた。まるで何か訴えているようにも見える。彼女の目を見た彼らは何かの暗示にかけられるような、そんな感覚で……


「ゴクッ……ゴクッ……」


「…………」


「すみません」


「続けていいかな?」


「はい」


「君は先程『命は全て等しく尊いもので動物もそれは例外では無い』と言っていたね」


「はい」


「でも私たちは食物連鎖の中心に立たされている生き物で、君としてはここでひとつ矛盾が生じるわけだ」


「私たち人間は!」


 !?――急に高らかと声をあげる戦場むくろ。


『食物連鎖の中心に立っているのではない、立たされているんだ!――だから私たちはひとつの答えを導く必要がある!』


 彼女は椅子から立ち上がった。


『私たち人間の在り方というのは、決して命を粗末にしてはならない。尊いこの世界を生き物を導く使命がある!』


 熱い演説だ。最初の印象とののギャップもあるのかなかなかの発言力が備わっている。不意に彼女は青葉達を見つめ、何故か左手と右手の人差し指と親指で三角の形をつくり、その三角の空間に左目を近づけながら見つめ直す。


「な、何をしている?」


「――おまじない」


「…………」


 小声で何かを言っている戦場むくろ……おまじない?


「学園長!」


「ん?」


 菊池学園長に目でやめさせるように合図を送る青葉先生。


「まあ、待ちなさい」


 その後、妙なおまじないを終えてから席に座り直す戦場むくろ。


 回想終了

――――――――――――――――――――――――――――――

 シーン戻る(舞園創)


「此処が戦場むくろさんの住所だ」


 戦場むくろの住所が書かれた履歴書をメモする創。


「先生、有難うございます!」


「さあ、行くわよ!」


「はい!」


 事件に関係あるとは思っていない、ただクラスメイトとして会いにいくだけだった。友達とは決して言えない、初対面なのだから……


 いざ、戦場むくろの自宅へ!

 ※後書き

 名前表記無しに変更したので、葵ちゃんの台詞が一部消えています。葵ちゃん御免!

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