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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
◆サイドストーリーⅢ
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1人目

 1人目、舞園マイゾノハジメ


 4年前の春。当時12歳の舞園創は、4年前に小学校を卒業し、新入生として通う彼の母校は横浜市立六ッ川中学校。六ッ川中には創の他に、創の幼馴染である石川ナツも通っていた。もう一人の創の幼馴染である亮介は、県内にある私立の中学に通うため、中学から創と亮介が会う事は無くなる。


 当時の創は今以上に暗い性格をしていて、髪の毛が長かった。幼い頃から記憶障害を抱えている創にとって、この先で待ち受けているであろう自分の未来に絶望して病むところまで病んでしまっている時期と言えようか。彼の周りにいる友達らは、そんな創にどうしてやる事も出来なかった。症状が出てしまえばどうにもならなくなるので、1日3回朝昼晩にメマリー錠10mg等の薬を使用している。


 ここでメマリーと呼ばれる薬について説明をしておく。


 メマリーとは、アルツハイマー型認知症の症状の進行を抑える効果がある薬。正式名称はメマンチンと言います。メマリー錠10mgの作用と効果について、脳内グルタミン酸受容体サブタイプのNMDA受容体チャネルの過剰な活性化を抑制することにより、細胞内への過剰なカルシウムイオンの流入を抑制し、神経細胞傷害や記憶・学習障害を抑制すると考えられています。通常、中等度および高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に用いられます。


 メマリーの主な副作用として、めまい、便秘、体重減少、頭痛、食欲不振、血圧上昇、転倒、浮腫などが挙げられます。


 ※ここからが重要

 このような場合には、使用をやめて、すぐに医師の診療を受けてください。

・筋肉が発作的に収縮する状態、麻痺など

・気を失う、失神、意識消失


 そして本日創の母校である小学校の卒業式中にて、薬の摂取1時間後に初めて起きてしまう意識消失。


 『えー皆さんもこれから中学校で新しいお友達が出来るかと思いますがくれぐれも……』


 ダレカの声が小さくなっていく。いや、違う。


「うッ!」


 突然襲われる目眩によって膝に手をあてる創。視界がボヤけ出してから周りの音が消えてしまう。何も聞こえない。いや、セミの鳴く音のような、床を擦らせる学校の机の音のような、高音が聞こえてくる。耳に伝わって来る音というよりは、脳内に直接音を鳴らされているような感覚で、数秒聞いているだけでも頭がおかしくなりそうだ。


 創の周りに居る生徒達がザワつく。創が意識を失う際に聞こえた最後の声。女性の声。幼馴染の女の子の声……石川ナツなのか?


 『ハジメちゃん!?』


 意識を失う。


――――――――――――――――――――――――――――――


 「――光が眩しい」

 視界の先――辺り一面に光が射し込んでくる感覚。――次第に見えてくる創の目の前に立つは〝幼馴染の女の子〟の記憶。


「あれ、お前何だよ?」


「ハジメちゃん?」


「――お前は何だよ?」


 次第に辺りの光が消えていくのが分かる。が、彼の記憶の次に映るものは青い景色――よく見ると此処は水の中のようだが。


「ん?――んんっ!」


 彼の視界がはっきりしたのと同時に、呼吸が出来ない事に気付く!――そのまま身体が他の世界へと飛ばされてしまう感覚。夢の中で記憶を整理しているのか!?


「――今度は何処だ?」


 夢の世界は続いている。次は学校の廊下へ飛ばされているようだ。記憶に映るこの廊下の景色は、彼の母校である小学校のようだ。


「夢なら覚めてくれ」


 成す術の無い彼は、とりあえず廊下をウロウロしてみた。


「此処は何処だ。最近見た場所のような。最近?――昨日?――今?」


「こっちにおいで」


「え、行けばいいのか?」


 彼の記憶に在る幼馴染の女の子の記憶。彼女は彼をこっちにおいでと呼んでいる。――彼女に言われた通り呼ばれた方を歩いていた道中で、見るからに怪しげなピンク色の大きな扉を見つける。どっしりと構えたその扉の周りに背景は無く、その存在感に圧倒されてしまう。その扉は【体育館入り口】と案内書きがされている。


「此処はえっと、体育館?」


「ごめんね、ハジメちゃん」


「え?」


「私、ハジメちゃんの事守ってあげられないかもしれない」


「お前、ナツだよな」


「うん。ごめんね。私が居なくなっても、泣いたりしたら駄目だよ?」


「居なくなったらって……どういう意味なんだ!?――僕はどうしちまったんだ!?」


「もうすぐあなたの記憶は書き換えられるわ。だけど忘れないでね。私の名前は【石川ナツ】。石 川 ナ ツ だからね……」


「教えてくれ。どうして僕には中学時代の記憶が無いんだ。堂島快跳の父親の和雄さんに会って色々と教えて貰った。僕が横峯悪魔と呼ばれる女と接触していた記憶を思い出して、和雄さんに全てを話したら、僕の過去に関する秘密が色々と分かったんだよ!――もしも彼の言っている事が本当なのだとしたら、僕は中学時代に記憶を落とされた事になる。僕が記憶の障害を抱えているのを良い事に、〝奴ら〟は記憶を置き換えられても気付く事は無いだろうと僕をターゲットに、記憶に関する謎の実験を行っていた」


「ハジメちゃん……」


「お、お前が僕の本当の記憶に残っている石川ナツであるならば……」


 言いかけてから寒気がした。

 口を開き直して更に寒気。

 言葉に出してしまって一気に身体の熱が上がる。


「僕が希望ヶ丘高校に入学してからずっと行動を共にしていた石川ナツは、一体誰なんだよ!?」


「ハジメちゃん……」


「そうだよ、そうなんだよ。ナツは僕の事を〝ハジメちゃん〟って呼んでいたんだ。なぁ、お前今何処に居るんだ!?」


「…………」


「僕の記憶に無い事は分からないって訳か!?――やっぱりお前は幻想なんだな!?」


「――黒のロングコートの男性に渡した写真……」


「え?」


「私と一緒に写っている写真を渡した筈よ。あの写真が真実を写しているわ。彼を訪ねてみて」


「…………」


 第十二話の道化の仮面が希望ヶ丘学園に侵入した際の出来事。突然の身体中の麻痺により、倒れこんでいる創と、創の様子を見ている赤西堅也。


「ま、までよ……ハアハア。な、ナズがろうがへででいっだきり……もどっでごない」


「…………」


「な、なにもどがば知らないが……ナズをだのまれてくれないかっ!……ハアハア」


 黒いロングコートの男は少しの間、不審者Aの逃走した窓の外を眺めて

考えている様子。


「だ、だのむッ!」


 残り少ない力を振り絞り、ズボンの後ろポケットから財布を取り出す。


「ぞのしゃしんにうずってる……ハアハア、だ、だのむ!」


「――え。これは……」


 黒いロングコートの男はその写真を受け取った。そして頷いてくれた!


 彼、舞園創の過去を振り返ってみた結果、何故か小学校の卒業式から3年以上経った希望ヶ丘学園の入学式へ移り変わってしまった。彼の記憶で繋がる過去に中学時代を過ごした思い出が無い。堂島和雄から何を聞いたのか、本編で語られていないが、どうやら舞園創の中学時代の記憶は何者かの手によって落とされてしまったらしく、奴らと呼ばれる連中の〝ある実験〟の被験者にされていたとの事。


 そうなれば、謎でしかなかった横峯悪魔と接触していた過去の記憶のフラッシュバックにも説明がつけられそうだが……第二十六話の中で創が見ていた夢は、過去に経験した真実であって、何かの実験中だったという事なのか。手術をしているように見えたが、あの時創が見た記憶は、もしかすると記憶を落とされる手術をされていたのかもしれない。非現実的な話ではあるが、これだと少しは辻褄が合いそうだ。


 創と創の記憶の隅に残っていた幼馴染である女の子、石川ナツの会話。


 『ハジメちゃん、次はいつ会えるか分からない。元気でね?』


「待てよ、待ってくれよ、こんなのおかしいだろう!?――僕は一体誰を信じたら良いんだ!?」


 背後から何者かの足音が聞こえてくる。


 『お前の記憶は此処に在る!』


 夢が終わる最後の瞬間に映った見知らぬ大男の記憶。創の記憶の中で確かに見えた謎の大男。


 「待ってくれ、まだ覚めないでくれ!!――頼む、教えてくれ、あんた達が僕の記憶の一部を知る人物なら、僕はどうして横峯悪魔の接触を拒まなかった!――僕の知る石川ナツは誰なんだ!?――どうして何度もあんたらが出てくる!――そこの大男は誰なんだ!?」


 何度も創の夢に現れた背後に立つ謎の大男が、今回初めて返答する。


 『わたしは……最愛の息子を……置き去りにしてしまった……哀れな男……』


「え?」


 『ハジメよ……お前を……守ってやれな……ds……』


「まさか、アンタ」


 自分の記憶を勝手に塗り替えられ、その真実に迫ろうとする中で接触した博打組と呼ばれる暗殺組織。彼らが関わってきているのは間違い無い。そして、彼らを裏で操る黒幕の存在、その通り名。ドン釈。


「僕の全てを奪った元凶を許さない。黒幕は、僕が叩き潰す!!」

 サイドストーリーⅢは以上になります。

 〝石川ナツ〟と〝石川奈津〟は別人の可能性が出てきました。

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