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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―プロローグ― 試験(序章)
4/43

第三話 『 高橋 』

 目覚めると!


 気がつくとそこは保健室。創の眠っていたベッドの横にナツが居る。二人の間で、しばらくの無言が続いた。入学式で見た謎のオンナ、その入学式を2回も経験した事、最後に気絶する際に目にした、変わり果てた謎のオンナの姿。どれも創の理解を超える出来事で、自分の記憶を信じられないでいた。何が真実でどこからが夢でどこまでが現実で。――自分の記憶の不信感が積もっていく。ナツに昨日の入学式は2回行われていないか聞いてみると、笑って返された後、真面目にそんな事は無かったと言っていた、


「入学式やったじゃんか」


 思わず小声で呟く。


 こんなことは初めてだ。いくら記憶障害を抱えているとはいえ、同じ経験を二度もするのは初めてだった。ひょっとして悪化してるってことなのか?――僕の症状の場合記憶に断片があって、失った記憶がこっからここまでと頭では理解できるんだが、これは失ったんじゃない……予言?――僕は、入学式にこうなることを予言していたのか?――分からない。分からない時は寝るに限る。


 幼い頃のように変に気にしてはならない。不意に僕の担当の病院の先生の言葉を思い出した。『君はなるべくストレスを抱えてはならない。そうでないと命に関わる事態にも成りかねん。』……寝るべきだ。


 でもあの変なオンナ、一体何者なんだ。もし僕が今日の出来事を予言していたのならあのオンナとは喋ってなかったってことになるよな?そういえば入学式の前に僕とナツに話しかけてくれた女子の名前を聞くの忘れてたな。


 しばらくして……創は夢を見ていた。でもその夢は〝夢の世界〟とは違い、見ている夢、立たされていない夢。つまりごく一般的な夢。〝夢の世界〟とは、まるでそこに自分が立たされているような感覚で、目覚めた後もその内容がハッキリと覚えている。それは必ず気絶して始まり気絶して終わるモノだった。創が今見ている夢は、入学式の前の出来事のようだ。


 目が覚めた。お父さんの声が聞こえた気がした。


「――えっと、此処は保健室だよな?」


 時間は午前11時59分。創は、ベッドから体を起こし、そのまま立ち上がる。


「もう入学式は終わったのか?」


 ナツと帰る約束をしているため、電話してみることにした。しかし電話を掛けても出ない。創はまだ1Aの教室の場所が分からないまま。保健室を出て1Aの教室を探すことにした。


 時間を進める

 此処が1年の階だよな。G組まであって教室は8つあるのか。――ん? ここは1F?……1E……1D……1A……1A!――あった。1Aの教室だ。でも、何でこんな真ん中にA組の教室があるんだろう。他の組はきちんとアルファベット順になってるのに、うーん。あの鬼みたいな顔が担任の先生だったな。今度会ったら聞いてみよう。


 教室には誰も居なかった。辺りを見回したがかすかな人の気配があるだけでその気配は何らおかしくない放課後に残っている生徒達が居残っているだけの気配。

 

 うーん、ナツからの連絡はまだか?――ってあれ、あいつは!


 昨日の入学式の日に話しかけてきてくれた女子生徒がいた。小柄で細身で銀髪で可愛らしい女子生徒。ここで仲良くならない手は無い!


「〝昨日〟はどうもな」


「いえ」


「えっと、1Aの教室はここで合ってるのかな?」


「はい。でもおかしいですね、1Aがこんな真ん中にあるなんて」


「うん、分かりずらいよね」


「はい。えっと……」


「――あっ僕の名前は舞園創、よろしく!」


「【高橋】です」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 高橋タカハシ ??

 女性 身長152cm 体重96kg?

 趣味はネットゲーム(GF) 長所は聞き上手

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「高橋さんは同じクラスなんだね?――良かったらアドレス交換しない?」


「え!」


「え、ごめん。いきなりだったね」


「御免なさい、そうじゃないんです」


「また懲りずに今度聞いてもいいかな?」


「そうじゃないんです。私、携帯持ってないんです」


「――あ、そうなの?」


「――御免なさい」


「う、ううん。そっか、それじゃ仕方ないね!」


 ――とその時だった。携帯電話が鳴る。ナツから着信。


「今何処に居るの?」


「今1Aの教室に居るよ。何だか変な所にあるんだな。A組の隣がD組なんてよ」


「1Aにいるのね?――今行くからそこで待ってなさい!」


 はい、電話は切れました。だから何であいつはいつも偉そうなんだよ!


「あ、ごめん。えっと高橋さんだっけ、もう少しで僕の友達というか悪友というか……みたいなとにかく変な人が此処に来て一緒に帰るんだけど、良かったら一緒に帰らない?」


「――えっと」


「心配しないでも大丈夫だよ。変な人って危ない人って意味じゃないから。言うならば僕の幼馴染の女子!」


「あの入学式前にいたあの人ですか?」


「そうそう!」


「良いんですか?……私なんかが二人に付き添って」


「良いんだよ、一緒に帰ろう!」


「は、はい!」


 間もなくして。ナツが小走りでこちらに向かって来る。


「ハアハアハ……あれ、あなたは朝のえっと」


「石橋さんだよ」


「高橋です!」


「ああ、そうそう!」


「高ちゃんね!--私の名前は石川ナツ。趣味はカラオケで特技は泳ぐこと!他にも漫画が好きでネットゲームなんかも任せて!」


「えっとあの……」


「好きな食べ物はケーキで、一番好きなのはレアチーズケーキかな。嫌いな食べ物はみそに限るラーメン!」


「ネットゲームって……な、何をやって」


「あのラーメンをみそとマッチングしようなんて誰が考えたのかしらね。ラーメンはやっぱり醤油でなきゃ」


「えっと、ラーメンですか?」


「そういえば見てみてーこのストラップ!」


「おいナツよ」


「ヴァンタにココア味が出たんだって、信じらんなーい!」


「ナツ!」


「こんな所に自動販売機、ヴァンタがあるよ!」


「レアチーズは私も好きです……」


「ナツってば!」


「――なに?」


「高橋が困ってるぞ」


「ら、ラーメンのミルクココア味が……えっと」


「…………」


 ナツと高橋の会話のテンポのその差二分の一以下。

 

 創ら3人は共に下校した。高橋は駅までは一緒だが反対方向のため駅でお別れをした。そして……創は迷っていた。彼の身に起きた出来事をナツに話すべきかどうか。


 ただ予言をしていたのかもしれない、なんて言ったら余計心配かけさせる事になるだろう。それに、彼自身何がなんだかわからない出来事だった訳で、ナツに相談するべきか否か悩んだその時間30分間。結局話す事が出来なかった。入学式を2回経験した事、謎のオンナの存在、言えなかった。


「花飾り、悪かったな」


「――あ~!――あんた、何で思い出させるのよ。どういうつもりよ!?」


「どういうつもりってそんな」


「何で亮介からもらった花飾りが壊れなきゃならないのよ!」


「それはだ、事故なわけで」


「うるさい!――ハジメとは今日限りで絶交だぁ!」


「おいおい」


 ナツは、僕の次に言うであろう〝ある台詞〟を待ってますと言わんばかりの表情。ニヤニヤしながら目で訴えかけてきた……悪ノリに答えるだけでこの件が収まるのなら、それに越したことは無いか。


「俺が悪かった。だから友達やめないで! って言わんせんなよ、幼き僕の名言を!」


 ナツと別れた後、寄り道することなく帰宅した創。帰宅するやいなやベッドに横になり今日一日の出来事を整理していた。やがて日が暮れて気付けば夜の11時。僕は楽しみにしていた映画『グリーンマイル』をテレビで観ていた。


「あの黒人、良い奴だったんだなぁ……」


 ちくしょう、何であんな天使みたいな奴が死ななきゃならないんだ。いくら黒人でデカイからってあんまりだ。映画の世界に完全に入り込んで涙していた。

 

 しばらくして無意識にテレビのチャンネルを変えている創。


「何か無いかな、何かこう……気を紛らわしてくれるもの」


 創が気晴らしに回していたチャンネルは〝あるニュース番組〟で止まる。


「こ、これって」


 『有馬駅連続殺人事件!――犯人は未だ逃亡中!!』


「――そんなっ有馬駅だって?――あ、ありまって有馬の事だよな。最寄の駅の事を言ってるんだよな!?」


 『一部では無差別殺人として容疑者の行方を緊急……』


「ちょっと待てよ」


 有馬駅といえば創とナツの自宅の最寄駅。自宅から最寄駅までの距離はそう遠くない。さっそく携帯を手に取ってお母さんに連絡をしている創。すぐに電話が繋がった。〝夜勤中〟のお母さんに、ニュースの内容をそのまま伝え気を付けるように言って切った。こんなに不安な事はない。有馬駅なんてここから歩いて数分で着くような距離だ。


「次にナツだ。出ろ、出ろ!」


 ナツに電話。――だが電話になかなか出てくれないナツ。留守番電話に繋がる始末。現在時刻は午後11時24分。お風呂にでも入っているのか。それとも……


「ナツめ。何で電話に出ない。こうなったら自宅だ。夜遅いかもだが仕方が無い」


 ナツの自宅に電話すると、応答したのはナツの母親だった。

「はい、石川です」


「あの、舞園創ですけどナツさんいらっしゃいますか?」

 通話が繋がってから数秒、誰かのキャッチ。


「えっキャッチ?」


 ナツから着信。


「ごめんなさい。ナツさんから電話きたので大丈夫です!」


 ナツの母親の電話を一方的に切ってナツの着信に応答しようとしたが、通話ボタンを押しかけたところで通話が切れる。


「あ、あれ切れた、くそっもう一回!」


 再度創から電話をかける。次の電話はすぐに出てくれた。


「ナツ!」


「ハジメ!――亮介が、亮介が!!」


「亮介?――おい、おいナツ、どうした!――今自宅に居るんじゃないのか?」


「いや!」


「おいナツ、ナツ!? 今とんでもないニュースを見たんだ!――っておい返事をしろ、ナツ?」


「…………」


 携帯の画面を見直す創。だが通話は切れてはいない。


「おいナツ、頼むから答えてくれ!――お前は今何処にいて亮介がどうしたんだ?」


 ――この直後に聞いたナツの言葉がとても信じられるものではなかった。とても信じたくない悪夢のような内容を聞かされる。


『――私は今……有馬駅にいて……亮介が……刺された……』


 今思えばこうなる事を事前に知っていたような気がする創。起こるべくして起こった出来事にさえ動揺を隠せない。彼自身本当に弱い人間なんだろうと痛感してしまう出来事だった。


 早くも事件!?

 ★プロローグは以上となります。重要人物生存者残り30人。

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