第二十七話 『 欠席 』
三日ぶりの学園では
場所は希望ヶ丘学園。道化の仮面侵入事件により、臨時休校という対策を打った希望ヶ丘学園は本日より学業を再開される。学園の生徒の間では2名の道化の仮面の話題でもちきり。
登校道中にて様子のおかしい人物が二人。希望ヶ丘学園1A生徒の高橋と椎名葵だ。どういう巡り合わせか、高橋と葵が一緒に登校している。
「タヒタヒタヒタヒたひ?」
辺りを警戒しているのだろうか、前後左右の様子を見回しながらボソボソと怪しい言動を呟いている葵、その声は震えている。対する高橋は無言で前だけを向いて歩き続ける。
葵は何かに警戒しているのだろうか。希望ヶ丘学園が見えた所で全力疾走する!――高橋も続けて全力疾走。ひょっとしたら、彼女らもこの三日間の間に博打組に襲われていたのだろうか。
全力疾走したまま1Aの教室へ入室する二人。教室へ入るや否や大声で独り言を発する葵。
「タヒらなかったー!」
『何事だ』と言った表情だろうか。既に教室に居た生徒達が一斉に振り向く。
「あ、ABCDEEEEEからのAの諸君!――何も無いでござるざますですますガス爆発★」
葵を見た生徒達は『いつもの事か』と言った表情を見せ、視線を戻していく。それにしても葵の今日の服装。ミニスカートにも程があるだろうと言う位の激ミニなのだが。ここまで来るとパンチラなんて気にしないレベルに達しているのか、あるいはよっぽど脚に自信でもあるのだろうか。
今まで登場してきた重要人物らは葵と高橋を除くと教室内にダレも居ないみたいだ。
「ハジメ君……」
思わず創の名前を小声で呟く高橋。創の机を離れて自分の机に座る高橋にぴったりくっついて来る葵。以下高橋と葵の会話。
「〝バシ高ちゃん〟……し、心配しないで大丈夫ッスよ。〝園君〟も〝なっさん〟も授業までには来てくれるに百億ベリー賭けても良い位平気っす!」
「うん……」
「もし二人が来ないようならば?――ならび?――二人の連絡先を知ってそうな優ヒューマンが居ないか聞いて回ろう踊ろうピーしよう★ホワッツ!?」
二人の三日間を振り返ってみる。やはり想像通りのようだ。
三日前に遡る。
銃声を聞いて引き返す高橋。石川ナツが道化の仮面の不審者に追われている。二人を追いかけようとするがとても追いつけるスピードではなかった。そんな状況で出会うは戦場むくろの自宅の道を教えてくれた老夫婦。高橋の片手に持つは警察との通話が繋がったままの携帯電話。
警察に事情を話した高橋の話を聞いていたおじいさんは『わしの家に来なさい』と言ってくれる。その後高橋は、その老夫婦の家にかくまって貰っていた。
老夫婦の家は老夫婦とその娘と孫との四人で暮らしている。先ほど再登場した重要人物の一人、椎名葵が老夫婦の孫という訳だ。椎名葵には父親が居ない。
老夫婦の家で1日お世話になっている間に訪れた警察に改めて細かく事情を話した。後に椎名葵が帰宅。事情を知った葵が高橋に一晩だけ此処に泊まるよう勧められ、二人は1日同じ屋根の下で過ごす。
後日、お世話になった老夫婦にお礼をしたいと思い、近所のスーパーに買出しに出掛けた高橋とそれに付き合う葵。その道中にて黒の車に乗っていた何者かに襲われてしまう。
スーパー道中、高橋と葵の前に停まる一台の黒の車。車から男4人が一斉に降りてくる。何も言わずに高橋と葵の腕を掴んで車に無理やり乗せようとしてくる。それに抵抗する二人。そこである異変に気付く男4人。彼らの元へ走って来るのは警察数名。黒のスーツを着た男4人は既に包囲されていた。
拳銃を構える警察達に対し、抵抗の意思は無いと言って両手を挙げる男ら。そう、高橋と葵は警察の監視下で動いていたのだ。
これらの出来事により、高橋を狙う敵が安易に手を出せなくなったのか、何の動きも見られなくなる。そして本日は希望ヶ丘学園登校日。二人を裏で守っている警察ら4人が陰で同行しているのだ。
敵に拉致られる際に被害に遭いそうになった椎名葵も交えた警察達と高橋、葵コンビが次なる敵の動きを警戒している。二人の耳に装着されたイヤホンのような物。これは警察との通信を受信するもの。二人は黙って警察の指示通りに動いていた。以下警察と高橋、葵のやり取り。
「二人とも、廊下を見てくれ。誰か知っている人物は居るかい?」
「いいえ、いま……せ」
「アオ居るおー★いまいまいまチョー気になってるプリティーな男が目の前に!――ねぇねぇ警察さん、今度彼をデートに誘いたいんだけど、何て声掛けたらネズミーランドまで扱ぎ付けられるかな!?――まな!?」
「葵ちゃん、真剣にやりなさい」
警察が葵の暴走を止めようと言葉を投げる。
「ムー。アオの嫌いな食べ物は〝パクチ〟です!」
とそこへ高橋が。
「葵ちゃん、あれ見て下さい」
「ムスカ?」
廊下を歩いていたのは菊池学園長。何だか思いつめた顔をしている。
「学園のおやっさんっすね。でも何で学園長がこんな所に?」
「分かりません」
学園長の横を歩いている女子生徒。黄緑髪ロングで、露出度高めの黄緑色の制服。希望ヶ丘学園の生徒では無いのか、着ている制服が全く違う彼女は今まで登場していない人物のようだが。高橋らの居るA組の教室を通り過ぎる菊池学園長と女子生徒、何処へ向かうのかと思えば一緒に一番端の教室に入る。
「あの教室……確か空き教室だった筈です」
希望ヶ丘学園の1年の教室のクラス配置は特殊な並び順になっている。アルファベット順に並んでいるのかと思えばそうでは無くて、端が空き教室になっている。空、1B、1C、1A、1D、1E、1F、1Gの順になって計8つの教室がある。
舞園達が序盤で言っていたが、本来1Aの教室であるべき場所が空き教室になっており、1Aが1Cの隣に入り込んでいる。今は使われていない教室内は鍵が閉まっている訳でも無い物置になっていた。昔使われていた学園祭等の行事道具がダンボールに包まれ保管されている。
そんな物置に希望ヶ丘学園長が一体何の用があるのだろうか。
「学園長、どうされたのですかね。それに学園長と一緒に居た女子生徒も物置に入室されました」
一応見たままを警察に報告する高橋。とそこへ葵が学園長と空き教室へ入って行った女子生徒について話す。
「黄緑ヘアーにあの派手なアクセサリー……アオあの子知ってる。あの子はこの学園の問題生徒で有名のギャル子。名前は確か……」
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重要人物 早乙女 薫子(17)
女性 身長153cm 体重40kg
黄緑髪ロングで露出度高めの黄緑色の制服
派手なアクセサリーが目立つ
希望ヶ丘学園の問題生徒で有名な【ギャル子】
重要人物27人目!
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とそこへ通信先の警察。
「下手に動くと厄介な事になるかもしれない。ここは大人しく1A教室内で待機していてくれ」
「はい」
「あなたがそこまで言うのなら……アオ……警察さんの言う事……」
「駄目です葵ちゃん、警察の人は〝ワルノリ〟苦手だって仰っていたでしょう」
「にゃ!?」
キーンコーンカーンコーン。9時をお知らせするチャイムが鳴る。結局登校して来なかった舞園創と石川ナツ。生徒達が自分の席に座る。辺りを見回している高橋が気付いた事。それは……
「あれ、堂島君も居ない。それに熊田君も……一度も話した事無いけど【早乙女一號】君もお休みなのかな」
5人も教室に姿を見せていないのに違和感を感じた高橋。先生が教室にやって来るが、現れたのは担任の青葉先生では無かった。生徒達がポカーンと先生を見つめている中で先生が一言。
「青葉先生は本日お休みです」
「え!?」
嫌な予感に予感を重ね、つい席を立って先生の言葉を聞き直してしまう高橋。
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ダレかの部屋
ダレかの部屋のベッドで眠っている桜雪。彼女も黒のスーツに襲われた被害者の一人。その途中で早乙女一號と出会っていた。結果的に彼に救われた形になったのだが、此処は彼の部屋なのだろうか。
桜雪の額に流れる汗。ひどく魘されているようだ。何者かが外へ出て行ったのか、家の玄関からドアを開け閉めする音が響いた。怖い夢でも見ているのか、一人になった桜雪が寝言を一言。
「オカアサン……ソレデモムナシイキブンナノ」
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神奈川留置場前
神奈川留置場前で誰かを待っている数名の黒スーツの男。そこへ留置場入り口から一人の男が出て来るのを確認した黒スーツらは。
「おい、未来さんが来やしたぞ」
笑顔を見せながら黒スーツの男らの元へゆっくり近づいて来る未来。彼らの前で一言。
「お待たせ」
未来が釈放!?
※後書き
第2章に予定していたお話をこちらのページに移動します。なので、第2章は非公開にしてあります。お話が脱出編に入ると同時にページ分けをしようと思っていたのですが、このページ1本でラストまで走ろうか迷っています。




