第二十四話 『 黒の追跡車 』
危機一髪!
古びた廃工場にて、現場で発見された堂島快跳の死体。発見者は赤西とマーカマ、そして舞園創!――警察に通報しようと電話を使おうとしたその時、何者かに身体の自由を奪ってしまう麻薬球を仕掛けられ、身動きがとれない3人は襲われてしまう。その人物はある組織の一員でコードネーム〝トランプ〟と呼ばれていた。最後の力を振り絞り、トランプから逃げてみせた創。何とか廃工場の外へ出た創。
「はあはあはあはあ……」
身体の痺れがまだ抜けていないみたいだ。体中に異常な量の汗を流している。
「どにがく……助けを呼ばないと……」
人を求めてひたすら歩き続ける創。廃工場には赤西とマーカマが取り残されたままだ。辺りに人の気配は無い。
「ダレガ、ダレガいまぜんがぁぁぁ!?」
痺れた体で必死に助けを求める創。しばらく道端を歩いていると一台の白の車がこちらに向かって来ているのが分かる。こんな人気の無い道端でこれを逃す手は無い。手を振りながら大声で助けを呼んでいる創。
その車は、創に気付いてくれたようだ。近づくにつれ、創の頭の中を過ぎる〝嫌な予感〟。もしもあの車に乗っている人物も、実は黒幕側の人間でしたなんて可能性は無いだろうか。こんな人気の無い廃工場が並んだ場所に車でやって来る人物……
「でも今はあの車に賭けるしか無い……はあはあ」
創の前に停まる白の車。
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桜雪
こちらも身体中の痺れにより身動きが取れない様子。そこへ現れたのは【早乙女一號】と名乗る男。以下桜雪と早乙女の会話。
「一体どうしちまったんだよ。なぁお姉さん!」
「お願い……私を何処かへはごんで……あいづらに見つかるまえに……」
「あいつら?――おい、今救急車呼……」
「駄目よ!――救急車は呼ばないで」
「そんな事言ってもよぉ、お姉さん立てるかい?」
「おんぶして」
「――はっこりゃ頭でも打ったんかな。悪いが救急車を呼ばさせて貰うからな」
「だめぇ!」
とその時であった。桜雪の前に停まる一台の車。中から黒いスーツを着た4人の男が出て来るや否や桜雪の腕を引っ張り、体ごと車に押し込もうとする。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「ちょっとアンタら!」
訳の分からない早乙女だが、桜雪の嫌がる姿を見て瞬時に止めに入ろうと試みるが、腹部を殴られる。
「ごっほぉ!」
そのまま床に倒れてしまう早乙女。
「いや、いや、いやぁぁぁ離して!!」
「大人しくしろ!」
無理矢理車に乗せられてしまう桜雪――次の瞬間!――パトカーが数台やって来た。恐らく道化の仮面の不審者を捕まえようと動いていた警察らだ。
「ちっサツか」
これはチャンスだと判断した早乙女が助けを呼ぼうと叫ぶ!
「助けてくれぇ!!――おい、こっちだ!」
黒いスーツの男4人はお互いがお互い目で合図し、ここは一旦退くべきだと判断したのか、抵抗する桜雪を残したまま車に乗って逃亡する。
「はあはあはあはあ……怪我は無いか」
「ううううぅぅぅ……」
叫び声を聞き、駆け付けた警察の乗るパトカーが桜雪らの前で停車する。
「どうしました!?」
「たった今黒い車にの……」
「何でもないわ」
何でも無いと言って警察達を追い払おうとする桜雪。
「お、おいお姉さん。何でも無い事ないだろう。たった今」
「何でも無いって言ってるの!――はあはあ……ごめんなさいおまわりさん。ただの痴話喧嘩だから気にしないで下さい」
「おい……」
理由は分からないが、今起きた出来事を隠して警察を追い払いたがる桜雪。そんな彼女の行動に理解が追い付かない早乙女。
「何を言ってんだい、たった今黒のスーツ着た連中にお……そ」
「良いがらアナタは黙ってなざい……」
「立つことさえままなら……な」
「おんぶして」
「――は?」
「早くおんぶ」
「…………」
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堂島和雄
全速力で車を走らせる堂島和雄。助手席に座る女も和雄を止めようとしない。彼らが追うのは前を走っている黒の車のようだ。急カーブをする両車のスキール音が響き渡る。状況は、逃走車と追跡車とのカーチェイスが繰り広げられている!――堂島和雄らの目的は不明。
「〝凛〟運転頼む」
「うん!」
そう言って凛にハンドルを掴ませる和雄は、無理矢理助手席に移動し、凛と呼ばれる女が運転をする。何をするかと思えば片手に拳銃を持っているではないか。窓を開け、上半身を乗り出す和雄が逃走する黒の車を狙い打ちする!――パアアアン!
銃声に驚いた黒の車は左右に動きながら車を最速で走らせる。スキール音が目立って響いている。容赦はしないと和雄の2発目!――パアアアン!――キュルルルルル!
次は外すまいと逃走車のタイヤを狙い撃ちする!――パアアアン!
タイヤに命中はしなかった。と急カーブをして細い路地に無理矢理入る逃走車!――和雄の乗る車も急カーブに対応する。逃走車の運転テクニックに引きを取らない凛。細い路地ではいつ人をひいてもおかしくない!
――とその時、逃走車から顔を出した謎の人物が何かを投げた!――これは……爆弾!?
和雄の集中が爆弾へ……銃弾を一発爆弾に狙い撃ち!――急ブレーキをする和雄の車。
「…………」
2人は無事のようだ。逃走車はそのまま先へ進んで行く。
「どうするの?」
凛が堂島和雄に問いかける。
「追いかけるんだ」
「オッケー」
通信機をポケットから取り出す和雄。
「俺だ。いや、捕まえていない。奴は天野のセンター街途中新状2号線へ逃亡中。ああ、それで良い。後ろは俺らがキープしてみせる。それと奴らは手榴弾を所持していた。警戒を怠るなよ」
2人の乗る車が走行する。
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舞園創
白の車の前で倒れている創。車の運転手の男が創を抱き抱えて、車の後部座席で横にさせる。
「しっかりしろ!」
男の正体は分からないが、見る限りでは黒幕サイドの人間では無さそうだ。状況は、白の車を停めた直後に意識がもうろうとしていた創が気絶して倒れてしまっている。
「…………」
創の額に手をあてる男。
「何て熱だ」
電話を片手に救急隊員を呼ぶ男。
「ああ、すぐに来てくれ!」
通話を切る男。
「心配するな少年よ。すぐに助けが来てくれるからなー」
男の自前のタオルで創の額の汗を拭き取ってあげる何とも親切な男。そこで〝ある音〟が聞こえて後ろを振り返る男。
「車……」
黒の車がこちらに向かって走って来る。創の靴に染み付いている血に気付いていた男は、嫌な予感がして慌てて車に乗り込み走行する。ミラーで黒の車を確認しながら走行を続ける男。
「…………」
パアアアアン!――銃声が響く!
「ぬおっ!?」
慌てて後ろを確認する。黒の車から乗り出している謎の人物の右手には拳銃が見える。
「クソッ!」
状況を飲み込めないまま、全速で走行する男とそれを追う黒の車の追跡車!――狙いは気絶してしまっている舞園創であろうか。追跡車が少しずつ距離を詰めていく絶体絶命の大ピンチ!
逃げ切れるか!?




