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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅡ― 「監視者と道化仮面」
24/43

第十九話 『 恐怖の廃工場 』


 ナツと高橋の身になにが!?


 マーカマと停車したパトカー内で揉めていた創。マーカマは創をこのまま安全な場所へ避難させるつもりだろう。それに対し、戦場むくろの自宅付近へ引き返すようにと必死に訴える創。状況的に創のワガママは聞いてくれないマーカマ。


 大切な友人が、危険な目に遭ってるかもしれないというのに安全な所で非難しろっていうのか?……僕はどうなっても良い。だから行かせてくれ!


「マーカマさん頼むよ!――さっきの路瓶さんの話しが本当なら、2人は危険な目に遭ってるかもしれないんだ!」


「何度言っても無駄よ」


 創の幼馴染のナツと、クラスメイトの高橋がまだ戦場むくろ自宅周辺にいると思われ、そこに例の道化の仮面の不審者が人質として捕らえていた人物と路瓶を置いてまで探しているものがあるらしいが。


 路瓶はさっきの電話で不審者の目的は〝アレ〟を捕まえる事だと言ってい

た。だけど、それには創らが戦場むくろの自宅周辺に居ることが大前提らしい。ナツか高橋を捕まえることで不審者の目的が果たされるとでも言うのか。


 道化の仮面の男!――僕はちゃんと聞いていたぞ。お前はあの時謎の通信相手に連絡中に、僕の目の前で気になる〝キーワード〟を喋ってたよな!


 フラッシュバック

――――――――――――――――――――――――――――――

 第十一話・昨日の放課後


「――ハ……ハ……な、なぎものだあ、おまげぇは!?」


 創の前に突然現れたピエロの仮面の不審者Aは、会議室に入室するや否やドアを閉め鍵を掛けた。その不審者Aは右手に拳銃を所持。右足は大量出血をしていた。左手に通信機を持って何者かと会話を始めたのだった。


『――ああ、見つけたよ。間違いない。【人造枠】だ』


「………………」

 高橋はまだ意識を取り戻せないでいる。


「ぐっぐそ、何なんだ僕ば、どうしじまっだんだ!?――お、おいだがばし、だがばし!!」


「…………」


「同室に希望ヶ丘の男子生徒もいる。こいつはどうすれば良い?」


 不審者Aは、右足を引きずりながら創の元へ近づく。


「――了解」


 通信相手に何かを了解した不審者A。


「何なんだおべぇば! ぼぐだちになにが用があぶのが!?」


「貴様に用など無い。――悪く思うな」


 不審者Aは、右手に所持していた拳銃を創に向ける。


 フラッシュバック終了

――――――――――――――――――――――――――――――

 場面戻る


 その直後に黒いロングコートの男が鍵を開けて会議室に入ってきた。道化の仮面は、通信先の相手に黒コートの男の事を〝例の男〟と呼んでいたが、創が見て感じた印象といえば、例の男が現れる事態は奴らにとって都合の悪い事のように感じていた。黒いロングコートの男から逃げるようにして会議室の窓から出て行ったような。


「マーカマさんは知ってるのか?」


「え?」


『人造枠って何なんだ!?」


「!?」


 創の意外な質問に驚いた表情をしているマーカマ。彼の反応を観察しながらもう一押しする創。


「道化の仮面の男は高橋のことを人造枠と呼んでいた!――奴らの狙いは高橋なんじゃないのか?」


「――っ!」


「もし知っている事があれば教えてほしい!」


「ま、舞園ボーヤそれ本当に言っているの?」


「――何だよ、知ってんのか?」


 ――って落ち着け舞園創。怒りと不安が入り混じって興奮状態になってるんだろうが、此処でマーカマさんに当たっても仕方ないのだろう?……で、でもマーカマさんのあのメモ帳の内容にはッ!


「マーカマさんのメモ帳を見た……ました」


「それよりボウヤ!?」


 創の肩を突然強く握り締めるマーカマ!


「それは本当なのね、本当に奴らは高橋ガールの事を人造枠と呼んでいたのね!?」


「え、ええ。人造枠について何か知ってるの……んですか?」


「高橋ガールを狙う奴等が、人質として捕らえていたクソビンにみすみす情報を流されたってわけね!」


「え?」


「あたしたちが今向かおうとしてた場所は、奴等のアジトである可能性が極めて高いという訳よ★」


「路瓶さんの特定先がですか?」


「そういう事!――罠とかカモフラージュなのかもしれないけれども、これはひょっとしてひょっとするかもしれない!」


「ま、待って下さい。僕は引き返してほしいんです。このまま2人を放っておくなんて心配で居ても立ってもいられません!」


「舞園ボーヤが2人の元へ向かった所で何が出来るのかしら?」


「…………」


「それよりもこの場合は奴等の箱を探るべきだと思うわよ。可能性がゼロとは言い切れないからにはきちんと確認しておく必要があるわ。舞園ボーヤが道化の仮面の男に近づいたところで、事態が悪化するのは目に見えているもの」


「…………」


 創は何も言い返せなくなっていた。


 マーカマさんの言う通りだ。僕は心身共に弱い人間だったんだよな。実際に不審者が学園に侵入した際にも、僕の身体は麻痺のような感覚になってしまい、体中動けないでいたんだ。だ、だけど……それでも僕は!


「ボウヤは何か勘違いしてるんじゃないかしら?」


「え?」


「戦場むくろの殺害事件を調査している警官達は皆、あたしが優秀と判断した直属のエリート部下の集団なのよ。クソビンに〝あんな話〟を聞かされた今、あたしのオカマ警官魂が黙って見過ごす事は無い」


 マーカマは通信機を取り出す。そして、戦場むくろ殺害事件の捜査中の警官、第一班、第三班、第四班に事の事情を話し、至急ナツと高橋の身柄を確保するよう命じる。敵は拳銃を所持していて右足は負傷。恐らく人造枠を回収することを目的としている。警官達もすでに本部から不審者の件についての連絡があり、すでに捜索中であるとの事。ナツは不審者に追われているとの情報。


「な、何でナツが仮面の不審者追われているんですか?――何でだマーカマさん!」


「どういう事かしら。舞園ボウヤの言っている事が本当なら、人造枠は高橋ガールのハズじゃないの」


「心当たりは無いんですか?――仮面の男は何でナツを追いかけているんでしょう」


「えっと……」


「彼女は何て事の無いただの学生なんですよ?――僕の幼馴染なんです!――何で……何で何で何で次から次へと!!」


 フラッシュバック

――――――――――――――――――――――――――――――


『今……有馬駅にいて……亮介が……刺された……』


――――――――――――――――――――――――――――――

 フラッシュバック終了


「有馬駅連続殺人事件……」


「ん……」


「全てはあの電話から始まったんだ。でも何でだ、何でこんな事態が数日の間に立て続けに起こる!?――おかしくないか。いくら何でもナツ個人を追跡するなんてどう考えてもおかしい展開じゃないか!」


「仮面の男に他に目的があるとしたらどうかしら」


「仮面の目的?――ナツを追いかけている目的なんてある筈無いでしょう!」


「そもそもその人造枠って……」


「ま、待ってくれ……い、意味が分からない……こ、この状況は一体何なんだ?」


 ナツが道化の仮面の男に追われている?――高橋が人造枠?――それともナツ?――そもそも人造枠って一体何なんだ?――それに路瓶さんが人質になって脅されていた?――敵は僕達を誘き寄せようとしていたって事になるよな?――僕達?――いや違う。高橋とナツ?――でも何故?――なんでなんでなんでなんで?――僕もナツも高橋もそこいらにいるただの学生なんだぞ?――高橋?――ん……


「とにかく先を急ぐわよ。クソビンにボウヤの事頼まれてるんだから、くれぐれも勝手なマネはしないで頂戴ね。ボウヤはあくまでも自分の安全を第一に考えなさい」


 携帯を手に取り誰かにメールをするマーカマ。


「応援を呼んでおくから合流したら、ボウヤは警官に身柄を確保して貰いなさい。良いわね?」


「…………」


 自分の無力さに怒りを通り越して呆れていた創。マーカマには色々ワガママを言ってしまったけれど、結局は彼1人じゃ何も出来ないんだろうという事に気付いてしまったからだ。創とマーカマは、予定通りの目的地である路瓶が〝3時間前〟に居たと思われる場所を目指す。創の場合、途中で警察の応援でも来て保護されてしまうのだろう。


 場面移る

――――――――――――――――――――――――――――――

 桜雪


 謎の女、桜雪サユキはタクシーを拾い、有馬駅に向かっていた。車内は至って沈黙。桜雪の片手に携帯。


「――ん?」


 誰かから着信が着た。桜雪は相手を確認してから通話を出る。


「――もしもし」


 電話の相手は……堂島快跳の父親、堂島ドウジマ和雄カズオ。以下堂島和雄と桜雪の会話。


「俺だ」


「ごめんなさい、彼らの尾行は失敗したわ」


「…………」


「――ちょっと待って」


 携帯から耳を離す桜雪はタクシーを止め下車する。ここは有馬駅付近のようだ。


「今有馬駅に着いたわ」


「奴等が戦場むくろの自宅周辺にて、女子学生2人を追撃しているとの情報が入った。メールで戦場むくろ自宅周辺の情報を送っておく。確認しておいてくれ」


「戦場むくろの自宅に向かえばいいのね?」


「仮面の男は拳銃を所持している。豪快な暴れ方をしているらしい。その周辺の目撃者は多いだろう。しばらくお前1人にこの1件を任せる形になるのだがそれで良いか?」


「了解。ところでこの件に依頼主はいるのかしら?」


「【レデ】より〝L.S〟で1万ドルだ。後は、収容所の男からも同じ内容の依頼が来たな。そいつは依頼主では無いが要注意人物であろう」


「そう。じゃあ電話切るわよ」


「ああ頼んだぞ」


 通話を切る。桜雪の表情からは何を考えているのか分からない。


 時間を進める


 シーンは舞園創とマーカマに戻る。場所は目の前に人気の無い廃工場。状況はその廃工場の雰囲気にやられそうになっている創。少し距離のある場所にてパトカー内で待機をさせ、マーカマは1人でその廃工場に進入していた。


 なんて不気味な工場なんだ。お化けを信じている奴が目にしたら、霊感だのお化けがいるだの大騒ぎするレベルの佇まいだぞ。そういや1人、大騒ぎしそうな奴に心当たりがあるな。


 落ち着く事無く時間は進む。大人しくパトカー内で待機しておくべきだろうと自分に言い聞かせていた創。本当はマーカマについて行きたかったのだ。


「この状況は何なんだ?」


 現実に何が起こっているのか、考えれば考えるほど入り口の見えない迷宮に迷い込んでしまう。この数日間の出来事を丸々考えてみた結果、不可思議な展開で非現実的。何かが確実におかしいとしか思えない現実。


「僕らは既に何かに巻き込まれている、か。だとしたら何に。誰かが何かを計画している?――僕らは戦場むくろの自宅に……いや、有馬駅連続殺人事

件に首を突っ込んだせいで流れが変わった?」


 考えても仕方が無い。少しでも情報が必要だと判断した創は、マーカマが落としたメモ帳をもう一度見てみることにした。


 969-8E61については後回しだ。まずは有馬駅連続殺人事件についての情報を……ん?


「何だこれは……これは!?」


 その手帳に書かれている内容に集中する。こういう時の時間はあっという間で、マーカマが廃工場に進入してから既に20分経過。


「マーカマさん遅い」


 マーカマにメモ帳の内容について聞きたい事で山積みになっていた。

 この手帳に書かれている内容って!


 ――とその時っ!

 ドオオオオオオン!


「!?」


 何事?――なんだ今の爆発音は。


 急いでパトカーから出て廃工場を見る創!


「…………」


 遠くから見た廃工場に異変はないようだ。


 フラッシュバック

――――――――――――――――――――――――――――――

 路瓶孫との通話


「良いか、ハアハア……私の携帯を逆探知でもして場所を特定したのだろうが……特定先には行ってはならんぞ!――あそこの入り口には小型の爆弾が幾つも仕掛けられているんでな!――君達はあくまで遠くへ逃げるか、安全なところで身柄を確保して貰……」


 フラッシュバック終了

――――――――――――――――――――――――――――――

 場面戻る


「ま、まさか……仕掛けられた爆弾が爆発した音!?――マ、マーカマさん!」


 居ても立ってもいられなくなった創は手帳をポケットにしまい、古びた廃工場に向かって走り出す。


「はあはあはあ」


 廃工場内に進入する創。辺りは薄暗い。


「マーカマさん、マーカマさん!?」


 大声を出してマーカマを呼ぶ、が返事は無い。


「はあはあはあ……ど、何処に居る?」


 幾つか個室があるのでドアを開けて中を確認する創。


「マーカマさん、どこですか!――聞こえたら返事をして下さい!――マーカマさん!」


 工場内は広く、今どこら辺にいて出口がどこなのか分からなくなってしまった。


「くっそ!――ん?」


 天井から粉が降ってきた。


「まさかこの上?――2階か!」


 猛ダッシュする創。途中エレベーターを見つけたが起動はしない。エレベ

ーターの階数を見るとこの建物は全部で2階のようだ。


「階段!」


 階段を見つけた創。急いで階段を駆け上がる。2階は既に白い煙が充満していた。この煙は爆弾によるものなのか。


「マーカマさん、マーカマさん何処にいるんですか?」


 ――とその時!――誰かの悲痛な声に気付いた創は、急いで声が聞こえる場所まで走る。入り口のドアは吹き飛んでいる状態の個室から声が!


「え、え?」


 足元でグチャリと聞こえる効果音。


「マ、マーカマさん?」


 危険を予知しながら少しずつ個室に入る舞園創。その足音は奇妙な音を響かせていた。


「ま、マーカマさん?――そこにいるんですか?」


「ボウヤ?――ぎ、来ちゃ駄目よ!」


「マーカマさん!!」


 マーカマさんの言葉を無視して走る創!


「マーカマさん、ちょっと!」


 床に倒れこんで右腕を押さえているマーカマを発見。その右腕からは大量の血が流れていた。それを見た創は慌ててマーカマの元へと駆け寄る!


「そんな!……ま、マーカマさん!」


「ボウヤは早く逃げるのよ……は、早ぐ!」


「ふざけた事を言わないで下さいよ!――さあ、立てますか!」


 マーカマを無理矢理起こそうとする。


「は、早く此処から逃げるんですよマーカマさん!」


「あああぁぁ……」


「お願いです。立ち上がって下さい!!」


 創の肩を借りながら立ち上がるマーカマ。そのまま退散するつもりが、この個室にある〝もう一つの悪夢〟に目をやる創。


「え、え、え?」


 創の足元から不自然に流れる血。思わずその個室全体を見渡してみる。そこで彼が目にしたものは、命を絶った絶望的なもの。


「え、え、え……え、え?……え?……ええ!?」


 ※重要人物の死体が発見されました

――――――――――――――――――――――――――


 流れる大量の血。


 その血の出処を目で追う創。追う追う追う追う。


 真っ先に目にしたのは、黒のゴミ袋。


 銃弾が〝それ〟と一緒に落ちている。


 次に人の足。黒のズボン。


 足はロープでぐるぐる巻きにされている。


 ぐるぐるぐるぐる……


 身体中がロープで巻かれていて、胸から大量出血。


 口元は粘着テープが貼られている。


 目から涙のような液体を流している。


 その人物は!


 × ドウジマカイの死体が発見されました


――――――――――――――――――――――――――

 

 一体何があった!?



 ※後書き

 堂島と言う苗字は親子で2人居ます。ややこしいのです。堂島ドウジマ快跳カイトが息子で、堂島ドウジマ和雄カズオが父親です。

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