第十八話 『 狂った歯車 』
創とマーカマが向かう先は!
創とマーカマは、パトカーで路瓶の元へと向かっていた。
路瓶の場所特定についてマーカマに詳しく話を聞くと、どうやら3時間ほど前に路瓶本人から一度警察に連絡があったらしい。その通話は会話することなく切れてしまったが、逆探知に成功していたとの事。マーカマは既に路瓶を重要人物として以前からマークをしていたことが実ったのか、路瓶だと思われる個人電話番号と一致しているらしいが。上からの指令もなく事件の匂いがすると言い張り、マーカマの独断で行動している。以下創とマーカマの会話より。
「どうよ舞園ボーヤ!――この状況にびびったかしら!?」
「びびったとか何言ってるんですか…」
「ボーヤを巻き込む形になるかもしれないけれど、やっぱりここは奴らの〝狙い〟も探っておきたいからね」
「狙いとか奴らとか分からないじゃないですか!――変な事言うのやめてくださいよ!」
「そう言ってる傍からはーい、赤信号★」
「ん?」
「逃げ出すなら今のうちよ。ボ・ウ・ヤ♪」
「なんスか」
「別に逃げたきゃ此処で逃げても良いって言ってるのよ!」
「…………」
「――あんたの心は既に行き先を決めている筈。そうでなくって?――だったら男一匹選んだ人道貫き通しなさいよ!」
「じゃあ心の中で喋っていて下さい。少しだけ頭の整理が追いついていないだけですから」
「何よ青二才の分際でこのあたしに黙れですって?」
「次から次へと変な話をしないで下さいよ。」
「んん?」
「何も無いですよきっと」
「あたしは間違ったことは言っていないわよ?」
「だから何で確定したみたいな言い方で、不安がらせる事を言ってくるんですか」
「悪いけど舞園ボーヤ。一つ言わせて貰うと、これは警官の勘でもなければ女の勘でもない。あたしには〝未来〟が見えるのよ」
「――は?」
「オカマの〝絞りカス〟をナメんじゃないわよ!」
「うんもう良いです。別にあなたと喧嘩するつもりでついて来てる訳では無いですから……」
「あたしと行動するからには従って貰うわよ」
「…………」
マーカマがタバコを手に取る。創の許可も無く車内でタバコを吸い始めた。
「スゥ~フゥー」
「う、運転しながら喫煙ですか?――さすがにそれはおかしくありません?」
「悪いけれど、あたしには青二才の説教なんて聞く耳は持ち合わせていませーんので!――心の中で喋ってなさい?」
「あ、あなた本当に警察官ですか?」
「文句があるなら降りたらどうかしら?」
「――どうなっても知りませんからね!」
「スゥ~フゥー」
何なんだだこの人は。話せば話すほど警官とは思えない行動の連続で。こんな人について行って本当に大丈夫なのか!?――とは言え、今はマーカマに頼む他手っ取り早く路瓶さんの元へ辿りつく方法が思い付かないしな。ここは辛抱するべきか。
「ボーヤも一本どう?」
「良い加減にしてください!」
「何さ。今のはさすがに冗談なのに!」
場面移る
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マーカマが運転する車を尾行する1台のタクシー
後部座席にいる人物は女性で、服装は青髪に青のジャケット、水色のミニスカート。他には右手中指と小指に黒い包帯をしている。車内は沈黙でタクシードライバーの男は困惑している様子。――とその時、赤信号に変わったにも関わらず先へ行ってしまうマーカマ達の乗る車。
「何をやってるの?」
「――さすがにこれ以上の尾行は不可能ですわ」
「ふざけないで。早く後を追いなさい!」
「無茶言わないで下さいよお姉さん」
「――もう良い。降りる」
運転手の男はほっとした表情を見せお金を受け取る。お釣りを受け取る事無く出て行こうとする青髪の女。そして一言……
「意気地なし」
「はっ?」
意気地なしと言い捨てた青髪の女はタクシーを離れ、ダレカに電話をする。
「…………」
通話は繋がらなかった様子。街角で携帯を眺める青髪の女。
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重要人物 ?? 桜雪(16)
女性 身長156cm 体重41kg
青髪&青ジャケットが特徴
右手中指と小指に黒い包帯をしている
目つきが鋭く人を寄せ付けないオーラを出している
どこか上から目線でプライドが高い
前髪に過剰なこだわりがあるらしい
5人目の重要人物!
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舞園とマーカマの向かった先を見つめる青髪の女、桜雪。
場面移る
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戦場むくろ宅周辺
戦場むくろ殺害事件の捜査をしていた警官達が何だか騒がしい。以下警察達の会話。
「マーカマさんは何処に行かれた?」
「それが……」
「何だと、それは本当か!?」
「ちょっとちょっと、舞園君と石川さんと高橋さん見当たらないんだけど、彼女たちは今何処に居るんですか!?」
「――ん、それはマーカマさんに頼んであるが」
「――どういう事でしょう?」
「まさかマーカマさん。また勝手に動いているんではないでしょうか」
「――おいお前ら、舞園君たちはまだ周辺にいるかもしれん!――第二班は捜査を止めて彼らを探すんだ!」
「はい!」
戦場むくろ自宅より少し離れた場所より
「高ちゃん早くっ!」
息を切らしながら戦場むくろ自宅付近の道中を走っているナツと高橋。その様子は見るからに何かから逃げている。
「ハアハアハア――うっ!」
「高ちゃん!」
「ご……めんなさ……い」
体力の限界なのか、息を切らした高橋はその場で座り込んでしまう。
「早くしないとさっきの変な人が来ちゃうわよ!――さ、立って!」
振り返る高橋。追跡者らしき人物の姿は見当たらない。
「そこの細い道に行くわよ!」
「はい」
2人は細い道に入りその場で腰を下ろす。
「……………」
「ハアハアハアハア」
腕時計を気にするナツ。
「い、今のうちにハアハア……警察とはじめ君に連絡を」
高橋がカバンから取り出した〝物〟それは……
「え、携帯!?」
「警察には私から連絡します……ハアハア……ナツは、ハジメ君に連絡して」
「高ちゃん携帯買ったの?」
「はい。別に隠していたつもりではないんです。言おう言おうと思っていたのだけれど……後で言うって言ったっきりお話をする機会が無くて……」
「――あっ」
フラッシュバック
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第八話・学園登校中
「あの」
「ん?」
「えっと……やっぱいいです!」
「――ええ!?――何だよ、その気になる言い方ー!」
「あ、後で言います!」
「えー何だよー!――余計気になるじゃん」
「後で言ってくれるんだから良いじゃない」
「はいよ……」
フラッシュバック終了
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場面戻る
「――あの時の話の続きね」
「はい。それより、追跡者に見つかる前に……ハアハア、電話しましょう」
「ちょっと待って!」
ナツは携帯をいじりながら再度腕時計を確認する。
「良いわ、電話するわよ?」
2人はそれぞれ電話をする。
「――もしもし!――す、すみません。今、私と私のお友達が誰かに追われていて……はい?――よく分からないのですが怖くて逃げています!」
警察に電話をして今の状況を説明する高橋。一方ナツはというと、創に連絡していたようだが既に通話を切っている。どうやら創は電話に出てくれなかったみたいだが。
「はい、あ、はい、はい。周りに人はいませんね。いえ、それはあります」
高橋は通話を繋げたままナツに話を振る。
「近くにある誰かの家にかくまってもらいなさいですって!」
「うん」
会話を続ける高橋。
「はい、はい、分かりました」
何かを了解して携帯から耳を離す高橋。
「誰かにかくまって貰えば良いのね!」
「はい。今担当に繋げるから、私達は今すぐにかくまって貰う場所を見つけるようにと言われました」
「通話は繋がったままなの?」
「はい。この後警察の方から色々と指示されるのでその通りに動けば良いです」
「なるほど、その間に警察から迎えが来てくれるってことかしら」
「まだそうは言われていませんがきっとそういう事になりますよね」
――とその時だった。先ほどナツと高橋が逃げてきた道から1人の人物が走って来る。2人は途中細い道に身を潜め、壁に体を寄せてその人物を確認する。
「ナツ!?」
「あ、あいつよ。間違い無いわ」
高橋は急いで携帯を耳に当て、目の前に現れた不審者について警察に話そうと試みる……が!
その人物が猛スピードでこちらに近づいてくる!
「気付かれてる!?」
「え!?」
2人は慌てて立ち上がる。高橋は、そのまま細い道を走り出そうとした。が、しかし!
「…………」
突っ立ったまま動かないナツ。
猛スピードで近づいてくる追跡者!――よく見ると、その追跡者は道化の仮面を顔に付けている。その者の右足は雑に巻かれた包帯!
「ナツ何をしているの!?――は、早く逃げるのよ!」
「…………」
「ナツ!!」
「――私に名案があるんだけど、聞いてくれない?」
高橋の方を振り向くナツ。その表情から見て取れる冷静さと余裕。
「名案?」
「2人で逃げても高ちゃんの体力が持つとは思えない」
「ナツ?」
「此処は私が引き受けたわ。高ちゃんは早く此処から早く逃げて!」
「ちょっとナツ、何を言ってるの!」
「なーに、心配はいらないわ。私は体力には自信があるのよ!――警察には高ちゃんの方から説明しておいて!――落ち着いたら私から連絡するわ!」
「わ、私は番号は080……」
「良いから早く行きなさい!」
「うっ!」
接近して来る不審者!
「――見つけた……ん?」
ナツに任せて細い道を先に走り出す高橋!
細い道から姿を現す石川ナツ!
「さあ来なさい変態仮面……鬼ごっこの続きをしてあげるわ!」
「フーー」
右手から拳銃を取り出す不審者!
「え、ピストル!?」
銃声音が一発、パアアアン!
――間一髪で銃弾の命中を間逃れるナツ!――予想外な表情を浮かべるナツは、高橋が逃げた先とは違う方向へ猛ダッシュ!
「銃声?……ハアハア、そんな……こんな人目のある場所で銃撃だなんて!」
引き返している高橋。片手には警察に繋がったままの携帯を持つ。細い道から大通りへ出る!――既に遠くを走っているナツと不審者!
「――ハアハア……ナツ、ナツ!」
すぐ後ろで人の気配!
「ハッ!」
道中に居たのはm前回の戦場むくろの自宅に向かう途中で、自宅の場所を教えてくれた老夫婦の2人。
「今の音は何じゃ。何事だ?」
~逃走するナツ・追跡する不審者~
「――ハアハア……くっ!」
「フウウウウウ!!」
一方その頃。路瓶が居るかと思われる場所までパトカーで向かう創とマーカマ。その車内にて。
創の携帯が鳴る。路瓶からの着信のようだ!
「え、路瓶さんからだ!」
「!?」
速攻で電話に出る創!
「もしもし路瓶さん。今何処にいるんですか!?」
電話越しから路瓶の声。
「――ハジメ君。す、すまない……ハアハア」
「路瓶さん?――ど、どうかされたんですか?」
「今何処に居る?」
「それはこっちの台詞ですよ!」
「良いがら今何処に居るとぎいている!」
「なっ路瓶さんの身に何かあったんじゃないかと心配して……今、警察の方と路瓶さんが居ると思われる場所へ向かっているところですよ!――路瓶さんは今何処に居るんですか?」
「駄目だ、行ってはならない!」
「え?」
「例の学園内に侵入してきた道化の仮面に、人質を捕られて脅されでいだんだッ!」
「人質?」
「どにがく……ハアハア……ハジメ君は、石川ざんと高橋ざんとその警察官に事情を話じて……ぞのまま遠くへ逃げるんだ!――その不審者は私ど人質1人をつれで……ハアハア……今、戦場むくろ宅の傍にいる」
「――っ!」
「ぞの不審者は誰かがら着信がぎだのだが、その直後に私らを残して車から降りてどこかへ走っていっだ……ぎっど〝アレ〟を追いかけに行ったに違いない!――だが、天は我々の味方をじでくれだ!――警察官も一緒の上に……この辺りがら離れでいだどはガハッ!!……ハアハア」
「そ、そんな」
「わ、わだしは人質を連れてこのまま逃げ切ってみせる。まだ連絡ずる」
「ナツと高橋が……」
「良いか、ハアハア……私の携帯を逆探知でもして場所を特定したのだろうが……特定先には行ってはならんぞ!――あそこの入り口には小型の爆弾が幾つも仕掛けられているんでな!――君達はあくまで遠くへ逃げるか、安全なところで身柄を確保して貰……」
「此処にはいません」
「――ん?」
「いないんです」
拳を握り締める創。と横からマーカマが……
「ちょっとあたしに代わりなさい!」
強引に携帯を横取りするマーカマ。
「もしもしお電話代わりました。あたしはマーカマさんの異名を持つオカマ警察の者ですけど!」
「オカマ?――警察の方なんだな?」
「ええ。あなたは無事なのよね?」
「ああ、どにかくハジメ君達を安全な場所へ避難させてあげてぐれ」
「ハジメ君達?」
「3人を頼んだ……ハアハア」
「3人ってちょっとクソビ……路瓶さん。あたしと行動しているのは、舞園ボーヤだけになるわよ?」
「何だと!?」
「メス2人は今も戦場むくろ宅周辺にいる筈だけれど」
「どういう事だ。ハジメ君は石川さん達とは別行動をしているという訳が?」
「ええ、そういう事」
「そんなッ!」
突然叫び出す舞園創。
「ちょ!……ちょっとどうしたのよ」
「早く引き返してくれ、早く!」
「え?」
「ナツと高橋が危険な目に遭ってるかもしれない!――良いから早く戦場むくろ宅へ戻ってくれ!」
「ちょっと、それってどういう……」
電話越しから。
「良いですかマーカマさん。ハアハア……ハジメ君をお願いします。何処が安全な場所へ避難させてやって下さい。お願いします」
「くっそおおぉぉ!」
携帯を取り出す創。急いでナツに電話をしてみるが電話に出ない!
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高橋
警察に一生懸命事情を説明する高橋。
「はい、その人物は拳銃をもったままナツを!」
その横で立ってアタフタしている老夫婦。
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石川ナツ
拳銃を構えながら接近して来る不審者!
「フウウウゥゥ!」
「ハアハアハア」
足を止めて振り返るナツ!
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路瓶孫
フラついた体で、黒い車から降りる路瓶。人質Bも一緒のようだ。人質Bの顔に覆われていた黒いゴミ袋を取る路瓶。
「どごが安全などごろに逃げよう」
場面移る
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堂島和雄
車で何処かへ向かっている堂島快跳の父親の〝堂島和雄〟(電話越し以外で登場するのは今回が初)
助手席に〝誰か〟居る。女性のようだが今まで登場してこなかった人物。2人共落ち着きがない様子で先を急いでいるように見て取れる。
場面移る
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桜雪
再びタクシーを拾う桜雪。タクシーに乗車。
「有馬駅に向かって!」
有馬駅へ向かう桜雪。
場面移る
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舞園創
「マーカマさん、早く戦場むくろの所まで引き返してくれよ!」
必死に訴えている創。困った表情のマーカマ。
「そんなこと言われても……あなたにもしもの事があったらどうするの」
「大切な友達なんだ!――このまま安全な所でゆっくり一休みなんて嫌だ。頼むよ!」
「ワガママ言うんじゃないわよ!――事態がもっと悪化するかもじゃない。あたしはクソビンに頼ま……」
「僕が2人を見捨てたようなもんだ!――頼む、行かれてくれ!」
歯車はみるみるうちに狂い出す!?
※後書き
重要人物が紹介される際に書かれた人物の詳細の中に、クエッションマークで不明になっている情報があります。このクエッションの数には意味があって、クエッションマークの数だけ入る言葉が入る仕組みになります。桜雪の苗字が良い例です。




