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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅡ― 「監視者と道化仮面」
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第十七話 『 969-8E61 』

 マーカマのメモ帳には!?


 創ら3人は、戦場むくろ殺害事件の犯行現場の調査をしている警察官のマーカマが車内に落としたメモ帳の内容を見ていた。最近メモした内容は、戦場姉妹についての詳細になる。そんな中、彼らが直面している戦場むくろ殺害事件の主な詳細には、理解の出来ない暗号とそれが破損した事件について細かく書かれていた。ふと目に止まったのがよく分からない事件について細かい内容が書かれていた。


 『969-8E61破損事件 破損推定時刻は4月11日午前1時半頃』


「この【969-8E61】って?」


「ちょっと!――元に戻しておきなさいよハジメ!」


「人のメモ帳なんて勝手に見るべきじゃないですよー?」


 969-8E61破損事件。創らには馴染みの無いキーワードだった。だが、少し目を通して分かったことは以下の内容。


 『969-8E61破損事件 破損推定時刻は4月11日午前1時半頃』


 上記内容で創が気になったのは日付と時刻。4月11日午前1時半頃と言えば、探偵の路瓶が創らに提供してくれた〝戦場むくろ殺害事件〟の主な詳細に載っていた被害者の戦場むくろ死亡推定時刻の当日同時刻である事。ナツにマーカマのメモ帳を見るのを止められたが、創の手は止まらない。一文一文しっかり読むことは不可能だと判断して、飛ばし飛ばし969-8E61破損事件の詳細を目で追う。


「ん……」


 今からちょうど6年前の事件について書かれている。


 何でいきなり6年前の事件について書いてあるんだ?


 ――969-8E61破損事件の詳細の覧に書かれた6年前の事件の詳細。その内容は……


 『篠原シノハラ由香里ユカリ・桜ヶ丘学園サクラガオカガクエン襲撃事件シュウゲキジケン


 桜ヶ丘学園の目玉行事である〝自然を大切にしよう計画〟に一般市民として参加いていた篠原由香里は、決められた動物の保護と環境を大切にし、そのテーマである〝命〟について深く考え、その根本を追求し、正しい道へと導いてあげる桜ヶ丘学園の検疫ケンエキ委員より〝3つの指導者〟の発案者として学内有名であった。


 その後、希望ヶ丘学園の新入生として強い希望を胸に3つの指導者として検疫ケンエキ委員活動を実際に始動する段階まできていた。


 ――が、一つのある〝信じられない噂〟が学園中に流れていた。その内容は……


 〝篠原由香里は過去に何度も自殺未遂をしていた〟


 命の本来あるべき姿を問い、それを導こうとする立場であるからには断じてあってはならない過去。いいえ過去とも限らない。学園中が篠原由香里はただの偽善者だと追い詰めてしまった。断じて検疫委員の指導者ではないと、一夜にして生徒達の信頼を失ってしまった篠原由香里。それらの事が次第にエスカレートしてしまい、後にとんでもない大惨事ダイサンジを生んでしまったのだ。


 その大惨事とは……


 篠原由香里の偽造体が生徒達の間で作られ、校門前にその偽造体が首を吊った状態で発見されたのだ。


「そんな……」


 そして、篠原由香里は1年の桜ヶ丘学園生活に終止符を打つ事となる。


 ――その後に起きた事件が【篠原由香里・桜ヶ丘学園襲撃事件】となる。学園の生徒達を無差別に襲い掛かる篠原由香里。それを取り押さえようとした警官に対してひどい暴行を加え、結果的に警官による銃弾で射殺されて篠原由香里は死亡した。射殺は30歳男性の警察官によるもの。警察官によると、篠原由香里は拳銃を所持していたとのこと。だが、その拳銃はどこにも見つからず、裁判の最終判決では警察官の退職処分で完全に幕を閉じた。

 現場の目撃証言は多数いたのだが、篠原由香里が所持していたと思われる拳銃を見た人物はただの1人もいなかった。目撃者の生徒達のほとんどが、篠原由香里の一方的な〝暴行〟が結果的に警官が引き金を引いてしまった原因だと語る。


 上記内容がにより、湘南学園ショウナンガクエンと桜ヶ丘学園サクラガオカガクエンが合併して後の希望ヶ丘学園に改名を余儀なくされる出来事になるのであった。


 ――とその時っ


「ねぇ?」


「うお!!」


 しまった、いつの間に!


「あ、ああえと……」


「すみませんすみません!!」


「――え?」


「え?」


「急に謝ってどうしたの?」


 よく見るとその人物は先ほどマーカマさんに僕らの飲み物を買ってくるよう頼まれていた警官のようだ。


「はいお待たせ。これで良いかな?」


 ボカロスエット、ほ~いお茶、フラッシュブラックコーヒー。


 ――あれ、僕らの希望通りのを買ってきてくれているじゃないか!


「ありがとうございます!」


「すみません」


「ごめんねー。もう少しでマーカマさん戻ってくると思うからさ。」


「あ、はい!――お気遣いなく!」


 警察はそのまま僕らの乗っているパトカーを離れていった。


「ふぅ……ギリギリバレてなかったみたいだな?」


「そのようですけど」


「――あのさぁ?」


 ナツが口を割る。


「ん、何だよ」


「そのメモ帳、元あった場所に戻して置いておいてくれないかな?」


「え?」


「そういうの勝手に見るなんて信じらんない!」


「――でもこのメモ帳には、僕らが自力で見つけられそうも無い情報が載ってる。ここで見ない手はないだろ?」


「あんたって奴は……」


「何だよまたあれか。『そんなの警察に任せておけばいい』か?」


「当たり前じゃない!――あんた今どういう立場の人間か分かってやってるの?」


「その話はよしてくれ」


「よさない。あんたはただの学生なのよ?――何であんたが背伸びしてまで、わざわざ事件に巻き込まれるような展開に運んでいってるのよ!」


「別に巻き込まれる展開なんて望んじゃいないさ。僕はただ……」


「亮介が刺された件だってね、あんたがどうこう出来る問題じゃないのよ。あんたバカなの?」


「亮介の仕返しをしてやりたい気持ちもあるけど……今回の戦場むくろ殺害事件に関してはそれだけじゃない!」


「??」


「僕は……」


「…………」


「確かに女の声で『助けて』と言ってるのを聞いた!――その真相が知りたいんだ!」


「――っ!」


「ご、ゴチャゴチャうるさいんだよ!――嫌なら先に帰ってても良いぞ!――路瓶さんには僕から話しておくからさ!」


「そんな言い方っ!」


「これは僕の問題だ。僕はお前に何を言われても止めはしないぞ!」


「ハジメの馬鹿ッ!」


 顔を隠しながらどこかへ走り去ってしまうナツ。


「ちょ、ちょっとハジメ君!――ナツを追いかけないと!」


「良いんだよ放っておけ。今のあいつは僕に振り回されっぱなしだ」


「だから追いかけるべきではないって事?」


「――何だよ高橋。お前まで僕に文句があるのか?」


「そういう訳じゃないけど……もう少し言い方があったはずです!」


「――ふん」


 高橋に構わずマーカマさんのメモ帳に目をやる創。


「ナツを追いかけてきます」


「…………」


 そう言い残して高橋もナツの後を追う。


「――はぁ」


 創は一つの覚悟をしようとしている。このメモ帳を見せてほしいと持ち主のマーカマさんに直接頼んでみようか。


 やっぱり駄目かなぁ?……見せてくれる訳無いか。


「――駄目だ」


 再びマーカマのメモ帳に集中する。


 なお、篠原由香里の死体は現在も行方不明。目撃者の証言によると『確かにあったはずの死体が少し目を離した隙に消えていた』との事。近日に篠原由香里の目撃証言が幾つかあった。しかしそこからの有力な情報は掴めずに未だ彼女の行方を探している。彼女の行方は引き続き捜査をする次第である。


 少し内容を飛ばす。


 彼女が自宅に残していたダイイングメッセージがある。それは暗号のようなものでこう書かれていた。


 『969-8E61が存在すれば近い将来、全生命の希望の架け橋となるであろう』


 彼女が残したダイイングメッセージ?――969-8E61って何を指している言葉だ?――うーん、マーカマさんは解読出来たのかな。僕が聞いたところで答える訳が無いだろうな。――とすればやはりこのメモ帳を頼りにここからは自力で捜査していく必要があるって訳だな!


 それにしても、2つの学園が合併して希望ヶ丘学園に改名したことは知っていたけど、その背景でこんな事件が起こっていた事までは知らなかったな。今の学園長はこの事件についてどこまで知っているのだろう。――それに当時から教師として学園にいた先生だっているよな。青葉先生はどうだ。彼は戦場むくろ殺害事件について、どの先生よりも詳しく耳に入っているはずだ。戦場むくろの自宅へ行った日も青葉先生に頼んで自宅まで行けたんだ。路瓶さんはどうだ。彼は戦場むくろ殺害事件について細かく調べているようだしな。学園長よりは青葉先生だな。マーカマさんには何も聞かないでおこう。


「ん……」


 ふと車内の後部座席を見てみる。そこには一枚の小さな紙が置いてある。


「これはマーカマさんの名刺。連絡先が記載されているんだったな」


 創は、マーカマの名刺をそっとポケットにしまう。


「ごめんマーカマさん」


 名刺と一緒に、マーカマのメモ帳をポケットにしまった。


 2~3日で必ず返す。


「それにしても……」


 路瓶さんは一体何をやっているんだ?――急いでいる様子で僕らと待ち合わせしてきたのに。それに待ち合わせ場所を指定したのも路瓶さんなんだぞ。僕らが戦場むくろ宅に到着してからすでに2時間半が経っているのに一向に来る気配が無い。


「――何かあったのか?」


 携帯を取り出す創。――路瓶に連絡してみるがやはり電源が入っていない。


「どうしたんだろう」


 何だか落ち着かなくなってパトカーを出てみる創。


 ナツと高橋の奴、何処に行ったんだ?


 更に10分が経ったころ


「舞園ボーヤ!」


 マーカマが創の待機しているパトカーへ駆け寄る。


「マーカマさん、あ、あの!」


「クソ探偵の場所を特定出来たわよ!――ボーヤの待っているクソ探偵はまだ来ていないんでしょう?」


「特定って、どうして分かったんですか?」


「その話は後で車内でするわ」


「車内?……路瓶さんはこの近くにいるんですよね?」


「ちょっと気になることがあってねー。ボーヤの話を聞いた後に、そのクソ探偵について現場の者に色々聞いて回ってたのよ。実はあたしもそのクソ探偵……ええと」


「路瓶さん?」


「そうそうロビン!――彼はどうやらこの事件に深く関係しているっぽいのよね」


「マークしてたって事ですか?」


「――実はロビンについて詳しく知っている人物に話を聞きたかったところだったのよ!――でも、本名がよく分かんなくてね!――ロビンが本名で間違いなさそうね」


「彼は事件に関係しているんですか?」


「今話そうとしてデュ~!」


「あ、はい。すいません」


「現段階では色々とノーコメントになるのだけれども。そもそも事件に関係している君らと何度か接触している時点で関係してるっちゃ関係しているんだけどねー。内情も少しは知っているんじゃないかしら?」


「内情?」


「ここからはあたしのたわ言だと思って聞きなさい。――て言うかそうじゃなくってよ!」


「え?」


「彼は此処には向かっていないよ!」


「そうなんですか?」


「クソビンの携帯番号を確認させてもらって良いかしら?」


「あ、はい」


 携帯を取り出す創。電話帳から路瓶さんの連絡先をマーカマさんに見せる。


「ふーむふむ。やっぱり彼は此処には向かっていないわね。少なくとも路瓶さんの持つ携帯電話は〝2時間半前〟には移動した形跡が無いわ」


「それに幾ら何でも遅すぎます!――やっぱり何かあったんでしょうか」


「それで、これからあたしはそのクソビンが居るかと思われる場所へ行ってしまおうと思ってるの」


「え?」


「ちょっと引っかかるのよねー。彼は何故君ら3人をここに呼ぶ必要があるのか。一昨日の出来事を再現するってことにしてもよ。昨日は学園内不審者侵入の件で3人共酷い目にあった事は、彼が一番よく分かっている筈」


「何だか急いでいる様子でした」


「そこなのよねー。何で彼はボーヤ達にすぐにでも再現したいとお願いしてきたのかしら?」


「何か意味があるんですか?」


「裏があるとしか思えないわ」


「…………」


「なんてね、テヘペロォ★オカペロォ★」


「…………」


「ちょっと舞園ボーヤ!――その反応すっごく困るんだけどぉ?――誰かこいつお会計して~!」


「お会計?」


「――うわ、反応薄。――つまり、最悪の事態も想定して行動しないといけない訳なのよ!」


「最悪の事態……」


「な・に・よ、びびってるのかしら?――あたし的には舞園ボーヤも一緒に同行して貰おうと考えてるんだけど?」


「同行?――同行しても良いんですか!?」


「本当はね、あたしの脳内思考回路ではKY(危険予知)がそれは危険よっで止めようとしてくるんだけれど……探偵が舞園ボーヤを呼んだ理由が他にある筈よ。その目的を掴むことによって何か見えてくるものもあるかもしれないわ」


「ロビンさんの本当の目的ですか」


「此処で立ち話も何だし、どうかしら。舞園ボーヤはあたしについて来る気があるの、無いの?」


「…………」


 ナツと高橋はどうする。


「あれ、やっぱりびびってるのかしら?」


「――い、行きます。同行させて下さい!!」


「オーケーセンクス決まりね。――そうと決まればさっそく出発するわよ!」


「ちょっと待って下さい!――ナツと高橋に一言言ってから出発したいです」


 ナツに電話。――ナツの電話は留守番電話に繋がった。事情をメッセージに残して通話を切る創。


「高橋は携帯持って無いんだったな」


「ん?」


 辺りを見回す創。やはり、ナツと高橋の姿は見当たらない。マーカマは、パトカーに向かって歩き出した。


「こっから先はあたしの勝手な単独行動になるからよろしく★」


「え、そうなんですか?」


「ええ。基本自由主義なので!――つべこべ言うのはナシでお願いね」


「…………」


 本当にこの人について行って大丈夫なのか??


「それより行くならチャッチャと出発するわよ。それとも何かしら、さてはボーヤ、可愛い女子が傍に居てもくれないとやる気が出ないタイプだったりする?」


「ふざけないでくださいよ!――僕が勝手にどっか行ったら彼女達に迷惑かけちゃうんです!」


「あたしから言わせて貰えばね?」


「ん?」


「ていうかー乗るなら乗れし、ブチ切れるわよ!」


 マーカマは助手席を開ける。パトカーに乗車する創。


「ゴホン……あたしから言わせて貰えばね。さっきも言ったけれど、最悪の事態も想定して行動する必要があるの。だからここはいっそ彼女らには秘密にして動いていた方があたしとしても動きやすいわけ」


「――僕だって彼女らを連れて行く気はありませんよ」


「だったらとっととずらかるわよ!」


「分かりましたよ。出発して下さい」


「ま、心配しなくてもすぐに連絡とれるわよ!」


「…………」


 ――ナツも高橋も路瓶さんもいない。ここから先は僕の単独行動になるんだな。――弱音は言わないからな。


「レフトよーし、ライトよーし、もういっちょレフトよーし!――ライトに見せかけてのヒアウィーゴオオォ!」


「…………」


 創とマーカマは路瓶が居ると思われる場所へと向かう!


 路瓶さん?……何処で何をしているの。ナツ、高橋……すまん。それにしてもマーカマさん。路瓶さんをマークしておきながら本名を知らないときたか。うーん。


 路瓶の元へ向かう創!

 ※後書き

 969-8E61はある工夫をして見ると何を指した暗号なのか解けるようになっています。言い方を変えてみたり、PCのキーボードをヒントにしたり、あれやこれや……


後々ネタバレするんで無理に解く必要は無いですかね!

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