第十五話 『 監視者Ⅱ 』
彼が尾行する人物とは!?
彼の名前は堂島快跳。次の監視先の人物は、探偵と名乗る路瓶孫という男だ。戦場むくろが殺されたと青葉先生に聞かされた日に、彼は希望ヶ丘学園に来ていた。その放課後に舞園と石川と高橋の3人と接触していたのは確認済み。舞園に俺の人影が見つかって危うく正体がバレるところだったが、堂島が逃げ出した瞬間に聞こえた女子生徒の悲鳴。訳の分からない不審者が園内に現れてから石川が追って来なくなった。それにしても、今度は高橋まで倒れたみたいだけど……そこに居合わせていた探偵と名乗る路瓶孫の尾行を試みる。
「何してんだあのオヤジは」
堂島の目線に居るのは路瓶。今日は希望ヶ丘学園は臨時休校で休みなのに、どうして学園に行く必要があるのか。
「学園の周りをウロウロして、何を探してるんだ?――ん」
よく見ると学園の校門前が騒がしい。警察が張り込んでるようだが、女子生徒もいる。あの生徒は希望ヶ丘学園の生徒。今日は臨時休校で学校が休みなのにも関わらず、学園内に入ろうとしている様子。遠からず近からず路瓶との距離を計りながら彼の行動を観察する堂島。
隠れるようにして学園の校門前を巡回している路瓶。
監視を続ける。――するとそこへ1人の女が校門に向かって歩いていた。篠原すみれのようだが、堂島は彼女を知らない。
「あのオンナ、何処かで見たことあるな」
校門に向かって歩く女。その人物の服装は上着長袖に紺のジーパン、ポケットに手を入れて歩いている。
監視を続ける。
――しばらくした後に戻ってきたのは、校門前で何かあったと思われる女子生徒の亀谷と先程校門に向かって歩いていた篠原がこちらに向かってくる。
俺からは二人の会話は聞こえないってあれ?――路瓶が動いた!――あいつ女子生徒を待ち伏せしていたのか。ひょっとしてあの2人の女は戦場むくろ殺害事件についての鍵を握ってたりするのか?
携帯を取り出して彼らに気付かれないように少しずつ近づく。そして、2人の女の顔をを写メで撮る。すぐに堂島の親父に写メを送信。その場から動かずに監視を続ける堂島。
「うーん」
会話は聞こえない。だがこれ以上近づけそうもない。路瓶と希望ヶ丘学園の制服を着た女とその友達の女。3人は10分ほど立ち話をしていた。その間に親父からのメールを受信した堂島は、すぐにメールの内容を確認する。
『了解。2人の女子も含めた3名の監視を頼む。おかしな点があればその都度俺に報告してくれ』――という内容。
「あの女子2人の細かい情報は親父に任せるとして……ん?」
路瓶に動きが見られる。どうやら路瓶を含めた3人が別の場所へ移動するみたいだ。路瓶に〝足〟が無いのは堂島快跳が確認済み。そう遠くには行かないだろう。彼らを尾行を続ける。
時間が15分の時間が経過した頃、路瓶と亀谷、篠原の3人は喫茶店【カム茶】へと入っていった。
「あの店は確か……」
堂島は携帯で、親父のメールよりカム茶の情報を見直す。
「ビンゴ!――あの喫茶店ではA組の【青田向日葵】がバイトしている店で間違いない」
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重要人物 青田 向日葵(15)
女性 身長166cm 体重不明
喫茶店【カム茶】でバイトをしている
堂島快跳との連絡先は交換済み
重要人物28人目!
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喫茶店に近づいたが、中の様子は分からなかった。
「監視する立場からしたらしんどい流れだぜ……ふぅ」
その場で腰を下ろす堂島。喫茶店が見える位置にあるコンビニの駐車場で待機する事にした。
「待てよ、もしかしたらいるんじゃねぇか青田の奴」
青田の連絡先をすでに知っている。もし臨時休校によってバイトに出勤していた!――何て都合の良い状況だとしたらどうだ?
「物は試しだ!」
青田に電話してみる堂島。
…………電話に出ない。留守番電話に繋がってしまう。
「出ないか。そう都合良く事が進むだなんて思っちゃいねーけどな」
電話を切りその場に待機した。
――待つこと30分ほど、路瓶と女子2人が喫茶店から出てきた。
「――よし!」
再び尾行を続ける。しかしどういう訳だろうか。女子2人と路瓶が何処かを目指して歩き出した。
――おかしくないかあの女2人。知らないおっさんなら此処で解散パターンだよな。そもそも喫茶店まで女子2人が怪しいおじさんについて行く時点でおかしいんだけどな。
「――ひょっとして、知り合いなのか?」
尾行を続けて20分が経過した頃、場所は人気の無い路地の裏。明らかに怪しい流れになってきた。と、そこへ希望ヶ丘学園の制服を着ていない方の長袖女子が路瓶に何やら〝メモ用紙〟のような物を渡していた。
「親父に連絡のパターンだなこりゃ。こんなのどう見たって怪しいもんな」
携帯を手に取って、目線を完全に携帯画面に向けてから親父に電話を掛けようとしたところでもう一度3人に目線を戻す。
「――え?……え、え、え!?」
携帯を強く握り締める堂島。次の瞬間、驚く光景が視界に入る!
場面移動
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路瓶孫と女子2人組へ
「いやああぁぁ!」
路瓶が何者かに襲われているその相手は!?
「フッフ……フーー」
例の希望ヶ丘学園に侵入してきた道化の仮面と同じ格好をした不審者がいる。すぐに刃物を出す不審者、その右足は雑に包帯が巻かれていて怪我をしているように見える。
「な、何だお前!」
不審者に不意を衝かれた路瓶は不審者に殴られて倒れてしまう!
「ハアハアハア……」
「やめろ!」
「抵抗するな。余計な事をしたら刺し殺す」
「――ああ、やれるもんならやってみろよ!」
不審者の脅しに全く動じない篠原すみれ。
「いがんッ!……君たちは此処から早ぐ逃げろ!」
「フーーー」
「どうした、かかって来んじゃないのか?」
戦闘態勢をかまえる篠田。
「てめぇが来ねぇならこっちから行かせて貰うぜ!」
篠原が踏み込もうとしたその時!
『ドン釈の意思だ』
不審者の言葉を聞いた篠原が足を止める。
「――は!?」
「お前が何者かなどはすでに分かっている。ここは大人しく命を捨て置くべきだ。悪いがお前にはここで退場して貰う」
「…………」
右足を引きずりながらゆっくりと篠原に近づく不審者。
「ま、待て、待ってくれ!」
「フーーー」
「待じなざい、早まるな!」
「ん?」
倒れたまま不審者に言葉を投げかける路瓶。
「ドン釈って言ったな?」
「言ったが?」
「お前はドン釈と繋がっでいるんだな?」
「それがどうした」
「だっだら良い知らせがあるぞ!……ハアハア」
路瓶は倒れたまま不審者に問いかける。
「ドン釈は〝人造枠〟を回収したいんだろう?」
「…………」
「名案がある。ハアハア……その子らを逃がしてぐれだら、私が人造枠を……呼んでやる」
「何故お前がその事を知っている?」
「――昨日の学園内侵入事件だ。事件の一連の流れで……ハアハア……あんたらの目的が分かっだ。お前ら、人造枠を回収する際に〝赤西〟に止められたんだろう?」
「…………」
少しの沈黙。
「こいつらを逃がすか殺すかの判断は自分の役目ではない。だがとりあえず保留にしておいてやる」
「――どうするつもりだ?」
「俺の指示に従え。3人共大人しくついて来て貰おう」
路地の先にある車に乗り込めいわんばかりに、黒い車をゆび指す不審者。
「…………」
倒れ込んでいる路瓶に目線を戻す不審者は、彼を見ながら何かを考えている様子。
フラッシュバック
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男(不審者)
以下不審者の男とピエロメイクの人物の会話。
「ヒッシだね~★そんなにシャクちゃんにカちたいの?――それともナニかホカにモクテキでもあるのかな~?」
「お前は奴が率いる組織の幹部か何かなのか?」
「すぐにワかるよん★でもキミのゲンジョウはグレーゾーンなんだ~ごめんね。キミをフクめるとサンカシャはヨテイドオり、チョウド30ニンになるんだけどさ~」
「参加者?」
「でもキミのヤクワリはオわったカンもあるんだよね~ん……しょぼーん……」
「そのためのラストチャンスでもあり、裏ミッションでもあるわけか。――俺の命なんて消そうと思えば何時でも消せると言いたいわけだな」
「うんっ!」
「じ、冗談じゃない何を言っている!」
「ん?」
「せいぜい足元すくわれないように気を付けるんだな」
そう言い捨て個室から出ようとドアまで近づく男。その男の目から微かに涙が流れている。
「――せいぜいナンだって?」
「…………」
「まぁイいや。【スマートリー】のキがカわるマエにさっさとイきな」
自身をスマートリーと名乗るピエロメイクの人物。
『この悪夢を終わらせなければ!』
フラッシュバック終了
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堂島快跳へ戻る
左手で携帯を持ちながら、目の前の光景に唖然としている堂島快跳。
「親父……」
堂島の父親と通話をしている。
「足か。すぐに用意させるが迎えは5~6分かかりそうだ。何とか時間を稼ぐことは出来ないか?」
「そんなこと言われてもよぉ……」
「とりあえず、すぐに車のナンバープレートを控えろ」
「お、おう」
車のナンバープレートを見てみる。が、よく見えない。――それには、堂島快跳がもう少し近づく必要があるみたいだ。
「親父、一旦切るぞ」
「ああ」
親父との電話を切って恐る恐る黒い車との距離を詰めていく堂島快跳。
「あの仮面の男、右足を引きずってやがったな」
――嫌な予感
――背後に潜む
――魔の手
堂島の真後ろにフードを被った【監視者Ⅱ】が立っている!
「――ダ、ダレだ!?」
振り返る堂島!!
「てめぇはっ!!」
事態は悪化する一方!?
※後書き
第零話で初登場したピエロメイクのスマートリーの台詞には特徴があります。漢字で表記するところを全てカタカナ表記にしてあります。




