第十三話 『 臨時休校 』
神田病院にて!
創と高橋はナツの眠る病室に居た。時間は午後10時、病院名は『神田病院』。僕の母親とナツの母親も事態を聞いてすぐに駆けつけてくれていて、両母親は病室の外で話込んでいる。以下創とナツと高橋の会話。
「ハジメ?」
「ん?」
「ごめんね。私、また迷惑掛けてるよね」
「そういう気遣いはよしてくれ。僕だってナツに何度も迷惑を掛けてきたんだ」
「うん、でもさ、ごめんね。どうしても謝っておきたかったの」
「む、むしろもっともっと迷惑掛けさせてくれないと今までの借りが返しきれないかもなー!」
「――慰めてるつもり?」
「ああ、慰めてるつもりだけど?」
「――ふふっ」
一瞬だけどナツに笑顔が戻った。今日はそれだけで十分だろう。
「じゃあ僕達は一旦家に帰るからさ、また明日朝一に来る」
「うん。高ちゃんもこんな時間まで付き合ってくれてありがとうね」
「良いんですよ。私もまた明日、此処に来てもいいですか?」
「勿論よ!」
創が聞いた病院の先生の話とナツの話を繋げると、ナツはA塔からB塔まで不審者を追いかけて、B塔1Fのトイレ前にて不審者の不意をつかれ、眠剤を口元に当てられ、それを吸い込んでしまったために意識を失ったようだ。その後女子トイレ内にある清掃具の保管されている空間に入れられていた。
眠剤による後遺症の心配は無いらしく、明日にでも退院出来るとの事。創は表で待機していた母親と共に車で帰宅した。高橋も同じく。此処、神田病院には創のもう一人の幼馴染の亮介がいる。亮介の眠る病室の入り口まで来て病室に入ろうか悩んだ結果、室内に入らずに引き返す創。
亮介とはもう4年も会ってないんだよな。亮介の彼女であるナツから色々と話は聞いているけど……やっぱり今はまだ会う時じゃないよな?
車内では母親が心配そうにして、創に気を配ってくれたが、母親に最近の出来事についてほとんど言えずにいた。
希望ヶ丘学園はやむを得ず明日は〝臨時休校〟をとるという対応策にでた。その次の日は土曜日で学校はお休みになるのでこれから三連休という事になる。
時間を進めて翌日の朝
早々に支度を済ませ、ナツのいる神田病院に向かう創。神田病院までの片道は約1時間といったところか。神田病院に向かう途中電車内にいた創は、外の景色を見ながらこれまで起きた出来事について少し振り返ってみることにした。
振り返るべき内容を頭で幾つかまとめてみる。
・希望ヶ丘学園の入学式
・有馬駅連続殺人事件
・戦場むくろ殺害事件
・道化仮面の学園内侵入
Q1.上記4つの出来事の中で共通しているキーワードは……
※読者の選択肢(答えはチェックポイント2に記載)
1戦場姉妹
2記憶障害
3希望ヶ丘学園
4殺人事件
「――になるよな?」
それを踏まえた上で、何か陰謀があるのか検討してみよう。創らは何者かによる意思によって事件に導かれているかもしれない。彼らが気付かない間に何かに巻き込まれている可能性もあるとみて、どの人物によって僕の行き先を導かれていたのかを考えてみよう。
Q2.まずは希望ヶ丘学園の入学式から振り返って考えてみよう。
僕は何者かに導かれていたのかな。
※読者の選択肢(答えはチェックポイント2に記載)
1僕の意思
2謎のオンナ(シーー)
3菊池昭造
4失った記憶内
「――で良いよな?」
Q3.次に有馬駅連続殺人事件について振り返って考えてみよう。
僕は何者かに導かれていたのかな。
※読者の選択肢(答えはチェックポイント2に記載)
1僕の意思
2戦場貞子
3電話応答先の警察
4石川ナツ母
「――だもんな。間違ってないよな?」
Q4.次に戦場むくろ殺害事件について振り返って考えてみよう。
僕は何者かに導かれていたのかな。
読者の選択肢(答えはチェックポイント2に記載)
1僕の意思
2戦場むくろ
3青葉博文
4戦場むくろ殺害の犯人
「――って事になるよな?」
Q5.最後に道化仮面の学園内侵入について振り返って考えてみよう。
僕は何者かに導かれていたのかな。
読者の選択肢(答えはチェックポイント2に記載)
1僕の意思
2不審者2名
3黒いロングコートの男(舞園創はまだ彼の名前を知りません)
4路瓶孫
――って事になるけど、導かれていたというよりはやって来たって感じだよな?――それら4点を並べてみて共通する事柄は無いだろうか。
「うーん。僕の推理が正しければ、この4点に揚がっている人物の中で名前が分かっているのは〝1人〟になるよな。一応視野に入れておくか」
次は失った記憶、または気絶した時を振り返ってみる。そこから何か見えてくるものがあるかもしれない。
Q6.現段階でいくつ記憶喪失&気絶の事態になっただろう。
※読者の回答(答えは〝チェックポイント2〟に記載)
1希望ヶ丘学園の入学式の最中
2希望ヶ丘学園内に不審者がいるとの校内放送を聞いてる最中
3戦場むくろの自宅2階の窓にいた謎の人影の記憶
4有馬駅殺人事件で有馬駅に向かう最中
5戦場むくろの自宅の中の様子を見ている最中
6黒いロングコートの男のフルネームの記憶
7希望ヶ丘学園入学後の入学式に向かう最中
82度目の希望ヶ丘学園の入学式の最中
9希望ヶ丘学園入学式当日の前の一部の記憶
10希望ヶ丘学園の入学式後から保健室に至るまでの記憶
11僕のお父さんの記憶
12謎のオンナ(シーー)のフルネームの記憶
「僕の記憶が正しければ全部で〝6つ〟になるはずだよな」
僕が気絶した際に起きた出来事といえば、学園入学後はナツから全て聞いているはずだ。うーん、現段階では繋がってくるものが見えてこないな。でもこの整理は後々役に立つのかもしれない。この振り返った記憶がこれから失われたりして……なんてね。
それにしてもだ。最近意識を失ったり体が麻痺したりと倒れる事が多くないか?――希望ヶ丘学園入学前は年に3~4回あったくらいなのに…まだ入学してから2週間も経ってないぞ。そういや明日は診察日だったな。忘れないようにしておかないと。
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コロダレ小テストの説明
突然の選択肢&回答に少々驚かれましたか?――エピソード2に入ったので、読者様にはそろそろ本格的に推理していただく流れになります。そこで
〝選択肢&回答〟の簡単な違いを説明しておきます。が、その前に一つ追加。回答&選択肢や答えといった読者様に一方的に推理をしていただく〝コロダレ小テスト〟を設けさせていただきます。あくまで読者様の作者側に対する〝挑戦〟として設けたシステム。しかしこれらによって本編を足止めしてしまい、本来のストーリーの妨げになってしまう恐れもありますので頻繁に出すつもりはありません。
上記の内容を踏まえた上で話しを戻します。選択肢&回答の簡単な違いを説明しておきます。まず選択肢とは必ず〝4択〟が存在し、答えは必ず〝1つ〟になります。次に回答とは〝12回答〟が存在し、答えは必ず〝複数〟になります。複数の答えの数に決まりはありません。2つかもしれませんし9つかもしれません。このように選択肢と回答には若干の違いがありますのでご理解下さい。
なお、主人公が問題のすぐ後に発言する〝答えのような台詞〟が必ずしも正しいものとは限りません。あくまで読者様には〝推理する〟を前提にしていますので、主人公の発言に惑わされないように……
それから答えについてなのですが、答え記載場所に答えが並べられますが、その答えというのは〝現段階でのストーリーの答え〟とさせていただきます。つまり、後々の展開によってその答え自体が間違っている可能性もあります。展開の先読みをされている方には小テストによって逆に惑わされる可能性もありますかね。答えはあくまで現段階のストーリーから見た答えになります。
コロダレ小テストの説明は以上
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本編の続きに戻ります
時間を進める。舞園創、神田病院到着。すぐにナツの病室へと入室する。ドアをノックしてナツから入室許可を貰い、ドアを開ける。以下3人の会話。
「おはよう」
「舞園君おはようございます」
「ちーっす」
病室には高橋がいて、ナツは既に私服に着替えていた。
「早かったのね?」
「まぁな。僕が病院に着いた頃にはすでにナツは退院していましたなんてオチとか寂しすぎるだろうし」
「ぷぷっ!」
ナツが笑ってる。少しは落ち着いたのかな。――ってあれ、ナツの退院の支度が終わってる?
「おい、お前ひょっとして僕を待たずにさっさと帰るつもりだったな?」
「あ、バレた?」
「バレたじゃねえよ、どうすんだよ悲しすぎるだろ!」
「間に合ったんだから良いじゃない?」
「――おい高橋?」
じっと高橋を睨む創。
「わ、私は止めたんですよ!――誤解しないで下さい!」
僕との会話の高橋に、標準語が無くなっている……少しだけ悲しいかも。思い切って敬語に対してツッコミいれるか。
「高橋もそろそろ敬語で話すのやめたらどうだ?」
「え!」
「ハジメ、その話はもう良いの。ねー高ちゃん!」
「は、はい!――も、もう終わった事なんです!」
「は?」
二人は顔を合わせながら笑顔でいた。今朝にでも二人の間でどこか一線越えたのかな?
「は、は、は、ハジメ君は知らなくていいんだからっ!」
「――ハジメ君?」
高橋には初めて呼ばれたよな……下の名前。
「よーしその調子よ高ちゃん!」
「は、はい!」
「ふっふっふっふ」
「微笑んでる!」
さてやナツめ、何か企んでるな!――完全にイタズラしている最中の顔をしてるじゃないか!
「ナツよ、さてはお前高橋に何か吹き込んだな?」
「知ーらない♪さ、行こう高ちゃん♪」
「はい♪」
二人は手を繋いで病室を出て行った。――何も無い病室にぼっちの創。何となく足元を見てみるとズボンに朝食の卵のシミ発見。
「ふ、ふーん。ぼっちのパターンね。ぜっ全然効かないんですけど!」
創も病室を後にした。途中亮介の様子を見に行ったナツと、それに連れられる高橋。創は先に神田病院を出て行った。
「なぁ亮介、やっぱりお前の顔が見たいよ」
僕が亮介の立場なら来て欲しくない。〝3年ぶり〟の幼馴染との再開場所が病院でしかも意識不明だなんて。
「お前なら必ず目を覚ましてくれるって事で信じて良いよな?」
神田病院の入り口で2人を待っている創。携帯を取り出し日付を確認。ここで今が三連休中だということに気付く創。
10分後
「まだかなぁ」
20分後……
携帯をいじっている舞園。
「………………」
30分後……
「遅いな~~」
40分後…………
「あのヤロー遅せぇよ!」
何度もナツに電話しようかと携帯を構えていた。
50分後…………
「お待たせ」
「さすがに遅すぎるよ!――ねぇ何分待ったと思ってるの!?」
「ごめんごめん……悪気はないのよ」
「すみません」
「高橋が一緒に居ておきながら何たる仕打ちだ!――約1時間も待たされたんだぞ!」
「亮介さんの傍にいたナツが座ったまま寝ちゃって……」
「――は!?」
――亮介の傍で。た、耐えろ、舞園創よ!――ナツはきっと昨日の事件のせいで眠れなかったんだろう。だから彼氏であり幼馴染でもある亮介の傍に居て安心したのか、つい寝てしまったって事だろ。落ち着け僕!――さぁ今こそ伊達に今まで幼馴染をやってないんだってところを見せる場面だ!
「うう……に……にこぉ」
「うっひいっ!」
「うわぁぁ!!」
「さ、さあ行こうか!」
2人を誘導して歩き出す創。女子の間でヒソヒソ話が展開される。
「今の、怒りと笑いの感情が混ざったかのような顔は何っ」
「さぁ?――多分格好つけたんだと思います」
「無言だと整った顔してるだけに、インパクト半端なかったね?」
「はい。もうゾンビみたいでした!」
「何か言った?」
「い、いや!」
「お前らを1時間も待っている間にこんなもの見つけたんだけどさ!」
ナツ達に1時間も待たされた結果、3人でどこかに出掛けようと決めていた創。手にしていた携帯画面をドヤ顔で2人に見せつける!
「見ろ!――今年オープンしたペットとゲームセンターのコラボくうか……あ?」
ぷるるるる……着信中。
「画面?――『探偵路瓶さん着信』って表示されてるわよ?」
オイオイロビンさん、タイミングぅ!
「そうみたいだね……えへへ」
恥ずかしそうにしながら慌てて電話に出る創。
「も、もしもし!」
「ああ、路瓶だ」
路瓶とは昨日の晩に一度連絡を貰っていた。その時にナツが目覚めたことを伝えていた。
「先日はどうも」
「うむ。こちらこそ色々とすまなかったな」
「僕らのお話、少しは捜査のお役に立てそうですか?」
「う、うむ、そうだな。有難うよ」
「いえ!」
「今日は学校は休みなんだよね?」
「はい。今ナツの退院を終えて3人一緒に居ます。――あの、どうかされたんですか?」
「――うむ。申しあげにくいことなんだが、その、例の戦場むくろ殺害事件の翌日の事で……君達が戦場むくろ宅へ向かった際の出来事を再現して欲しいと私からお願いしていたであろう?」
「はい」
「今日にでも協力をお願い出来ないものかと思って連絡してみたのだが」
「――え、今日ですか?」
通話をしながらナツと高橋の顔を見る。
「3人で来てくれ。その、すぐにでも調べておきたいことがあるんでな」
「…………」
すぐに調べておきたいこと?――3人で来てくれだって?……3人って事は此処にいる僕と高橋とナツだろう。でもナツはまだ退院したばかりだぞ。昨日の事件の事もあるし、相当疲れているんだ。高橋だって昨日、突然意識を失っている。そんな昨日の今日で僕らに調査に協力しろだって!?
「ち、ちょっと待ってください、今本人たちに聞いてみます」
「ああ」
場面移る
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工場のような場所
辺りは薄暗く、奇妙な空気を帯びている。そこには2人の人物がいるようだが、見るからに様子がおかしい。
路瓶の両腕と両足がロープで縛られている状態で椅子に座らされていた。例の学園内不審者の一人道化の仮面が路瓶の真後ろで拳銃を構えている!
「シーーー」
舞園創との通話はスピーカーにしていた。しばらくした後に舞園創の声が薄暗い空間に響き渡る。
「分かりました、捜査に協力します。僕もロビンさんに一つお伝えし損ねた事があるんで!」
構える拳銃。その不審者は路瓶の頭を目掛け、今にも引き金を引くような勢いの緊迫した空気!!
路瓶の身に何が!?
※後書き
うちの妹に小説を見せました。くまおがお気に入りらしく、頼むからくまおを殺さないでと言われてしまいました。それぞれの人物の役割は既に決めてあるから約束は出来ないと言ってやりましたよ。




