第十一話 『 道化の仮面 』
ここからエピソードⅡに入ります。そろそろ重要人物の中でも事件の犠牲者が出るかもしれません。
本格的な悪夢!
場所はA塔内1F会議室より。路瓶孫と名乗る探偵が創らと接触し、戦場むくろ殺害事件の捜査をしている最中に事件は起こった。状況は突然の高橋の意識不明に加え、謎の人影が会議室の外にいるのに気が付き、ナツが人影を追って廊下へ出て行ったのだが。その直後に聞こえた女子女子生徒の悲鳴。会議室に居る創と路瓶は状況が全く呑み込めていない。
自身の身体が麻痺状態になっている創は、この状況をどうして良いのか分からないでいる。身動きがとれずに体を床に倒していた。全身に力を入れてみるが、起き上がることは出来ない。
「此処で待っていてくれ、すぐに戻る!」
「――はあはあ……はい」
路瓶はそう言い残して女子生徒の悲鳴が聞こえた方へ向かう。
「ハアハア……た、高橋……おい、だがはし!」
「…………」
返事がない。高橋は完全に気絶しているようだが……
「だがはし、返事をじろ!……ハアハアハア」
必死に高橋を起こそうと言葉を投げ続ける創。無理矢理起こそうと手を伸ばすが……指先が触れるか触れないかのところで届かない!
「ぐっぞおおぉぉ!」
ビーー……!――校内放送
「不審者が学園内に侵入しました!――生徒の皆さんは直ちに校舎の外に非難してください!――繰り返します!――不審者が学園内に侵入しました!」
「――ぶしんしゃだと!――だ、だがはし起ぎろ!!」
シーン移動
――――――――――――――――――――――――――――――
学園C塔校舎前
不審者が教師達から逃走している。その動きは素早く、C塔校舎前まで一気に押し寄せて来ていた。そこへ現れた教師2名。教師の一人は青葉先生のようだ。
「いたぞ、あそこだ!」
「そこの不審者、大人しくするんだ!」
一人の教師が不審者を背中から抑える!――だがしかしすぐに投げ倒される教師、次に仕掛けるは!
「そこの不審者、観念しろ!!」
不審者に向かう青葉先生。そして飛び掛るように不審者に挑む!
「ハアアアア!」
全身を使って不審者を押さえ込もうとする青葉先生。ぱっと足を掛けられ青葉の顔面を素手で軽く平手打ちする不審者。一気に体の重心を持っていかれてしまい、地面に倒れる青葉。
「あが!!」
青葉先生はその場に倒れたまま、苦しそうに足をバタバタさせている。その口からは突然の大量出血!
「――が痛ぎ……いい、え?……ゴハアッ!!」
出血が勢いを増す!
「は、歯がぁ!!――があ……な、何をじだああ!」
地面には青葉先生の歯が一本落ちていた。不審者はかまわず先へ進む。
「フー、フー……」
不審者の仮面から吹き出る息の不気味な音。
――校内放送
「不審者と思われる人物はC塔校舎前にいます!――生徒達は反対の校庭側校門から外に非難してください!――不審者と思われる人物の顔にはピエロのような仮面を付けています!――繰り返します!」
シーン移動
――――――――――――――――――――――――――――――
B塔内2F廊下
放課後だけあって、残っていた生徒が少ないのが不幸中の幸いだった。舎内には生徒の姿は見当たらない。路瓶は走りながら窓からC塔前を覗く。そこで校内放送で言われていた不審者と思われる人物を発見した。
しかしおかしな事に、路瓶の目の前にも同じ格好をしたピエロ仮面がいる。C塔校舎前にいる不審者と同じ格好をしていて道化の仮面を顔に付けたもう1人の不審者がいる。仮面柄も同じようだ。
※二人の不審者の見分けが付かないので、一時的に不審者Aと不審者Bに分けて呼びます。路瓶の目の前に居る不審者を不審者Bとします。
「同じ格好だと!?――ハアハア……ま、待ちなさい!」
「フーー」
路瓶は先程C塔校舎前に居た不審者とは別の人物を追っているようだ。――とその時。ぴたりと足を止める不審者B。
「フーー……」
「ハアハアハア……観念しろ!」
不審者Bはこちらを振り向くことなく立ち止まっている。今がチャンスだ!――よく見ると不審者Bの向かう先から何者かが近づいてるではないか。
ダスッ!――ダスッ!――ダスッ!
黒いシューズの靴を履いた男の大きな足音が、不審者が突っ立っている所の更に奥からやって来る。その男が近づけば近づくほど巨大な体格なのが分かる。男は黒い手袋を両手に着用しながらゆっくりとこちらに近づいてくる。
シーン移動
――――――――――――――――――――――――――――――
不審者A
場所はA塔入り口前。戦場むくろ殺人事件の調査中により既に学園に居た警察官は全部で4名。状況は警察官の圧倒的有利。4人の警察官が不審者Aを囲んでいた。
「もう逃げ場はない。ここは大人しく捕まっておいた方が利口だと思うぞ」
「さあ両手をポケットから出しなさい!――危険物があるのならただちに床に置きなさい!」
不審者Aはポケットに手を突っ込んだまま動かない。その様子を見兼ねた警察官達はお互いを目で合図して強制的に捕らえようと少しずつ近づいていった。とその時!――不審者Aが拳銃らしき物を取り出す!
「拳銃だ、構えろ!」
警察が拳銃を構え、銃弾を一発……パーーン!!
――警察官の銃弾が不審者Aの右足に命中!――しかし不審者Aはそのまま拳銃をある場所へ向ける、と同時に目の位置に見えるところにあった体育館倉庫が突然大爆発を起こす!
「何事だ!?」
警察が爆発された小さな体育館倉庫に数秒の間呆気にとられている隙に、不審者AはA塔内へ侵入するために窓硝子に一発銃弾を打ち込む。体ごと割れかかった窓硝子に向かって飛び込む不審者A。
「急げ、奴はA塔内に侵入した!」
警察もすぐに後を追う。廊下はすでに緑色の煙が充満していた。モクモクと警察官達の視界を塞ぐ。
「不審者の仕業か!?」
「奴はどこだ、どっちの方角へ行ったあぁ!?」
「二階か!?」
「応援はまだか?」
4人の警察は二組に分かれる。
シーン移動
――――――――――――――――――――――――――――――
A塔内1F会議室
「ハアハアハア……」
必死に意識を保つので精一杯の創。体中痺れて動かない体のまま、すぐ近くの爆発音が聞こえてしまいパニック状態に陥っていた。
「だ、だがばじ、おぎろ、おぎでぐれだがはし!」
「…………」
高橋は無反応のまま、創の手の届かないところで倒れている。
「だがはし!――はっ!?」
ガラッ!――ドアが開く音!?――何者かが会議室へ入ってきた。
「フーー」
息の荒れが悪化してしまう創の前に現れる不審者A。
シーン移動
――――――――――――――――――――――――――――――
B塔内2F廊下
状況は最悪なようだ。不審者Bにやられたのか、足を痛めてしまい床に倒れている路瓶孫。そこで繰り広げられているもの。倒れたまま〝二人の対決〟を見ている路瓶。
不審者Bの相手をしているのは何と、舞園創のクラスメイトの熊田威之助!――不審者Bの右手には拳銃が見える。
――短い沈黙。睨みあう両者。その時っ!!
パーーン!――銃声と同時に一気に押し寄せていたくまおが不審者Bの腕を捕る!――そのスピードに驚いた不審者Bが一歩下がる。慣れた動きで捕まれたままの不審者Bは華麗にバック転をしてくまおの手から離れる!――拳銃を構え直す不審者B。だがしかし、既に不審者Bの目の前まで接近しているくまお!
「なっ!?」
くまおの渾身の回し蹴り!――必殺技1【あしおどうざん】発動!
拳銃ごと腕を蹴り飛ばされ宙に浮く拳銃。目で追い付こうと一歩下がる不審者Bにくまおの右ストレート!――ギリギリのところでしゃがんで攻撃を避ける不審者B!
不審者Bの左手から光る物が見える……それに気付く路瓶孫がくまおに大声で警告する。
「あいつ!――刃物をもっているぞ!!」
「――!!」
「フウウゥ!!」
――グサッ!!――くまおに飛び掛った不審者B……両者無言……不気味に微笑む不審者B。――くまおがナイフで刺されている!
「………………」
「――な!」
「――ん?……キィッ!!」
不審者Bはそのナイフを落として、慌ててくまおから離れる。
くまおの表情は何一つ変わらない。――よく見るとくまおの体は出血をしていなかった。と不意にくまおが突然上着の制服を脱いでそれを見せつける。くまおが体に装備していたもの。それは防弾チョッキだ!
「防弾チョッキ!」
「………………」
両者またも無言の睨み合い。二人の闘いっぷりに呆気を取られる路瓶。
「何者だあの巨体の生徒。この学園の生徒だよな……」
沈黙を続けていた不審者Bがくまおに言葉を投げ掛ける。
「あんたは何を守ろうとしているの?」
「…………」
「只者ではないのは一目瞭然。さてはあんた、闇を知っているね?」
低い声でくまお。
「道化の仮面で自身を覆ったお前に答える事など何も無い」
「へっ問答無用かい!」
ならば戦闘の続きをしようと言わんばかりに不審者Bが走ってくまおに向かう!――受けて立とうとくまおが戦闘態勢を構える。
「――フウウウウウッ!!」
「………………」
接近する二人!
シーン移動
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A塔内1F会議室
「――ハ……ハ……な、なぎものだあ、おまげぇは!?」
創の前に突然現れたピエロの仮面の不審者Aは、会議室に入室するや否やドアを閉め鍵を掛けた。その不審者Aは右手に拳銃を所持。右足は大量出血をしていた。左手に通信機を持って何者かと会話を始めたのだった。
『――ああ、見つけたよ。間違いない。【人造枠】だ』
高橋はまだ意識を取り戻せないでいる。
「ぐっぐそ、何なんだ僕ば、どうしじまっだんだ!?――お、おいだがばし、だがばし!!」
「…………」
「同室に希望ヶ丘の男子生徒もいる。こいつはどうすれば良い?」
不審者Aは、右足を引きずりながら創の元へ近づく。
「――了解」
通信相手に何かを了解した不審者A。
「何なんだおべぇば! ぼぐだちになにが用があぶのが!?」
「貴様に用など無い。――悪く思うな」
不審者Aは、右手に所持していた拳銃を創に向ける。
「ばっがや、やべろっ!!」
「…………」
不審者Aのフラッシュバック
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男(不審者A)
奇妙な個室にて。そこには一部の床に穴が開いていた。2人の人物がいる。片方はロープでグルグル巻きにされて目隠しされて椅子に座っている男。もう一方はピエロメイクの顔の人物。以下二人の会話より。
「ツギはナ~いか~らね~ん★」
「何だ、何が起きた?――今の男の叫び声は何だ!?」
「キミのダイジなヒトがシんだんだよん★」
「はっ!?」
「サイゴのチャンスをあげるんだから、それなりのダイショウはハラってモラわないとね~?」
「ふざけるな!!」
「キミにサイゴのチャンスをあげることにしたよ。ナンイドのタカいミッションになるけどやってみるかい?」
「…………」
「【シャクちゃん】もきっとヨロコぶとオモうよ~ん★」
「――何をすればいい?」
『しくじるわけにはいかないッ!』
フラッシュバック終了
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シーン戻る
舞園創に拳銃を向けている不審者A。
「…………」
「うわあああぁぁ!!」
パアアーーン!――銃声が一発、響き渡る!――近くにいた警察官達はすぐに今の銃声に気が付く!
「じゅ、銃声だ!」
舞園が撃たれた!?
※後書き
舞園創の名前の由来は、金田一少年の事件簿から取っています。堂本剛主演のあのドラマは当時幼かった自分には刺激が強すぎたので、軽いトラウマになりますが、ハジメちゃんが好きで我慢してよく観ていました。




