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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
◆サイドストーリーⅠ
14/43

6人目

 まずは6人目、堂島ドウジマ快跳カイト


 なぁ、お前は何になりたいんだ?

「俺は」


 夢を見るのは簡単だ。だけど夢ばかり見てもいられない。

「そうだな」


 堂島の思い出内でダレカと会話をする。


 お前がなりたいと思ってるものを形に出来るかどうかはお前が決める事では無い。お前は与えられた選択肢を受け入れるんだ。そして選べ!――お前が目指すべき道は、その先にある。

「俺にだってわかんねーんだ」


 ならば迷うな!自分の使命を忘れるな!

「別に迷っちゃいねーよ。俺はただ……」


 自分が何をしたいのか分からない……と言いたかったけれど、唇を噛み締めて心の中に留めた。――そんな彼を変えたのは中学1年の頃だった。


 3年前。当時中学1年生の堂島快跳。場面は放課後の体育館にて。当時の堂島は、バスケ部入部して間もなくのバスケ素人だった。そんな堂島の特徴あるツンツンに立てた髪型が中学の生徒達には目立って見えてしまい、密かに学校中で有名になりつつある頃。以下バスケ部員の先輩3人と堂島の会話より。


「――見ろよあいつ」


「ああ、あの1年の堂島か」


「今日は髪ツンツンにおっ立ててるな!」


「そうじゃねぇ。見ろよ、初心者のくせにあのバッシュ」


「うわ、『ナイキのエアジョーダン6の白赤』じゃん!」


「エアジョーダンなんてド素人の1年坊主が履く品じゃないよな?」


「あいつさ、態度でかいし生意気そうな奴だよな!」


「ああ、このバスケ部にあんなチャラけた奴なんて必要ねぇって事をしっかりと教えておいてやらねぇとな」


 噂をすればこちらに向かって走って来る堂島快跳。


「先輩ちーっす!――どうもどうも、昨日は球拾いもロクにできなくてすいませんでした。今日こそは練習試合に参加しても良いんスよね!?」


「なに?」


「部員たちに見せてやりますよ、この俺の実力を!」


「実力ってお前まだ初心者だろう?」


「ノンノンノン、昨日寝ずに特訓したんで大丈夫ッス!――今度こそビシっと決めますんで任せてください!」


「あのなー堂島。1日足らずの練習でそう簡単に上達するわけないだろう」


「バスケをナメてんのか?」


「ナメてませんけど俺に不可能は無いッスよ。〝1off2〟でしたっけ。誰か練習開始時間まで相手してくれません?」


「〝1on1〟な?」


「あーそうそうそれだ。どうッスか一発!」


「ド素人の1年坊主とやったって準備運動にもならねーよ」


「はっ」


「――そういうわけだから、やるなら他の奴とやってくれ。くれぐれも2、3年の練習の邪魔にならないようにな」


「――だってこの部の中では先輩たちが一番上手いじゃないッスか。やるならこう……手ごたえのある相手じゃないと」


「――手ごたえのある相手だぁ?――おいゴラ!」


 いよいよキレる先輩A。堂島の胸倉を掴む。


「うっ……なんスか?」


「調子に乗ってんじゃねーよ1年坊主のヒヨっ子が!――てめぇみてぇな青っカスの相手をしてる暇ねぇーから、二度と俺らに話しかけるな!」


 ――とその時だった。1人の男が待ったを入れた。


「胸倉を掴むのはどうかと思うぞ?」


「あん!?」


「良いから放してやれよ」


「――ふん!」


 先輩Bに止められた先輩Aは、先輩Cを連れこの場から離れた。離れ際に一言……


「お前みたいな勘違い小僧は目障りなんだよ!」


「…………」


「――気にするな。それより良ければ俺が相手してやるが?」


「――え、良いんスか!?」


「全力でかかってこい!」


 1on1に付き合ってくれた先輩B。10点勝負で結果は無得点10失点に終わってしまい堂島の惨敗。


「ハアハア……ど、どうしてだ、何でシュートが決まらない!?」


「――今の段階ではお前はまだまだだ……ていうかルールすらまともに覚えてないみたいだな。まずはバスケのルールをきちんと覚えて来い。俺の見る限りだとお前はバスケの素質があると思うぞ」


「え、素質ッスか?」


「お前は中学の3年間の全てをバスケに捧げろ。そうすればきっと道は開ける!」


「3年間……俺の道……」


 少しの間沈黙が続いた。そして……


「せ、先輩。1on1の相手してくれてサンキューでした」


「おう、また今度やってやるよ。その時はもうちょいマシなプレーをしてくれよ?」


「当たり前ッスよ、先輩も覚悟してて下さいね!?」


「おうおうその意気だ!」


 堂島快跳。彼の中学バスケットボール生活の幕開け。彼に夢を追い続ける強さ、未来を切り開く厳しさ、その先にある希望に満ちた青春時代そのものを一から学ぶ事になる。いつかきっと、先輩のようになりたいと心から願うのであった。ちなみに彼はバスケ部の練習を一度も休んだ事がない。


 3年前はここまで

――――――――――――――――――――――――――――――

 2年前


 全国中学校バスケットボール大会にて。第1予選会場は熱気に包まれ観客席は応援と大歓声いっぱいで盛り上がっていた。シーンは神奈川県より【柏中学】VS埼玉県より【東原中学】の試合。後半戦残り1分、得点は柏61-64東原。


 堂島のボールを必死に止めようと追いかける東原中、ゴールは目前!


「ディフェンスだー長嶋!」


「うおおおお!」

 

 残り50秒……


 誰も堂島に追いつけない中、ゴール下で構える巨体の長嶋!


「さあ、かかってきやがれヘナチョコ!!」


「ハアハア……じゃあお言葉に甘えて♪」


 ゴール前でジャンプする堂島、それに続く長嶋!


 飛ぶ巨体長嶋が魂の雄叫びを挙げながら両手を広げて堂島のシュートコースを塞ぐ!――そこへ1人の選手が右サイド後ろからの小走り。右後ろに居るのは柏中の選手。一瞬の判断で冷静にパスを送る堂島。柏中学チーム選手、そのままシュート!


「シュート!?」


「スリーポイントシュートだ!」


 シュートの瞬間の時間が止まる感覚……ゴールに向かう希望のボールの行方は……


 スパッ!!――綺麗なシュートが決まり3得点ゲット!――観戦席が今日一番の盛り上がりを見せている。


「ナイスシュートだ〝小阪〟」


「よっしゃあ!」


 観客席より


「あのユニフォーム5番の堂島って奴、結構やるじゃねえか」


「ああ、この試合でアイツは一番目立ってる」


「13番の小阪のスリーポイントも綺麗なシュートだったな」


「ほとんど5番と13番のコンビプレーで柏中は点を稼いでるな」


「柏中には身長のある奴がいないからな……」


「ああ、点を取ったら取られるの繰り返しで点を引き離すことが出来ないんだよなあ」


「惜しいとこだな」


 試合の結果は柏中学66点-東原中学68点で東原中学の勝利。堂島快跳の中学バスケ部はこの試合で幕を閉じた。この時堂島は〝ガードクール〟の異名で有名になったのだ。


「今に見てろよ、先輩、親父、母ちゃん!――俺は高校でNBA目指して頑張るからよ。未来のスーパーバスケットマン堂島快跳に期待していてくれ!」


 『お前は何になりたいんだ?』


「俺か……」


「俺は、自分の未来を自分の手で切り開ける人間になりたい!」


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