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コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「黒い家と殺人事件」
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第十話 『 異人の誘い 』

 創達と探偵!


 シーンは続けて会議室。僕は探偵と名乗る路瓶さんに昨日の出来事を説明した。


 ・戦場むくろ宅に行った時刻

 ・訪問の際に戦場むくろの自宅の電話が鳴っていたこと。

 ・訪問したが留守であったこと。

 ・二度の足音を聞いたこと。


 以下、創とナツと高橋、そして探偵の路瓶の計4人の会話より。誰が発言しているのか探ってみましょう。


「――ふむ、やはり君らが訪問した時刻には既に……」


「戦場むくろは亡くなっていたという事ですね?」


「そうなるな。そこで確かに誰かの足音を聞いているのだな」


「はい。一度目は階段で二階へ急いで上がったような音に聞こえました」


「足音が上に向かっていくのが分かりました」


「僕ら三人それについての意見は一致してます。そして二度目の足音は二階からしました」


「ふむ。では何者かが戦場むくろの自宅にいたということになるな。その何者かは君達が訪問してきたのに気付いて慌てて二階へ移動した。君達はその者の確認はしなかったんだな?」


「はい」


「なるほどな」


「――どういう事でしょうか」


「戦場むくろは自宅で何者かに殺害された可能性が極めて高い。君達の言う足音を残した人物が事件に関与している事は間違いないだろう。だとしたら何が目的だ……」


 創らはもう一度戦場むくろ殺害事件の詳細書に目を置いた。


 戦場むくろ殺害事件 戦場むくろ(15)死因は不明

 死亡推定時刻は2日前の午前1時半頃。死体発見場所は戦場むくろの自宅1階のリビング。第一発見者は近所の住人。警察によると死体の状態から殺人事件とみて間違いないとの見解。


 死体の状態は、口は粘着テープで塞がれており、手足はロープで縛られていた。更に首を絞められた跡があり、右腕は打撲している。事件のものとは別に古傷で、両腕に無数の切り傷の痕がある。死体周囲の状況は、死体の側に血が付着したナイフが落ちていた。部屋は荒らされている状態で、電話回線は切られていた。


 警察の回答によると、被害者は戦場むくろであるとの話だがその本人証明は出来ていない。戦場むくろの両親は共に不明。なお、今回の有馬駅連続殺人事件の主犯者本人の情報によると、戦場貞子の双子の妹こそが戦場むくろであるとのこと。戦場貞子は逮捕されている。

 

 その内容を読んでから幾つかの疑問が生まれる創。


「あの、死因は不明ってどうしてですか?」


「どうもこうも、残念なことにそのままの意味でね、分からないんだ。私も直接現場に行って捜査したわけでは無い。あくまで警察の情報を頼りなんでな」


「検死の結果が出ていないということですか?」


「検死の結果を見直す必要がある段階らしい」


「そうですか」


「そこは警察の方に任せるしかないですね」


「ああ」


「なるほど。次良いですか?」


「何だね?」


「戦場むくろの死体状況のところに事件のものとは別に古傷で両腕に無数の切り傷があるって書いてありますがこれってどういう事何ですか?」


「うむ。古傷ということは、昔の傷が痕になって残っている状態という事になるな」


「それで事件には関係ないってことですか。するとその傷は……」


「両腕に無数の傷、刃物のようなもので切ったように見えること、両腕だけにその傷が密集して出来ていること。以上のことからリストカットの可能性が高い」


「リストカット……つ、つまり?」


 高橋が割って入る。


「戦場むくろは過去に何度も自殺をしようとしていた、という事になるよね?」


「一概にはそうとも言い切れないんだな。古傷に関しては恐らく事件に関係していないだろう」


「ですかね」


「それよりもだ。――犯人はどうして電話の回線をわざわざ切りに戦場宅まで引き返したのか」


「え?」


「戦場むくろさんの自宅の電話回線は死体発見時には切断されたようですもんね」


「――僕らが戦場むくろの自宅に訪問した際に鳴っていた電話、あれは間違いなく戦場家の自宅の着信だったよね」


「ほう」


「確かに不可解な点だな。犯人はなぜわざわざ電話の回線を切断する必要があったんだ」


「――ん」

「ん?」


「果たしてそれは戦場むくろの自宅電の着信音だったのか?」


 確定だと決め付けるにはまだ早いと言わんばかりの路瓶の指摘。


「私たちは戦場むくろさんの自宅から電話が鳴っているのを聞いています」


「それを見たのかい?」


「――自宅の電話機は確認していません。でもそれってどういう事でしょう」


「これは推測に過ぎないが、もしもだ。もしも戦場むくろを殺した犯人がそう仕向けたならどうだ?」


「仕向けた?」


「私たちに自宅の電話が鳴っているのだと誤認されて、死体発見時に回線が切られていたら、犯人は殺害の1日後に引き返したという誤認が生まれます」


 高橋がまとめる。


「つまり犯人は殺害翌日に戦場むくろの自宅に再度訪れていると思わせたかった、という事になりますね?」


「そういう事だ。説明有難うよ。」


 ――犯人が仕掛けた罠だというのか?――だ、だとしたら僕達が玄関を通った時にはすでに犯人は僕達が戦場むくろの自宅を訪問していたことに気付いていたという訳だよな。


「なら、あの足音はどういうつもりでしょうかね?」


「そうなんだよな。僕らが聞いた足音はなんだかこう……驚きのあまり急いで二階へ上がったような」


「ふむ、もし電話の着信が他の電話の音であるのなら犯人は誰かをすでに待ち伏せて電話の音を聞かせるつもりでいた」


「そ、そんな人物が足音を響かせてまで隠れようとした……」


「この場合、犯人が用意周到なだけに隠れるために急いで二階に上がったようには思えないわな」


「はい。見つからないようにしておくならあらかじめ隠れておくべきですもんね」


「犯人かどうかはまだ分からないけど、その足音をたてた人物がもしもそれも私たちを誤解させるように仕組んだ……計画的なものだったらどうかな?」


 高橋の推理が始まる。思い付いた事を次々と話す高橋の積極性は、普段の彼女には無い意外な一面。


「なっ!?――あれも仕組まれていたってことか?」


「推測に過ぎないけど可能性がゼロとも言えないよね?」


「そうだな。これはひょっとすると、既に君たちも事件に巻き込まれるように仕組まれていたという可能性も考えられるな」


「わ、分からない……だとしたらどうして僕らなんでしょう?」


「それは此処で話していてもわからんだろう……という訳でだ」


 路瓶は創らの顔マジマジと見る。


「君らにはひとつ捜査に協力してもらいたい」


「え?」


「昨日あった出来事を今日同じ時間に再現してもらいたいのだ」


「再現ですか」


「うむ」


 創は二人の様子を伺った。


 ――高橋、彼女は先ほどから第一印象とは違った一面を見せている。内心僕は驚いている訳だが……いつものあの固い感じは抜けていて、いつにも増して真剣な表情をしている。――ナツはさっきから全く言葉を発していない。彼女には荷が重過ぎるか。


「どうします、舞園君」


「………………」

 このまま捜査に参加して良いのか?――何かもっと事態が悪化していくような……そんな気がしていた。このまま3人で行動を共にするのは危険かもしれない。


「――探偵さん。捜査に協力するのは、僕一人で良いですか?」


「え?」


「あの時僕は戦場むくろの自宅前で一度倒れてしまい、気を失ってしまいました。でもその時の状況は、ナツや高橋から細かく聞いています。僕一人でも十分再現出来るかと」


 しばらく沈黙を続けていたナツが、創の提案を聞いて口を開く。


「――な、何を言い出すの!」


「お前らはもうやめておけ」


「はっ何で!?」」


「ここから先は僕の安易な行動になる。お前らを巻き込むつもりはない」


「何を言ってるんですか!」


「突然何を言い出すのよ、ハジメ!」


「これ以上踏み込むのは危険なんだよ……僕はただ路瓶さんに協力するだけだから。無理はしないから心配するな」


「心配しない程度なら私が同行しても良いわよね?」


「お前さっき言ってただろ。僕たちは知らず知らずのうちに妙な事件に巻き込まれているって!」


「…………」


「ここからは僕の単独行動だ。さあ刑事さん!」


「探偵で」


「あ、えと探偵さん!」


「路瓶で良いよ」


「ロビンさん!――さっそく向かいましょう!」


「ちょっと待ちなさいよ!」


 創の腕を掴んで、止めようとするナツ……その直後に!


「――!!?」


 苦しそうな声をあげてから意識を失う高橋!――身体の力が抜けて、座っている椅子から倒れ……かけたところを創が抱きかかえる!


「――っ!……お、重い!」


 重い重い重い重い重い!……何だこの重さ!――5、60キロなんてものじゃないぞ!――どうなっている、こんなに細い体で身長だって低い高橋が。


 ――あまりの重さに高橋の体重を支えきれなかった創は、高橋を支えきれず、床へ倒してしまう。


「ちょっとハジメ、何してるのよ!?」


「高橋さん!?」


「――お、おい!」


「…………」


 意識を失っている高橋。路瓶が高橋の元へ駆け寄って高橋の体を起こそうとするが、体の重さで難しそうだ。


「な、何だこの重さは……」


 ――それは創らが見てきた高橋の小さくて細い体格とは違った重さ。その体格からして想像も出来ない重たい体。


「――ん?」


 ――会議室の窓には謎人物の人影が!――創は、すぐに人影の見える窓をゆび指す!


「人影!!」


 高橋を抱える路瓶は身動きがとれないでいる。代わりにナツが急いで廊下を見に行く!


「ダレかいるの!?」


 そのまま廊下へ出て何者かを追いかける!


「ちょっと、ハジメ君、ハジメ君!!」


「――くそっ!――何でまた……」


 今度は創の様子がおかしい。急な目眩と身体の神経が麻痺していく感覚。意識を保ったまま体を倒す創の表情はとてもキツそうだ。と次の瞬間!――今度は女の悲鳴が響き渡る!――その悲鳴は廊下中に響く明らかな非常事態。突然意識を失う高橋と、身体の神経が麻痺してしまった創。廊下へ一人出て行ったナツ。謎の人影に女の悲鳴。明らかに何か起きようとしている嫌な予感!――探偵路瓶はどう動く!?


 一体何事!?

 ★エピソードⅠは以上となります。

 重要人物生存者残り30人(29人)

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