表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コロシタノダレ ~悪夢の学園と落とした記憶~  作者: まつだんご
―エピソードⅠ― 「黒い家と殺人事件」
10/43

第九話 『 路瓶孫 』

 新たな人物登場!


 シーンは有馬駅連続殺人事件が起きた日の深夜までさかのぼる。

 場所は神奈川留置場【Seatシートの間】より〝私〟と〝彼〟の会話より。


 私は薄暗い面会室にいた。彼は窓越しで椅子にもたれ掛かってる。彼との接触は今回で二回目になるわけだが……今日の彼はご機嫌斜めの様子。


「――やぁ、調子はどうだい?」

「…………」


「何だよ浮かない顔をして」

「…………」


「私は君と話がしたい。今日こそは君の話を聞かせて貰うよ?」

「…………」


 黙り込んでいる彼。


「いやぁ、それにしても君たちのおかげで外はあの有馬駅連続殺人事件で大騒ぎをしているよ。正直私も驚いた。まさか君たちみたいな〝グループ〟が独自で動いていたなんてさ」

「…………」


「私としては〝最悪の事態〟だけは避けられたようにも思えたが。最悪だ

がな。――君らの事だ、結果これで良いんだろう?」


 すると彼は舌打ちをする。


「――まどろっこしいのは嫌いかい?」

「…………」


「――どうだい、ここは一つ取引をしないか?……君たちは優秀な人材だ。ただしそれは裏の世界に限るがな。表の世界での君たちの行動は一般的に見てもクズ同然の殺人鬼でしかない。だが、この私がいくらここで君らをクズ同然と訴えようとも耳を傾けてはくれないのだろう?」

「…………」


「私は君に罵声を浴びせにここへ来たのではない」


「――ふっ」


「――ん?」


「さっさと用件を言ったらどう?」


「おっと!――これはこれは、昨日はだんまりだったのに気でも変わったのかな?」


「あんた【路瓶】って言ったよね?」


「ああ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 路瓶ロビン ソン(36)

 男性 身長180cm 体重69kg

 職業は探偵 〝真実こそが正義〟がモットー

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「昨日、あんたの後に面会した人にあんたのことを色々聞いたよ」

 そう言って窓越しに微笑みながら体を寄せて来る彼。


「あんたはずっと追ってるんだってね?」


「何をだい?」


「何を?――あんたが追いかけるものと言ったら一つしかないじゃないか」


「…………」


「それとも、それは隠したい真実だったかな?」


「――は、ははは……なるほど、私の行動は筒抜けだったか、はは……」


「あれぇ嬉しそう、それは演技かな?」


「――その面会した人物は一体何者なんだろうかね。こんな一匹狼をリサーチして」


「じゃあそれが真実なんだね。あんたはあの御方を追っているんだ」


「――そうだ、私は君らの慕う【ドン釈】を追っている」


「逮捕したいの?」


「それが最終目標だ」


「最終目標?」


 路瓶の話を聞いた彼は、不気味に笑う。まるで夢物語を聞かされているようだと言わんばかりの反応。二人の接点はどうやら〝有馬駅連続殺人事件〟だろうが、路瓶の言う取引とは一体何なのだろうか。それに路瓶が面会する彼は有馬駅連続殺人事件と何らかの繋がりのあるグループに属しているとの事だが。不気味に笑い続ける彼の反応を見た路瓶は考えが変わったのか、Seatの間を後にしようとする。二人の会話が続く。


「――まあ良いよ続けて、ふふ」


「――どうやら外の情報は、君たちに垂れ流しされているようだな。その面会したっていう人物に。……取引の話は無しだ」


「あら?」


「どうやら私は、君達に安易に接触してしまったようだ」


 面会室を後にしようと席を立つ路瓶。


「もう行くの?……残念だなー、もう少しお話聞きたかったのに」


「話すことなど何も無い!」


 何かに気付いたのか、怒りを隠しきれない様子の路瓶がドアノブに手をかける。


「戦場姉妹は命を絞るだけ絞って捨てられちゃったね」


「お前ッ!!」


 入り口のドアを思いきり蹴る路瓶!


「クックックック」


「殺されたっていうのか、ん?……どういう意味だ。答えろ!」


「君が僕から聞きだしたかった情報はズバリ僕の名前でしょ?」


「――っ!」


『僕の名前は【未来】だよ』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 ?? 未来ミライ(17)

 男性 身長177cm 体重62kg

 神奈川留置場に収容されている

 銀髪で不気味に微笑むのが特徴

 血筋はスペイン人と日本人のハーフ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「僕からも一つ聞きたいことがあるんだけど。あんたはどうしてドン釈を逮捕したいの?」


「言うまでもない」


「本気なんだね?」


「だったらどうだと言うんだ?」


「いや、言いたいことは無いよ?」


「答えろ。戦場姉妹は亡くなったのか?」


「すぐに分かるよ。そろそろだからね」


「そろそろって何がだ!?」


「――計画通りにいけば……そろそろ妹の方が殺されるはずだよ」


「――っ!?」


「正確には妹とも少し違うけどね?」


「――どうしてその計画を私に教えた?」


「さあ、何でだろうね?」


「――くそっ!」


 状況を素早く把握した路瓶は慌てて面会室を飛び出す!――無我夢中に走る彼の目指す場所は、やはり戦場姉妹の元であろうか。Seatの間では、一人取り残された未来の不気味な微笑みが続く。


 数日後

――――――――――――――――――――――――――――――

 場面戻る(舞園創)


 時間は放課後まで進める。創とナツと高橋の三人は青葉先生に言われた通り職員室へ向かった。職員室に着くや否や青葉先生に先導され、会議室に入室する。室内には誰もいないようだ。以下創ら3人と青葉先生の会話より。


「君たちも災難であったな。まさかこんな事になるなんて。君達はあれから戦場さんのご自宅に行ったのかい?」


 そう言って椅子に腰を下ろす青葉先生。創らも続けて座る。


「はい」


「――誰かご自宅に居たかい?」


「インターフォンを押したけれど誰も出ませんでした」


「留守だったんだね。――つまり、君達は昨日戦場さんと会っていないんだね?」


「そうですね」


「そうか」


「あの、戦場むくろは本当に亡くなったんですか?」


「――嘘を言ってどうする」


「…………」


 ――室内は少しの時間沈黙になる。


「彼女は昨日の晩に亡くなっているのを自宅で発見されている」


「自宅でですか!?」


「ああ。警察の調べによると殺人事件とみて間違いないらしい」


「そんな」


「つまり、その……」


「――警察に色々と事情聴取をされるという事ですね」


「そうなるな」


「校門前にパトカーが停まっているのも見ました。警察はもう来てるんですよね?」


「それはそうだが、警察は今戦場さんを知る生徒達から話を聞いている最中だ。――先客が来ている」


「先客?」


「少し待っていてくれ」


「分かりました。あの、警察ではないんですね?」


「〝探偵〟の方だよ」


 青葉先生は立ち上がり会議室を出て行く。


「探偵……」


「――な、何を聞かれるんでしょうね」


「昨日僕らが戦場むくろ宅へ行った話の全てだろ。一から十まで事情を聞かれるさ」


「――ね、ねえ二人とも?」


 石川ナツ。二人の顔色を伺いながら恐る恐る話を切り出す。


「わ、私また二人を巻き込んでないかな……」


「何だよ急に」


「だってそうじゃない!――私が戦場むくろの自宅のドアを開けたのよ。そのせいで変な足音も聞いた。ねぇ私達って殺人現場に行ったことになるわよね!?――私が勝手に入り口ドアを開けたせいで……このままだと二人を巻き込む事態になってしまうわ!」


「――良いから黙ってろ!」


「私のせいで、二人に変な容疑をかけられるかもしれない!」


「黙れ!!」


「…………」


「起きてしまった事を今更後悔しても仕方がないだろ!」


「でも!」


 ――すると突然会議室入り口のドアが開くのと同時に男の声で石川さんに言葉を投げる。


「心配には及ばないよ石川さん」


「え、あ、あなたは」


「警察?」


「いや」


 突然言葉を投げてくるは謎の男。隣に青葉先生もいるが……青葉先生がさっき言っていた探偵のようだ。


「青葉先生、ご親切にどうも有難うございます。ここからは私めにお任せ下さい」


「はい。三人とも、彼がさっき言った探偵さんだ」


「路瓶孫と申します。」


「ご無礼のないようにな」


 青葉先生は入り口ドアを閉め、会議室を後にする。室内には創ら三人と路瓶孫と名乗る探偵の計4名。以下4人の会話より。


「君がハジメ君だね?」


「はい」


「君が石川ナツさんで、君はえっと、高島さんだね?」


「高橋です!」


「あはは、冗談だよ」


「なっ」


「さっそく本題に入っていいかい?」


 ふとナツと高橋の様子を見る創。ナツの様子がおかしい事に気付く。


「ナツ?」


 ナツは刑事の顔をじっと見つめて何か物言いたそうにしている。


「おいナツってば!」


「――ん、ああごめん」


「では始めよう。話は他でもない。戦場むくろ殺害事件について君らに幾つか聞きたいことがある」


 探偵が一枚の紙を取り出し、それを創らに見せるようにして置く。


「これは戦場むくろ殺害事件の簡単な詳細になる」


「戦場むくろ殺害事件……」


「君たち学生には少々重たい話になるやもしれん。私も色々悩んでな、大分は配慮してまとめたつもりだ」


 路瓶の見せた用紙の内容は以下の通り。


 戦場むくろ殺害事件 戦場むくろ(15) 死因は不明

 死亡推定時刻は2日前の午前1時半頃。死体発見場所は戦場むくろの自宅1階のリビング。第一発見者は近所の住人。警察によると死体の状態から殺人事件とみて間違いないとの見解。その下に、戦場むくろの死体状態についての詳しい説明が記載されている。


「おっと……その先は君たちにはちょいと残酷な内容かもしれない。そこまで読んで貰えれば十分だよ」


「あの、探偵さん」


「ん?」


「僕らは昨日戦場むくろの自宅に行きました」


「ああ、聞いている」


「ここには大まかな事件の内容が書いてあるんですよね?」


「そうだね」


「僕ら三人は昨日、戦場むくろの自宅を訪問しました。ですが誰も出てきてくれませんでした。――だけど僕らは……」


「ハジメ?」


「あしお!……とえ?」


「そういう話はまず警察の方に言った方がいいんじゃない?」


「え?」


「むやみやたらと情報を口外しちゃ駄目よ。この方は探偵だと名乗っているけど、何か身分のような物も見せてくれないし、信じていい保障はないわ。探偵とかいうのも本当かどうかも分からないじゃない」


「…………」


「すまないね。いわゆる一匹狼の類でして。その……身分になる物といえば運転免許くらいしか……」


「それじゃぁ一般の人と何も変わらないじゃない。そんな人物に事件に関わりがありそうな情報なんて提供出来ないわ」


「おい、ナツ?」


「人の命が関わっているのよ!」


「…………」


「――なるほど。こんな事態だ、警戒するのも無理ないか」


 ナツの言い分も一理ある。探偵と名乗るこの男が味方であるとは限らない。最悪の事態も想定しておかなくてはならないという訳か。――それにしても……ナツの様子がおかしいのは探偵が不審だからなのか?


「――でも」


 突然高橋が会話の間に入る。


「ん?」


「私たちには疚しい事がありません。探偵さんが何者であろうと隠す理由は無いかと思います。むしろこうやって私たちが真実を隠すことによって生まれる敵こそが危険では無いかと思っています」


「どういう事?」


「最悪の場合、私たちの情報欲しさに命を狙いにくる可能性だって無くはないですよね?」


「んなっ!」


「例えばの話ですけど……」


「い、幾ら何でもそれは考え過ぎだろうよ」


「――あれだけ騒がれた悪夢の事件の後に殺されてしまった戦場むくろさん。もしこれらの事件に何か共通点があるのなら……私達は昨日、大変大きな鍵を握っている事実に直面していたのかもしれません。その事が後々分かってしまったら、私達は取り返しのつかない事をしていると思う……かもしれません。ここは探偵さんが何者であっても、私たちが昨日戦場むくろの自宅に行った事実を知る人物の、その全てに洗いざらい話すべき。――だと思いますがいかがでしょう?」


「…………」

 意外だ。あの高橋がそこまで考えていたなんて。


「どうでしょうか?」


「――僕は高橋の意見に賛成だ。隠してどうにかなる問題じゃない。――ナツの意見も一理ある。だけど僕らがここで誰も信じなくなってしまったら何も見えてこなくなると思うんだ」


「――は?……見えてこなくなるってそれで良いじゃない!」


「え?」


「おかしいと思わないの?――これ以上首をつっこんだら本当に危険だよ!――何かよく分からないけれど、私達は少しずつ少しずつ何かに巻き込まれているわよね。私はまだしも、ハジメは私のせいで巻き込まれているわ。高ちゃんも人が良いからついて来てくれるけど……」


「…………」


「私たちは探偵でも何でも無いんだよ、真実なんて分からなくたって良いのよ!」


「僕らは何かに少しずつ巻き込まれようとしている……か。ナツの言う通りだ。真実なんて知る必要はない。戦場むくろが何者であろうがクラスメイトが殺人鬼であろうが、僕達が単独で危険をおかしてまで追い求めるべきでは無いだろう。ただしそれは友達が皆健康であることが条件だ」


 創の話に3人はクエッションマークを浮かべる。


「亮介が……」


 一気に込み上げる怒り。それは幼馴染であり、彼の幼少期のヒーロー。


『亮介が刺されたんだぞ!――黙って見過ごす訳にはいかないだろ!』


 拳を強く握り締めながら息を止めている創。怒りの感情が一気に膨れ上がっては、爆発せずに落ちてしまう。


「舞園君……」


「…………」


 一旦の沈黙の後。


「――私の息子は、有馬駅連続殺人事件の被害者の一人だ」


 探偵のフラッシュバック

――――――――――――――――――――――――――――――

 探偵と探偵の息子との会話


「少しの間塾を休んだらどうだ?」


「え?」


「有馬は今、物騒な事件が続いている」


「何だ親父、俺を心配してんのか?」


「…………」

「…………」


「とっても心配だ」


「――分かったよ。今日中にしばらく休み取ってもらえるよう先生に頼んでみるわ」


「――そうしてくれ」


「だから親父も無茶するなよな。最近帰りが遅いみたいだしよ。まったく、何を調べているのか知らないけど気を付けろよな?――外は物騒なんだろ?」


「――そうだな」


「――ん、おっと!!――時間だから行ってくるわ!」


「ああ、気を付けてな」


 そう言って息子は出て行った。――これが息子と交わした最後の会話。もう息子は二度と帰っては来ない。


 フラッシュバック終了

――――――――――――――――――――――――――――――

 シーン戻る(路瓶孫)


『わたしにだって意地がある!――わたしは息子を守れながっだ!』


 探偵、涙の過去!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ