闇の中でもがく青年2
闇の中でもがく青年2
「そういえばさ、遠藤君ってどうしたの?最近見ないよね。」
研究の合間の休憩時間に、食堂で桜井と雑談をしていた。遠藤正春は青葉と桜井の同期であり、同じ研究室に所属している。彼はあまり真面目とは言い難いが、遊び人という程チャラチャラしていない。今風の大学生というイメージとぴったり合う。遊ぶ時は遊ぶが、やるべき事は自覚してしっかりした面もある。今期は単位やばいかも、というのが口癖になっているが、終わってみれば特に問題なく進級している。だが、そんな彼も今期は本当にやばいのではないか。4月に入ってから、研究室のガイダンスには出席にしていたが、最近顔を見ていない。理系の大学生の宿命として卒業論文は必ず仕上げないと卒業できない。卒論を書くには研究をして、データを蓄積しないと話にならない。今なるべく研究を進めないとまずい。
「そうだね。大丈夫かな?遠藤も就活中だよね。忙しいのは分かるけど、この調子で研究を休んでたらまずいよね。遠藤と連絡とってる?」
「う~ん。メールしてもあまり反応ないんだよね。詳しい事情は話してくれないし、はぐらかされる感じで。もう嫌になって、このままこないつもりなのかな?」
そういえば、あいつ今どうしているんだろう。そんな風に話題に上る人物は学年にひとりは出てくる。そうして、話題にも上らなくなり、自然消滅していく。彼は大丈夫だろうか。心配はするが、実際そのような人物をどう助けたら良いかわからない。事情もわからないし。冷たいと思うが、今の自分には他人を助ける余裕がない。気力もない。
「そうか・・・。俺も何だか最近やる気が出ないよ。」
「疲れてるんじゃないか。青葉は真面目だからな。課題も締切を過ぎた事ないだろ。何事も手を抜いてないようだし。少し手を抜くとこは抜かないと、体壊すぞ。最近、顔色良くないような気がするし。何かあったら言えよ。自然消滅とか柄にも無い事するなよ。」
本気で心配している桜井の様子に、胸が熱くなった。