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ソウル  作者: 宮川心
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エピローグ 黒い正義1

本話には一部、暴力的なシーンがございます。

 エピローグ 黒い正義1


 深夜の公園。ここは草木が生い茂り、敷地も広く人通りが少ない。未成年の若者が酒盛りをしたり、女性が公園に連れ込まれ、暴行される事件も多発している。警官が巡回し、監視カメラも設置されているが、敷地の広いこの公園の全てをカバーする事は不可能だった。巡回ルートも、監視カメラの位置も、綿密な計画を建てる犯罪者により、完璧に特定されている。巡回ルートを変更しても、その情報はすぐに知れ渡る為、いたちごっこである。


「もうやめて下さい。お願いします。殴らないで。」


 20代後半の細身の女性の顔は、既に腫れ上がっている。


「あ~あ、可愛い顔が台無しだよ。ケンちゃん、もういいんじゃね。十分楽しんだし、金も頂いた。そろそろ終わりにして、飲みに行こう。」


「それも、そうだな。ここらが、潮時だ。もう飽きたしな。」


 ケンちゃんと呼ばれた若者は、かったるそうに返答した。暴行を受けた女性は、身も心もズタズタに引き裂かれていた。ケンちゃんこと賢作は、しばらく女性を観察して、不気味な笑みを浮かべた。


「あれ、もう終わりって聞いて安心したのかな。残念でした。あんたを解放するわけにはいかないの。顔見られてるからね。まあ、すぐに楽にしてあげるから、いい子にしてるんだよ。」


 賢作はサバイバルナイフを手にし、10cm程の刀身をむき出しにした。女性の顔に絶望の色が浮かぶ。賢作は興奮した。


「ひひひ、その顔最高だよ。やっぱり何度見ても良いね。」

「ケンちゃん、趣味悪い。」


 相方が愉快そうに言った。


「ありがとう。最高の褒め言葉だよ。」


 賢作はナイフをじっくり観察すると、女性の首筋に刃を押し付ける。その時、前方の暗がりから現れた奇妙な人間が、賢作の視界に入った。黒いマントに身を包み、顔には能面の仮面をつけている。


「何だ、てめぇは。」


 賢作が威嚇する。相方は何事かと周囲をキョロキョロしている。


「ほう。私の姿が見えるのか。楽しそうにナイフを持っている所を見ると、初めてじゃないね。君は何人殺してきた?」


 ボイスチェンジャーを使用しているらしく、機械的な声が響く。


「さあ、何人だろうな。いちいち数えてねえよ。顔を見られたからには、お前も逃がすわけにはいかねえ。この女と同じ場所に送ってやるよ。」


「ケンちゃん、誰と話てるんだよ。薬でもやってんのか。」


 女性も何が起こっているのかわからず。困惑している。


「ほう、そうか。なあ、君は天国や地獄、輪廻転生を信じるかい。」

「何いってやがる。頭いかれてんのか。」


 ナイフを握る手は震えている。


「そうか。君みたいな奴が本気で信じているわけないか。ならば退屈な話になるかもしれないが、私の話を聞いてくれないか。君にとって、知るべき事だからね。」


 うるせえ、と賢作がナイフを投げつけるが、能面の体をすり抜けた。ナイフは地面に落ち、カランと虚しい音が鳴る。相方は賢作の服を引っ張りながら、どうしたんだよ、と呼びかけ続けている。


「君の魂は既に穢れきっている。死ねば天国には行けないだろうね。地獄へ送られる。それだけで済めば、話は簡単なんだけどね。地獄に送られた魂も、ここの世界ではないけれど、再びある世界に転生してしまう事があるんだよね。困ったことに、地獄から転生された奴は、性懲りもなく、悪事を働き続ける。まったく、迷惑なシステムだよね。」


 賢作はボー然と突っ立っている。


「君のような人間は死ぬべきだけど、地獄から転生するのなら、君を殺すだけでは何の解決にもならないんだよ。そこで、君の魂の転生を防ぐ為に、ある場所に封印する。既に君ような穢れた魂をたくさん封印してきた。今日から君も晴れて、その仲間入りだ。そこで永遠に苦しみ続ける事が、君の受ける罰だ。君の相方の魂は、まだ穢れきっていないように見えるから、法に基づく処罰で許してやろう。それで更生しなければ、君と同じ所に送る事になるけどね。じゃあ、行ってらっしゃい。」


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