SET0部隊 顧問 清水恭介4
SET0部隊 顧問 清水恭介4
一呼吸おいてから、清水恭介と書かれたネームプレートがかかるドアをノックした。
「SE監視機関 T1部隊 教官 佐藤健二です。」
どうぞ、という声を待ち、ドアを開けた。広々としたスペースの真ん中に、テーブルと革張りのソファーが配置され、奥に立派な仕事机がある。どこかの社長室のような豪華さだ。清水会長は起立して出迎えた。よく来た、と言いながらソファーを勧められる。清水会長と対面する形で座ると、話を切り出した。
「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。先日、お世話になった御礼にまだ伺っていなかったもので、お気に召すと良いのですが。」
先ほど買ったケーキを差し出す。
「おお。ありがとう。わしは甘いものが大好きでな。コーヒーでも淹れようかの、おぬしとはゆっくり話をしたいと思っていたよ。」
清水会長はそそくさとコーヒーを淹れて戻ってきた。
「ありがとうございます。御礼に伺うのが遅れて申し訳ありません。」
佐藤が頭を下げると、清水はにこやかに言った。
「いやいや、君は義理堅い男じゃの。すぐにお礼の電話をもらったし、忙しい中こうして訪問してくれた。そう堅くなるでない。楽にせい。わしまで緊張してしまう。」
この前の戦闘で、リバーシに対してすさまじい殺気を放った人間とは思えない。温かい空気を纏っている。
「先ほど、T1部隊訓練生、葛城里美の見舞いに行きました。まだ、だいぶ疲れが残っているようですが、回復の兆しが見えています。清水会長のお蔭です。」
「そうか、それは良かった。わしも心配でな。まだ訓練生の段階で精神浸食を受けると、相当なダメージを負うだろうと考えていたのでな。回復傾向が見られて、一安心じゃ。」
ほっとした表情でコーヒーをすすると、清水会長は姿勢を正した。
「それで、話は葛城君の件だけでは無いのであろう?」
佐藤は面食らった。全部お見通しだ。そんなにわかりやすい顔をしているのだろうか。
「何事も経験じゃ。おぬしの顔を見れば、何かを覚悟しているのは分かる。話してみなさい」
改めて、敵わないと思った。
「先日の訓練で思い知りました。自分の力量の無さを。あのリバーシの言葉から推測すると、あの程度の修羅場は序の口なのだろうと思います。これから、何かが起ころうとしていると感じます。しかし、今の私の力では部下を守る事ができない。そこで、清水会長に指導をお願いしたいのです。」
清水はうなずくと、嬉しそうに話した。
「なるほど、やはり君を候補に入れたのは間違いではなかった。」
「はい?候補とは・・・何の事でしょうか。」
実はな・・・。清水は声を落とした。