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ソウル  作者: 宮川心
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SET0部隊 顧問 清水恭介2

  SET0部隊 顧問 清水恭介2


 翌日、佐藤は渋沢駅にあるケーキ屋に立ち寄っていた。今日は休みが取れたので、葛城の見舞いだ。ちょこちょこ様子を見に行っていたが、やはりダメージが大きかったようで、一週間ほぼ睡眠に時間を割いていた。その間食欲は無く、流動食や点滴で栄養を補給していた。昨日連絡があり、少量ではあるが、まともな食事が取れるようになったとの事だ。


 このプリンなら食えるかな。このあたりではちょっとした人気商品のプリンで、佐藤もよく買っている。他にも数種類のケーキを適当に見繕って、渋沢駅を出た。

 メンタルケア支援プログラム研究所の北門を通過すると、病院へと向かう。多くの患者が順番を待つ待合室を通ると、人影のない廊下をつかつか歩いていく。関係者以外立ち入り禁止、と赤い文字で書かれた扉の前に立つと、横にある装置に身分証をかざし、暗証番号を打ち込む。ロック解除の青いランプを確認すると、扉を開く。


「おはようございます。佐藤さん。」

「おはようございます。御苦労様です。」


 真っ直ぐ伸びる廊下の両脇に2人の警備員がいる。特別製防弾ガラスの中から声をかけてきたこの警備員は、驚くことに全ての関係者の名前と顔を記憶しているらしい。入口はいくつかあるが、その全てに2人ずつ同様に高い記憶力を持つ人材を配置しているのだから、恐ろしい。デジタルなセキュリティーもかなり充実しているが、デジタルが主流の時代だからこそ、アナログな部分も大切にしなければいけない。


 SE監視機関の鉄壁のセキュリティーと呼ばれる警備員に挨拶を返すと、10m先にあるエレベーターホールへ出た。白い壁の中に3つの黒い扉が埋め込まれている。真ん中の黒い扉の前に立ち、装置に身分証をかざし、暗証番号を打つ。間もなく扉が開き、エレベーターに乗り込むと、指紋認証と顔認証を行う。これで初めて、行先ボタンを押すことが出来る。面倒なセキュリティーだが、公には存在しない組織なので仕方がない。


 メンタルケア支援プログラム研究所の裏の顔、SE監視機関は研究所敷地内の地下に存在する。地下に秘密組織が存在するなんてベタだな、と佐藤は初めてここに来た時に言いたくなったが、現実はそんなもんだ。


 SE監視機関は研究所という看板を利用して創設された。もちろん、メンタルケア支援プログラム研究所の理念である国民の精神衛生の向上は嘘ではなく、現実にしっかり稼働している。だからこそ、精神衛生の向上を様々な面から支援する為に、と提案された多種多様な施設と広大な敷地を国民は受け入れたのである。


 精神衛生の向上が叫ばれ、研究所創設を目標に、人間の精神について様々な研究が進められると、思わぬ発見が生まれた。現実に我々が生きている世界とは別の世界がある。これまでにも、一般的に人間が認知している世界とは別の世界が存在していると主張する声はあったが、SF小説の読み過ぎだと一蹴されていた。


 しかし、別の世界を信じる世界中の科学者たちの研究資料をかき集め、同時に人間の精神に対する研究を深めた結果、別の世界が発見された。さらに、その世界への移動法も開発した。この研究を公表すると、世間が混乱する危険があり、公表した事実がねじ曲げられて解釈されると新たな争いの火種となる可能性がある。また、この研究を悪用する者が出れば、取り返しのつかない世界のバランスブレーカーとなるかもしれない。こう考えた政府はこの研究を一部の機関に集約、管理し、極秘に進める事に決定した。


 こうして研究所と同時に、新たな世界を監視、研究するソウルエナジー監視機関。略して、SE監視機関が設立された。当初は研究所の設置しか予定されていなかったが、思わぬ発見があり、研究所の施設と敷地を兼用する形で、誕生したのである。




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