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ソウル  作者: 宮川心
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SET0部隊 顧問 清水恭介1

話に少々ややこしい部分が出てきたので、区切りがついたら一旦解説を挟む予定です。ちなみにSEというのは、ソウルエナジーの略です。生物が持つ、精神エネルギーです。今後、話の中で別の世界について、徐々に明らかにしたいと思いますので、お付き合い頂けたら幸いです。

 SET0部隊 顧問 清水恭介1


 あの訓練から一週間が過ぎた。佐藤健二教官は訓練の報告や調査で休む暇が無かったが、やっと一段落した。しかし、問題が解決したわけではない。

 調査でわかった事は微々たるもので、稀に見る現象が多発した今回の事件に現場は混乱している。解析班は一連の現象を調査し、あの世界の構造を知る新たな手掛かりと考え、腕をまくって作業を行っている。この現象の鍵となるのは、新井愛華という人物だろう。


 彼女はSE監視機関の隊員であったが、ある事件に巻き込まれて死亡している。その後、リバーシとなって出現し、討伐に向かった隊員数名を死傷させ、その後は行方不明という事になっている。しかし、新井愛華を取り巻くこの事件には謎が多く、報告書にある内容は推測の域を出ない。


 死亡した人間がリバーシとなる場合、生前と全く同じ自我を持ったまま転生するという可能性は無いと考えられてきた。リバーシはあらゆる生物の悪意の集合から生まれる。その姿は多種多様であり、一個体の中に様々な自我が、独立して存在できない状態で詰め込まれている。

 例を挙げると、ミックスジュースのような状態という事だ。バナナ、リンゴ、ミカンをミキサーにかけて完成したジュースは、それぞれの特徴を集めた液体である。しかし、その液体をバナナやリンゴに還元する事はできない。そして、悪意の塊と化したリバーシは無作為に誰かを襲う。これが現在予測されているリバーシのイメージである。


 その為、新井愛華の自我を持つリバーシが出現した、という報告が来た時は誰もが驚いた。たまたま似ていただけだという意見もある。しかし、現場にいた隊員は、あのリバーシは新井愛華に間違いないと口を揃えたらしい。リバーシの笑い声、発した言葉の内容、新井愛華と合致するものだったと。その後、リバーシのSEパターンを解析した結果、新井愛華のSEパターンと非常に良く似ているとわかった。これらのデータから、新井愛華がリバーシとして転生した可能性が高いと判断されたのである。


 そして、先日の訓練で出現した目標A1リバーシの分裂体のひとつ。葛城に侵入し、会話し、笑い声をあげたリバーシ。そのリバーシと新井愛華とされているリバーシのSEパターンに類似性が確認された。新井愛華が何かを画策している。そう結論づけた上層部は、警戒態勢を敷き、一連の事件の調査と、新井愛華とされるリバーシの捜索を最優先事項とする命令を発令した。


 誰よりも優しく、誰よりも正義感に溢れていたのに、何故こんな事に・・・。佐藤は新井愛華の事件記録を読むと、彼女の笑顔を思い出し、胸が熱くなった。


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