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ソウル  作者: 宮川心
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SE監視機関4

 SE監視機関4

 

「葛城!葛城!」


 大声で叫びながら、寺田は周囲を警戒する。あいつはどこへ行った。葛城を襲った分裂体がいない。葛城のSEPカウンターからは警告音が鳴っている。


「寺田!葛城から離れろ!」


 佐藤教官の声に反応すると、すばやく葛城から離れた。佐藤教官が寺田に並ぶと、寺田が非難の声を上げた。


「どうしてですか?早く彼女を救護班の所へ運ばないと!」


 必死に食い下がる寺田に、佐藤教官が冷静に話す。


「落ち着け寺田。葛城のSEPは十分ある。形状も保っているし、レーダーにも映っている。生きてるよ。この警告音は葛城のSEPの減少を知らせるものではない。ただし・・・。」


 消えた分裂体のSEの位置は、レーダー上で葛城の存在位置を示す座標と一致している。そして、この警告音。これは・・・。


「葛城のSEがリバーシのSEに浸食された可能性がある。」


 寺田は氷ついた。


「ここは俺に任せろ。誰も葛城に近寄るなよ!」


 佐藤教官が怒鳴ると寺田は弾かれたように下がる。周囲に集まってきた他のT1隊員も離れる。


 さて、どうする。佐藤教官がMJソードを構え、葛城に近寄ると、それを待っていたかのように葛城の体がゆっくり起き上がる。刹那、激しい金属音と火花が散り、2人の刃が交錯した。


「くっ、葛城!しっかりしろ!」


 葛城に刃を突き立てるわけにはいかない。どうする。上下左右と容赦ない斬撃を懸命に受け続ける。葛城の目は焦点を失っているようだ。こんなに強かったのかよ。訓練中に稽古をつけた事があるが、ここまで早く、鋭い斬撃を繰り出していた記憶はない。体が柔らかく、バネのある動きを時折みせるので、ポテンシャルは持っていると思ったが、それを自由に使いこなせる程には洗練されていなかった。今の葛城の動きを見ると、その力をいかんなく発揮している。葛城の潜在能力の高さに喜びたい所だが、こんな状況で発揮されても困る。葛城は無言で斬撃を休む事なく繰り出している。


 侵入したリバーシを取り除く方法はある。しかし、非常に繊細なテクニックと集中力を要するもので、斬撃を受けながらでは無理だ。しかも、短時間で取り除こうとすると失敗する可能性が高くなる。葛城に致命的なダメージを与える事になりかねない。周囲には訓練生しかいない。彼らの今の技量では葛城にダメージを与えず、動きを止める事は難しい。


「T1佐藤より、本部及び全隊員に緊急連絡。葛城隊員がリバーシによる精神浸食を受けた。早急に応援を要請する。」


 急いでくれ。時間がかかるほど、精神浸食の深度が深くなる。浸食に対する防衛訓練はしているが、訓練者への負荷が大きいので本格的なものはできないし、数もこなせない。実際の現場で精神浸食を行うリバーシに出会う機会は非常に稀だ。初めての実地訓練で緊張する中で、こんなイレギュラーな事態に冷静に対処できるとは思えない。もう待てない。少々手荒な方法だが、我慢してくれ。佐藤は葛城の刀を振り払い後方へ飛びのくと、刀を鞘へ収めた。居合の構えから葛城に向かって突進する。葛城はMJソードを片手で持ち、脇差を引き抜く。受けるつもりか、いい度胸だ。構えも上々だ。佐藤は葛城の目前に迫ると柄から手を離し、すばやく閃光弾を手にした。


「すまんな。」


 閃光弾を片手で投げ、ゴーグルを掛けると上に飛んだ。激しい光が葛城を包み込む。佐藤は銃口を葛城に向けると引き金を引いた。パンという軽い音と伴に、鋼鉄の紐が編み込まれたネットが吐き出される。葛城の体がネットに覆われ、四方の床に固定具がめり込む。葛城の手から脇差が離れた。


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