SE監視機関1
SE監視機関1
「T1とSET4は連携を組み、ポイントAから半径300m外周付近で待機、SET2はT1とSET4の待機が完了次第、ポイントAで目標A1を撃破せよ。」
無線連絡を聞きながら、佐藤健二教官はT1部隊の先頭で周囲を警戒していた。場所は深夜の住宅街、死角に注意しながら前進した。今日は訓練生の実地研修だ。目標は1体のみだし、他部隊のこれ以上ない手厚い保護下での活動なので心配ないだろう。しかし、油断は禁物だ。
T1部隊は佐藤を含め教官3名と訓練生6名の計9名から構成されている。一旦、建物の影に隠れてT1部隊に集合をかける。佐藤教官は全隊員が集合している事を確認すると、T1部隊のメンバーにマイクを通して語りかけた。
「T1部隊聞こえているか。T1部隊の専用回線で会話をしている。聞こえない者は挙手しろ。」
隊員から手は挙がらない。訓練生の顔は緊張で強張っているが、問題ないだろう。
「よし、ここで念のため各装備を確認しろ。特に、無線、SEPカウンター、SEレーダー、MJソードに不具合が無いか注意だ。」
隊員が各々でチェックを始めた。耳に仕込んであるイヤホンを確認したり、MJソードを出し入れして具合を確かめている。佐藤教官も両方の腰に携えている2本のMJソードの具合を確認した。
MJソードはマルチジョブソードの略で、様々な機能を持つ刀武器である。刀身はすらりと細長い両刃であり、研究班が開発した頑丈な合金で成形されている。鞘にあたる部分の様々な仕掛けが、多彩な攻撃を可能としている。例えば、抜刀時に刀を鞘から弾き出す機能を使った居合切り。刀を鞘に収めた時、刀身に電気を蓄積し、斬撃時にエネルギーを放出させる雷撃。
「佐藤教官かっこいいな。俺も二刀流にしたいです。」
訓練生の一人が目を輝かせている。
「まだまだお前には早いよ。それに二刀流は手数が増えるが、両手が塞がるから不利な場面も出てくる。もっと場数を踏んでからでないと、標準装備の変更は認められんぞ。自分のスタイルと状況を判断して、適切な武器を選べるようにならないとな。」
了解です。がんばります。気合の入った返答にうなずくと、思わず笑みを浮かべそうになる。自分も先輩の二刀流を見て憧れてたんだよな。鮮やかな二刀流を披露する優しく優秀な先輩の顔を思いだした。今どこで何をしているのだろう。また手合せをお願いしたい。