ドキッ 水着だらけの…
「どうすんだよこれ」スーツを着た俺は倉庫の中で愚痴を吐いた。
「いやだってしょうがないじゃないですか。0円で売ってたんですから普通買いますって」
安田は俺に反論する。だが俺は安田に回し蹴りを入れて言い放つ。
「『安物買いの銭失い』って諺は知ってるか? お前が知るわけないか。知ってたら女性用水着10000着なんて買わないよな。やっぱ無知って怖いよな。バカってのは迷惑だよな。なあ安田、聞いてるのかお前のことだぞ。いま俺はちょっと怒っている。お前の低能さについてじゃないぞ。お前をビジネスパートナーに選んだ自分に対しての怒りだ。なあ安田聞いてるのかオイ」
二十回ほど蹴っただろうか。俺は動かなくなった安田を蹴るのをやめると、この巨大な倉庫に置かれた女性用水着10000着の処分方法について考えていた。おそらく倒産した のであろう前所有者に引き取ってもらうことは無理だろう。すると単純に倉庫代だけで 月十万はかかる。移動させるにはフォークリフトが数台必要だろう。人件費もかかる。 俺ははっきりいってこれが損失を生み出す負の遺産にしか見えなかった。しかも今は秋。これから冬に突入するというタイミングである。いかな俺とて、売りさばける自信は無い。
「あ、俺いい方法思いつきましたよ。ヤフオクで売ればいいんですよ」
安田が起き上がり提案を始める。つまり安田は自分のようなバカに押し付ければいいと
思っているのだろう。だが、そんなバカが本当にいるものだろうか? 俺は適当に返す。「じゃあ『ドキッ 水着だらけの…』とかいう名前で出品してみろ。もちろん現地引渡しで、価格は百万だ」
三日後、水着は百万で落札された。オーストラリアの会社らしい。あっちは今から夏に向かう。それで売るための水着が足りないという話だった。
「結局、儲かりましたね」安田は得意げに言う。
「運が良かっただけだ。今度からはもう少しものを考えて仕入れろよ」俺は安田に釘を刺す。
「えーと、実はまた0円で出品されてるものを見つけまして……」
俺は回し蹴りを繰り出し、安田は回転しながら十メートルほど先に吹き飛んだ。