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2話『父という背中』③
「昔話をひとつ教えてやる。」
「昔、バカな剣士がいたんだ。
そいつは自分のことをずっと弱いと思っていた。
だから、助けられる命を自分には無理と救わないこともあった。
そしてソイツには、好きな女がいた。
女は旧家の娘さんでな、許婚がいたんだ。
女は剣士に私を連れていってと言ってきた。
でも、剣士は弱い自分に女は守れないと断った。
すると、女は許婚との結婚式の前夜、自殺した。」
「剣士はそれを知った後、ひどく後悔をした。
自分が弱いせいで、女は死んだと…
女を幸せにできなかったという気持ちに剣士も後に自殺した。」
「でもな、剣士は一つ知らずに死んだ。
実は、子供がいたんだ。女には。
自殺する前にうまれたらしい。」
俺は、なんとなく、昔の記憶がぼやあと出てきた。
親父の言葉、二個目の言葉。
『死んでも自分を弱いと想うな』
そして3つ目の言葉…
「親父、試合を申し込みたい。」
「ほー全部の言葉を思い出したか。
いいだろう。やってやろうじゃねえか。」
俺は、父を超える。
だから、親父との勝負に勝ち、咲乃をさらいに行く。