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小説『虚空のバベル』6

作者:三澤賢司
最新エピソード掲載日:2026/10/12
白石崇は、第五章の十兆円の公的資金を、国債発行から一般会計、政府系金融機関を経て、短期金融市場(オープン・マーケット)へ直接流し込む計画を実行に移す。CDやCPの金利形成に公的資金が加われば、民間が圧迫されるのではないかと神崎が懸念を示すが、白石は、長年の超低金利で機能を失った市場に価格発見機能と流動性を取り戻すのだと応じる。
短資会社の会長・佐伯は「自由市場への暴挙だ」と激怒する。白石は、日銀の大規模緩和でCP・CD市場やコール市場がすでに停滞していた実態を指摘し、公的資金は市場の下支え(バックストップ)になると説く。さらに、ブロックチェーンによるT+0の即時決済を実装すれば、短資会社も新たな仲介手数料を得られると示し、佐伯を納得させる。
日銀の寺内理事は、公開市場操作との干渉を懸念する。神保と白石は、政府系金融機関の資金は日銀の利上げの衝撃を和らげる協調策であり、デジタル証券化された取引データが日銀にとって市場監視の有力な手段になると説明する。寺内は日銀ネットの優先接続枠を認める。
翌週月曜日、十兆円のうち五兆円がCP、五兆円がCDに投入され、清算時間は〇・〇五秒。短期金利は一パーセント水準で安定し、企業の資金繰りも銀行の流動性も改善する。取引高は過去最高を記録し、海外の格付け会社も高く評価する。白石は、これまでの施策がつながった金融の要塞が「信頼の塔」として完成したと感じ、次の十兆円の接続準備に向かう。
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