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#対人依存症。和哉くんは生きづらい!  作者: 佐野和哉


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対人依存症12.和哉くんは褒められたくない

「褒めてもらいたいわけじゃないのに褒め言葉がついてくる」のが、辛い時ってないですか。別に褒められることが嫌だとかムカつくというわけじゃなく……なんというか、自分の至らなさが自分で分かってるから、今それを言われても辛いだけ。みたいな。

なんかそんな時がある。


私の大好きな人が悩み苦しんでいたとき、私から掛けられた言葉への返答のなかに

「今は褒めないでくれ」「褒められても何も思わない」

というのがあった。

褒められても受け止めることが出来ない…いま自分という器に新しく綺麗なものを注いでもらってもこぼれてしまうのだ、と。


その人が辛く寂しいとき、AIに頼っているのが私はとても辛く寂しかった。なんでも言ってくれたらいいのに、と思った。

でも彼女いわく「AIは忖度しない」のだそうだ。

褒めて欲しくないときは褒めてこない、というより褒めろと指示されなければ事実だけを整理したり解釈したりして返すのが良かったらしい。

ただ、じゃあそれと同じことを生身の人間にされて腹が立たないかと言われたら正直ちょっとわからない。私なら気分悪いと思う。

AIだとわかっているから、自分でAIを使っているという意識があるから、それでいいし、それがいい。けど相談相手が生身の人間で、そいつから「じゃあこれこれこういうことなんだよね? それってこうで、こうなんだね」って事実だけを端的に投げ返されたら、やっぱりちょっと「わかってるけど腑に落ちない」みたいな気持ちも沸かないとは限らないと思う。

同じことをやっても、相手がAIだと思うか人間だと思うかで受け取る側の気分は全然違うはずだ。


翻って自分が今こうして苦しんでいると、確かにそうだ。

メキシコ行っただけでも凄いよ、

本が出ただけでも凄いよ、

と言ってもらえるのが、とても辛く苦しい。

「出ただけだ」「行っただけだ」ってお前もそう思ってるんじゃねえか。と言いたくもなる。

事実そうだから今しんどいのであって、でもそれは自分が至らなかったためにそうなのであって。だからこそ余計に辛く苦しいのであって。

それを、自分が好きな人に対して良かれと思って言ったことが裏目に出て漸くわかった。

自分も同じことされてきたし、きっとこれまでも同じことをしてきているのだ。


褒められたくないわけじゃないが、褒め言葉に値しない自分が褒められてるのはケツの座りが悪い。


じゃあどうするんだと言われても、いま起き上がってまた戦うような気力も、そんな目標や夢もない。

松下幸之助さんの言葉に

「若さは年齢の多少ではない、常に挑戦し続ける人に老いは無い」

というのがあった。そして私が好きな人たちも、大好きなあの人も、確かにそうだ。チャレンジ精神とバイタリティ、そして夢や目標がある。

普段どれだけ泥臭く地道なことをしてても、それがいつか花開くときまで、波はあっても努力は止めないでいる。私には、そう見える。

今そう言われても素直に受け止められないかもしれないし、そんなことない、というかもしれない。でも、動きは止まってるけど心が動いていればいいじゃないか。

いつかまたアクセルを踏み込む日まで、ガソリン入れてオイルも回して、窓を拭いてガラコなんぞかけて。お気に入りのプレイリストを作って。

そうして、また来る日を待っている。それでいいじゃないか。


もっとも、それを今の自分にそっくりそのまま言われたらきっと「そんなことない。自分なんてもう終わりだ」と言うだろう。


普通に働いて、ちんまり生きていれば、別に何も起こらないしこんなに辛くないのにな。

夢など見るから辛い。恋などするから辛い。

辛いと思うことすら知らなければ、何も思わずに死んでいける。

未来を追い求める人は自分自身のこともちゃんと好きだし、生き甲斐もある。

私は今、未練だけ振り返って生きてる。だから辛いし取り返すことも出来ない。

だって前向いたって目に入るのはロクなもんじゃない。

届かない夢、叶わない想い、触れられぬ人、老いてゆく自分、置き去りの日々。

そうしたもので自分という器がいっぱいになって、慰めも誉め言葉も同情も何も注ぎ入れることが出来ないでいる。

もう、それならそれでも構わないとすら思う。

下手に慰められたくも、褒めて伸ばしてほしくもない。

そっとしておくか、いっそ死んだことにも気づかないような殺し方をしてほしい。

この世に未練を残す間もないほど、あっという間の死に方がしたい。


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