93話:海苔とカキとトラさん
エコロジカル養殖(予定)
異世界生活百十八日目
今日もいい朝!昨日はTKGでひと盛り上がりできてよかったな。
勝さんとタラちゃん達はひとまず東の海に帰っていった。
春になったらまた一緒に北に向かう予定だ。
今日はモクさんに海苔を見てもらおう。
わたしは浜辺の海水プールに向かった。
「モクさーーーん」
「なんだ、めぐみ。新しい服のアイディアでも持ってきたのか?」
「今日は服の相談じゃなくて、これだよ!」
わたしは一枚の海苔を取り出す。
「これは、布……ではないな」
「海苔って言って、海藻を乾かしたものなの。これを、どうにかこの浜辺でも作れないかなって、海藻はモクさん詳しいでしょ?」
「ふむ、食べられる海藻か。食べてもいいか?」
「はい、どうぞ」
パリパリ、ペリペリ。
「なるほど、この味のする海藻は知っているぞ」
「本当に!?じゃあその海藻を育てて増やしてほしいんだけど……えーとこんな感じで。ミコちゃんよろしく!」
「はーい、これがメグミの海苔づくりのイメージだよ」
「網にかけて育てるのか。まずは網作りだな。それと海藻の種を育てる貝殻があると便利だな」
「え、海藻の種?そんなのあるの?」
「我らの体も、甲殻に引っ掛けて海藻を育ててるわけだが、流石に海苔で覆いつくすわけにはいかないからな」
「なるほど~海藻作りにもいろいろあるんだねぇ」
「じゃあ貝殻集めかな?大きめの奴がいいのかな?」
「適度に強度があるやつが良いな」
「わかった!みんなで探してみる」
海水プールからの帰り道、早速みんなで貝殻を探し始めた。すると、岩場の影に、見慣れない大きな貝殻が落ちているのに気がついた。
「これってカキ殻じゃないかな?なんでこんなところに?」
岩場の影を覗いてみると特徴的なずんぐりとした丸い姿があった。
「トラさん?トラさんじゃない?」
「ヘ!?お嬢さんお久しぶりですね。どうしやしたか?」
「どうしたかって言うと、いい感じの貝殻を探してたら、カキ殻が落ちてたから覗いてみたら、トラさんがいたんだよ」
「これは、お恥ずかしいところを、この時期になるとカキが美味しくてよく食べてるんでさぁ」
「え?ここ常夏なのにカキ取れるの?」
「海の沖の方は時期によって冷たくなるんでさぁ、そこに流れ者のカキたちがくるんで、食べさせてもらってます」
「へえ、そうなんだ、結構トラさんはカキ食べるの?もし殻がたくさんあったら譲って欲しいんだけど……」
「殻ならそこの岩陰にあるんで、自由に持っていってくだせえ」
「ふむふむ、コメちゃんズにも手伝ってもらって運ぶとして、トラさん」
「なんです?」
「カキを育てたら食べに来てくれる?」
「え?育てるんですか?そりゃ願ってもない申し出ですけど、いやあっしは流れ者ですので住み着くわけには……」
「カキの時期だけ来てくれたらいいから!みんなも喜ぶからお願い!」
「そこまで言われたら、断る方が野暮ってもんですからわかりやした。カキの時期になったらお世話になりやす」
「やったー!えーっとそれじゃあ、カキが取れる海域をワタルくんに教えてもらって~」
「え?あっしがですか?」
「トラさんしかわからないし、私は海に潜ってはいけないから」
「いや、そのちょっと、それは」
「ワタルくんは、親切で優しいから大丈夫だよ!ワタルくーん」
スサササッ
「メグミさんお呼びですか!」
「うん、前、石鹸作るときに助けてくれたトラさん、今日はカキが取れる海域を教えてくれるの」
「カキ?というとそこの貝殻の?」
「そうそう、美味しい貝だからわたしたちでも育てようと思って、それで親のカキを獲れるところを覚えてほしくって」
「なるほどわかりました!ではトラさんよろしく頼みます!」
「お、おぅ……こっちだぜ」
(もしかして、トラさんって、すごく恥ずかしがり屋さんなのかな?無理やりで、悪いことしちゃったかも……)
(でも、美味しいカキのためだもんね!仲良くなれば、きっとトラさんも喜んでくれるはず!)
「よし、カキ殻をモクさんのところに持っていこう」
わちゃわちゃ。
コメちゃんズと共に海水プールに戻る。
「モクさんこれ使える?」
「ん?こりゃいいサイズだ。厚みもしっかりしてるし、これならいい種が出来そうだ」
「フフフ、海苔だけじゃなくて、カキも養殖するからね!」
「メグミ……目が食い意地の塊になってるぞ」
「美味しいものは、みんなで食べる!みんなの数が多いから養殖するしかないの!これは必要な事なんだよ!」
「そうですメグミさんが必要ということは絶対に必要な事なのです」
「あれ?ワタルくんトラさんは?」
「カキの場所を教えていただいたのですが、すぐに居なくなってしまわれました」
「恥ずかしくなっちゃったんだね……がんばれトラさん」
そんなこんなで海苔とカキの養殖を始めることになったのだった。
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