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9話:オオカイカムリ

実際のオオカイカムリは丸っこくてなかなかかわいいカニです。

異世界生活四日目


モクズショイさんは、昨日のうちには帰ってこなかった。


あの熱意だったし、もしかして――すごくたくさんの仲間に相談してるのかも?


そんなことを考えていると、外がなんだか騒がしい。

ミコちゃんを肩に乗せて、住処の外をそっと覗いてみた。


そこには――岩みたいに大きなカニさんが、ワタリガニさんたちに囲まれていた。


【オオカイカムリ】

・カイカムリ科。甲幅5cmほどで、物を背負って身を隠す習性を持つ。

・背中の脚で貝殻やカイメンを器用に担ぎ、カモフラージュする。

・食用にはしない。身が少なく、市場に出回ることはない。


カニペディアが発動。どうやらこのカニさんは「オオカイカムリ」らしい。

“市場に出回らない”って……でも絶対、カニペディアの人、食べたことあるよね?


……まあそれは置いておいて。


「ワタリガニさんたち、どうして囲んでるの?」


「あ、メグミさん。このカニ、勝手に巣穴に入ろうとしてたので取り締まってました」


「でも大きいし、妙に頑固で……なかなか追い出せなくて」


そんな説明の最中、オオカイカムリさんがこっちをじっと見て――


「ああ! ユーが、モクズショイが言っていた“海綿を纏いし者”デスネ!?」


「え!? モクズショイさんのお知り合いなんですか?」


「ハイ。モクズショイとは“海綿仲間”。シーで競い合っていました」


「見事な海綿の纏い方……スバラシイ! 本当にスバラシイ!」


「えーっと……つまりオオカイカムリさんは、私の“服”を見に来たってことで?」


「ノー! ユーの新しい海綿を作るために、モクズショイと競いに来ました!」


「早速、ミーの作品を纏ってみてクダサイ!」


そう言って、背中からふにゃっとした何かを差し出してきた。

べちゃべちゃの――たぶん“海綿”。


「……あの、それ、海水でベタベタだから、まず洗って干してもいいかな?」


「オー! 濡れたままでは纏わないノデスネ?」


「うん。私の服、濡れてないでしょ?」


「なるほど! やはり実物を見ることは大事デスネ!」


「じゃあ、ミコちゃん。コメちゃんズに頼んで、これ真水で洗って乾かしてきてくれる?」


「任せて! 僕、がんばるよ!」


ミコちゃんはコメちゃんズを引き連れて、森の方へ駆けていった。

その背中を見送りながら、ふと後ろから声がした。


「――オオカイカムリ、愚かなり」


モクズショイさんの集団が、ずらっと現れた。


「メグミ、遅れてすまなかった。

お前の“海綿”をしっかり観察し、どうすれば良いかを分析していたのだ。

そのため、準備に時間がかかった」


(いや、昨日帰ってこなかったのに、半日でそこまで準備してきたのすごすぎない!?)


「では、我らが用意した“苔で作った海綿”を試してくれ」


……いや、それは**“海綿”じゃなくて“苔”では?**

たぶん翻訳機能の意訳なんだろうけど。


差し出されたのは、どう見ても“ギリースーツ”だった。

サバイバル番組で森に隠れる人が着る、もっさもさのやつ。めちゃくちゃ暑そう。


でも……せっかく作ってくれたのに、見ただけで「いらない」は失礼すぎる。


私は制服を脱いで、袖のない“苔スーツ”を頭からかぶった。


もっさもっさ。ちゃんと乾いてるけど、これは――日常生活に向いてない。


「モクズショイさん……これ、普段着には使えないかな……」


「なんと!? ダメだと!? どこが悪かったのだ!?」


「うーん、全部……かな? 寝るときの敷物には、よさそうだけど……」


「ぐ、ぐぬぬ!? 我らの傑作が“敷物”扱いだと!?」


悔しそうなモクズショイさんたち。申し訳ないけど、これはちょっと……


「……メグミ。我らに、海綿を纏っていない状態を見せてくれぬか?」


「え? うん、いいよ。その間はこのもっさもさ着てるから」


「ハハハ、モクズショイ。偉そうにしてた割に、ミステイクだったようデスネ」


オオカイカムリさんが、乾いたらしい海綿を持って戻ってきた。


「さあ、メグミ! ミーの海綿を纏ってみてクダサイ!」


自信満々だけど、正直不安。

私はもっさもさを脱いで、オオカイカムリさんの“海綿服”を身につけてみた。


シルエットはまあまあ服っぽい。けど――


ゴワゴワする。

肌に優しくない。

蒸れる。

ちょっと……無理かも。


「んー……これもちょっとダメかも。素材が悪いのかな……」


「オー! ミーのもミステイク! メグミの“海綿へのこだわり”、スゴすぎデスネ!」


「……オオカイカムリよ。我らも分析したのだが、これは――海の素材では再現できぬ!」


「オーマイガー! それでは、私たちにメグミの新しい海綿は作れないと!?」


「いや、まだだ。我らの仲間には森に詳しい者もいる。

メグミよ、森の素材で、もう一度チャンスをくれぬか?」


「えっと……大丈夫ですけど、ミコちゃんの通訳、いる?」


「そうしてもらえると、助かる」


私はミコちゃんを呼び、陸に住むカニさんたちにも協力をお願いした。


みんな一生懸命なのは嬉しいけど――

無理だけはしないでほしいなあ。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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また次回、お会いできるのを楽しみにしています!


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