7話:ガザミ(ワタリガニ)
ワタリガニはガザミの別名として有名ですがどちらかというと大分類のワタリガニ科全般を指すみたいです。
異世界生活二日目(続々)
立派な森の長老、ガザ爺を仲間に加えた私たちは、意気揚々と帰路についていた。
「メグミよ、一つ相談があるんじゃが、ええかの?」
「なあに?ガザ爺」
「メグミは群れのカニたちも守りたいと言っとったじゃろう?」
「うん。私だけじゃなく、みんなが安全なら嬉しいなって」
「わしもそこそこ腕には覚えがあるが、これだけの群れを一人で守るのは難しい。そこで川におる知り合いたちに、声をかけてみたいんじゃが、どうじゃ?」
「えっ、もちろんいいよ!そのカニさんたちも、ガザ爺みたいな感じなの?」
「ふむ……わしよりはだいぶ小さくて、ハサミもギザギザしとらんがな。それ以外は似とるぞ」
ガザ爺の案内で、私たちは大きな川にやってきた。
カササッ、ザバッ!
川の中から数匹のカニさんが姿を現す。
【ガザミ(ワタリガニ)】
・ワタリガニ科。甲幅15cmほどの中型カニ。
・ヒレ状の脚で泳ぎ、小魚や貝類を食べる。
・食用可。繊細な甘みがあり、蒸しガニや味噌汁は絶品。
……カニペディアが発動。また「絶品」とか書いてある。
食べないってば。読まないことにしよう。
「凄まじい気配がすると思えば……これは、森の長老殿では?」
ガザミさん(ややこしいのでワタリガニさんと呼ぶことにする)が、ガザ爺に話しかける。
「突然すまんのう。わしは今、このメグミの群れに属しておるのじゃが……おぬしらの中からも、何匹か協力してくれんかと思っての」
「長老が、群れに? どういう風の吹き回しで?」
「うむ。一匹でおるのも飽きたしのう。それに――メグミは実に魅力的じゃ。わしは、いずれこの浜のカニをまとめる存在になると思っておる」
(ガザ爺!? そんなこと思ってたの!? まとめ役とか、私には無理だよぉ……)
「ふむ、それに謙虚なところもチャームポイントじゃ」
(……あ、また考えてることが読まれてる……)
「なるほど……どれどれ、ふむふむ……これは確かに魅力的な方ですね!」
「えっ!? ワタリガニさん!?」
「数匹と言わず、この川にいる者全員でお仕えしましょう!」
「そ、それはありがたいけど……多すぎない?」
「では交代制にしましょう。日替わりで、川から交代で仕えに出る――それでどうですかな?」
「えっと……私としては助かるけど、ワタリガニさんたちはそれでいいの?」
「メグミさんを見れば、皆きっと私と同じ気持ちになるはずです」
「う、うーん……そういうものなのかなぁ……」
「そういうものです!もっと自信を持ってください!」
「……そ、それなら。ワタリガニさんたちを信じて、お願いしようかな」
「丸く収まったようじゃのう」
「拙者より大きい者が多数……安心ですぞ!」
「ベンケイガニさん、もうちょっと頑張ろ?」
「拙者は……その、後方支援で頑張りますゆえ!」
「やっぱりこいついらなかったんじゃ……」
「まあまあ、労働力にはなるだろうし」
みんなそれぞれ言いたい放題だったけど、ワタリガニさんたちを迎えることに、特に反対する者はいなかった。
こうして私たちは、3匹のワタリガニさんを加えて、浜の住処へと帰っていった。
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